草凪澄人の選択④~聖奈の秘密~
澄人が聖奈についての話を草凪澄から聞いております。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えっと……それならどうして俺と聖奈は双子として育てられていたんですか?」
「私が家族を失った草凪正純へお前と聖奈を託したんだ。生きる希望としてね」
草凪澄から聞かされた話はどれも信じられないことばかりで、俺は彼の話を頭の中で整理するのに精一杯だった。
ただ、嘘や冗談ではなさそうだし、彼の表情を見る限り本当のことを言っていると思う。
なによりも、ワープができなかったり、両親を蘇生できなかった理由に納得ができた。
(神域にはワープでこれないし、俺と聖奈の両親は元々いなかったのか……なるほど……)
俺はここまでの話を整理して、自分の中で結論を出した。
「ありがとうございます。ようやくすっきりしました」
俺は今まで疑問に思っていたことが解決し、晴れやかな気分になっていた。
後はじいちゃんが失ったという家族を取り戻せば完璧だ。
「祖父の家族はどうして亡くなったんですか?」
俺の一言を聞いた草凪澄は目を見開き、唇を噛みしめてしまった。
「二人は狭間の世界でモンスターを生み出している瘴気に飲み込また……あいつのせいだ」
草凪澄があいつと言いながら忌々しそうに睨む先には誰もいないが、彼は怒りで空気を震わせる。
「ミュルミドネスを知っているだろう? あいつは神域へ七色の種を植えた。それが理由で瘴気が暴走しているんだ」
「ミュルミドネスが? 瘴気を暴走?」
「本来、瘴気は異界中に蔓延るものではなかった。あいつはあの植物を通して神域へ侵食してきている」
草凪澄はテーブルの上に両手を置いて握り拳を作った。
「奴の狙いは、瘴気に神性を混ぜて異界を自分の世界に作り替えようとしている……今回はお前に阻止されたが、あの様子だとまた長い年月が経てば復活してしまうな」
草凪澄が睨みつけている場所をよく見ると、透明な地面から小さい七色の若葉が顔を出していた。
俺がそれを見ていると、彼は深いため息を吐いてから話を続ける。
「やつがミッションの内容を知っていたのもあのせいだ」
「取り除くことはできないんですか?」
「神域の中では生物は不死になっている。あれを摘み取っても無駄なんだ」
「なるほど……ちょっと抜いてきます」
「やってみると良い、抜いた瞬間に次の芽が生えるだろう」
俺は立ち上がり、透明な床へ足を踏み入れた。
そのまま一歩ずつ前へ進み、七色に輝く小さな植物へ手を伸ばす。
七色の若葉を引っこ抜くと、草凪澄の言った通り、近くに同じ芽が生えた。
俺が抜いたものは跡形もなく消え去っている。
振り返って草凪澄を見ると、彼は悲痛な面持ちでこちらを見ていた。
「これでわかったろう? ここでは何をしても相手に影響はない」
「…………」
俺は無言のままもう一度しゃがみこんで七色の若葉へ手を添える。
そして、魔力を右手へ集中させ、捕食を付与しながら握りしめた。
「なっ!?」
すると、驚く草凪澄の声とともに七色の若葉が俺の体へ吸収される。
【スキル獲得】
侵食
説明:体の一部を増殖させ、他を取り込む
親和性:神性S
捕食が完了した画面が現れたため、これが見えているであろう草凪澄へ笑いかけた。
「人間の可能性とは恐ろしい……」
「えっと……何か問題がありましたか?」
草凪澄が驚いている理由は分からないけど、俺はいつものように捕食をしただけだ。
捕食は相手を自分の中へ吸収するだけなので、具体的には殺してはいない。
悪影響が出そうなら神の祝福で吐き出そうとも考えていた。
(ミュルミドネスが復活するなんて考えただけでも恐ろしい)
俺は心の中でつぶやいた後、椅子に座り直して体に変化がないか確認する。
「さすがは草凪澄人だ……お前の力があれば世界を救えるかもしれないな」
草凪澄は感慨深そうにつぶやくと、俺へ手を差し出してくる。
「草薙の剣を出してもらえるか?」
「これをですか?」
アイテムボックスから草薙の剣を取り出すと、彼に微笑まれた。
「神の一太刀……私の力を再現できる草薙の剣」
草凪澄が手を軽く振るうと、光の粒が飛び散る。
「もうきみに私の助力は必要ない。この剣はきみの力で振るうんだ」
草凪澄はそう言いながら目を閉じて草薙の剣へ両手を向けて、意識を集中させていた。
黄金の光が彼の全身から溢れ、やがて草薙の剣へ集まっていく。
光は収束していき、彼の手のひらの上で黄金に輝く美しい剣になった。
「おっと、これを忘れていたな」
草凪澄が指を鳴らすと、俺の目の前に見慣れた金色の画面が表示された。
俺はその画面を見ながら「確かに」と言いながら笑ってしまう。
【シークレットミッション 達成】
神域へ至りました
報酬として神器:草薙の剣を【神器:澄人の剣】へ強化します
「きみ……いや、澄人がこれからどんな活躍をするのか応援させてもらうよ」
「ありがとうございます」
「もう伝え残したことはない。あとはいつものようにやりたいことをしてくれ」
ミッションの画面を閉じると、神域での役目が終わったのか、視界がぼやけてきた。
徐々にまぶたが重くなっていき、草凪澄の姿も見えなくなる。
「そうだ。これはもう終わりにしてくれ。101%以上の報酬は用意していないんだ」
【異界ミッション8】
異界を復興させなさい
復興度によって報酬が変化します
現在(110%/100%)
※このミッションを終了させてください
草凪澄の優しい声に返事をしてから、俺は意識を失った。
【異界ミッション8 達成】
復興度が50%を越えました
貢献ポイントを授与します
復興度が75%を越えました
異界ミッション9を開示します
復興度100%を達成しました
世界樹の苗木を授与します
復興度が101%を越えました
報酬として【
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は【本当に】未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。
できれば明日も更新したいと思っております……焦って推敲したため、誤字脱字等あればご報告いただければ嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます