異界の異変解決⑭~異界の再建について~
澄人が異界の再建について考えながらワープを行います。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
リリアンさんたちのいる避難施設にワープをする直前、目的地を変えるためにスキルを中断した。
(首都の再建をしてからリリアンさんたちの所へ行こう)
何にもない更地だとみんなを落胆させてしまうと思い、先に首都だけでも再建をしておきたいと思ったのだ。
「見事に何もないな……」
ワープで首都があった場所へ移動した俺は、思わず声を上げてしまった。
首都の跡地は見事に焦がされた大地ばかりが目立ち、他には何も残っていない。
入念に地下の根まで燃やしたフィノが胸を張っている様子が頭に思い浮かぶ。
(首都の細部なんて覚えていないから……リリアンさんを呼ぶか?)
自分一人ではどうにもならないので、従者になってくれたリリアンさんと《交信》を行う。
「リリアンさん、今大丈夫ですか?」
俺の声は届いているはずなのに、リリアンさんから返事がない。
(たぶん、返事の仕方がわからないんだよな)
輝正くんや楠さんのときにも同じことが起こったので、催促をしないでしばらく待つ。
『使者さまですか? これで私の声が届いていますか?』
しばらく待っていると、リリアンさんの不安そうな声が届いてきた。
「はい、ちゃんと聞こえてますよ」
『よかったです。これが従者の特権なのですね』
安堵のため息を漏らすような感じで言うリリアンさん。
どこか嬉しそうな雰囲気も伝わってくる。
それから少し雑談を交えながら本題に入ることにした。
まず最初に現在の状況を報告して、次に首都の再建を始めることを伝える。
「ということで、これから復興作業に入りたいと思います。手伝ってくれませんか?」
『もちろんです!』
「ありがとうございます。少ししたら召喚するので、周りの人へ伝えておいてください」
「わかりました!」
周りに人がいる状態で突然リリアンさんが姿を消したら余計な混乱が生じる。
だから先にいなくなることを伝えてもらうように頼んだ。
「もう大丈夫ですか?」
『父にこの場を任せたので問題ありません』
リリアンさんの確認が取れたため《召喚》を行う。
「ありがとうございます。使者……さま……」
跡形も残っていない首都を見て、リリアンさんが目を丸くした。
「すいません……予想以上にひどかったものですから……」
俺と目が合ったリリアンさんは周りを気にしながら悲しそうにつぶやく。
首都はリリアンさんの故郷だと聞いていたので、こんな風に落胆するのも理解できる。
そんな彼女を安心させるようにできるだけ優しい口調を心掛ける。
「リリアンさん、これから首都を復興します。覚えている限りで良いので、首都の風景を想像してもらえますか?」
目の前に広がる荒れ果てた風景を見ながら聞くと、リリアンさんは力強くうなずいてくれた。
「それが復興のお手伝いになるのなら」
「細部まで思い出してくれると助かります。それではお願いしますね」
ここから先は彼女の記憶力に頼ることになるけど、イメージさえしっかり持ってくれれば後は何とかなるはずだ。
リリアンさんは目を閉じ、必死になって故郷のことを考え始めたようだ。
その姿からは本当に首都を愛しているという気持ちが強く感じられる。
「メーヌ、この方法で行けるか?」
『この人に澄人の魔力を通してくれたらできると思うよ』
「よかった」
リリアンさんの邪魔をしないように小声でメーヌと言葉を交わす。
ワープの時にも他の人が行った場所を思い描いてもらうだけで俺が実行できた。
その応用としてメーヌによる建設も可能だと思い、リリアンさんを呼ぶことにした。
「使者さまできる限り思い出しました」
ただひたすら黙り込んで集中していたリリアンさんが目を閉じたまま答えてくれる。
「ありがとうございます、リリアンさん。背中に手を添えますよ」
俺は一言お礼を言い、両手をリリアンさんの背中に添える。
リリアンさんを通した魔力でメーヌに首都の再建を願う。
「メーヌ! リリアンさんの思い描いたように首都を作ってくれ!」
『任せて!!』
俺の体から魔力がグイグイ吸われ、リリアンさんの前に茶色の光が現れる。
茶色の光がまばゆい光と共に弾けると、地面が大きく揺れ始めた。
足元がおぼつかなくなるため、俺はリリアンさんを抱えてから雷の翼を広げる。
「リリアンさん、ここは危ないので上に上がります」
「え!? あの、使者さま!!」
俺はそのまま上空へと移動を始め、再建の様子を見下ろす。
(すごい光景だな)
空から見た大地には、土埃が大量に舞う中から大きな柱が無数に立ち並ぶ。
各柱を中心に次々と建物が完成し、あっという間に元の首都の姿を取り戻していた。
「すごい……こんなことって……」
リリアンさんの方を見ると口を開けてポカンとしていた
まるで映画やアニメのような復興具合に驚くのも無理はない。
「もうすぐできますよ……終わりました!」
完成を知らせるように、一際大きな大聖堂が中央にそびえ立つ。
地上に降り立ち、リリアンさんを降ろす。
俺は少しの間しか滞在できなかったので、きちんと再建されているのかいまいちわからない。
「こんな感じで良かったですか? リリアンさ……ん……」
確認をしようとした俺の目に飛び込んできたのは、嬉しさのあまり泣いている彼女だった。
「使者さま……私は首都に戻ってこれたのですね……」
ハンカチを差し出しながらリリアンさんをなだめ、満足してもらえているようだと安堵する。
『澄人!! 周りにモンスターが現れたよ!!』
そんな時、メーヌがモンスターの接近を知らせてきた。
ハッとして周りへ雷を展開したら、街に必須なものがないことに気づいてしまった。
「……忘れてた。結界も消えているんだっけ……」
再建だけでは人は住めず、結界も張らなければ元通りの生活に戻ることはできない。
建物を戻すだけでも一手間なのに、結界も張るとなるとかなり骨が折れる。
(それでもやり遂げないと……異界ミッションのために……)
【異界ミッション8】
異界を復興させなさい
復興度によって報酬が変化します
現在(15%/100%)
※このミッションは任意で終了できます
まだ涙を流しているリリアンさんを見ないようにして、首都を守れるよう全方位に雷を張り巡らせた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます