異界の異変解決⑬~七色の樹とミュルミドネス~
澄人がミュルミドネスと決着をつけるためにワープを発動しました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「どうして!!! どうしてあなたが枯れてしまうの!!??」
ワープが終わった瞬間、ミュルミドネスの悲痛に満ちた叫び声が聞こえてくる。
七色の葉はすべて散り、みるみるうちに根から腐っていく様子が見られた。
枯れゆく七色の樹にしがみつくミュルミドネスも、全身がひび割れて崩壊している。
(あれじゃあもう……)
俺が近づいても気づくことはなく、ただ叫ぶことしかできていない。
「栄養が足らないのね!? 森を広げればすぐに──」
「そんなことはさせない」
ミュルミドネスが持っていた七色の実を雷で打ち抜き、地面へ転がらせる。
すると、こちらに気づいたミュルミドネスが血走った瞳を向けた。
「クサナギスミトォォオ!! これは貴様のしわざかぁぁあ!!??」
「この大陸に平穏を取り戻すため、お前を倒す」
ミュルミドネスが怒りに震えた声で叫んでくるが、はっきりと言い放つ。
ヒヒイロカネの剣を構えながら魔力を高めていくと、周りに散らばっていた七色の樹の枝がミュルミドネスに集まる。
「私の夢を奪うというのならば、容赦はしない!! 死んで償えぇ!!」
狂ったように叫ぶと、残っている枝がこちらへ向かって飛んできた。
一本ずつ違う動きをしながら迫り来る攻撃を、落ち着いて対処していく。
(何かがおかしい。どうしてこいつは動けているんだ?)
最初に戦った時より格段に遅い攻撃を剣で弾きながら、冷静にミュルミドネスの動きを観察していた。
何にも力が残っていないはずのミュルミドネスから【神性属性】が失われていなかった。
「私の邪魔をするなぁああ!!」
さらに疑問なのは、枯れ木になった七色の樹が復活すると信じて疑っていない。
(余計な考え事は止めろ! 今は目の前の敵を倒すんだ!)
余裕があるときに別のことに注意を取られ、とどめを刺せなかったミュルミドネスを思い出した。
考え事は止め、瀕死になっているミュルミドネスを叩き切る方法だけを頭に思い浮かべる。
そうして魔力を集中させると赤い刀身が輝く。
「はあっっ!!!」
こちらへ飛びかかってきていた数多の枝を切り払い、一気にミュルミドネスへ近づいた。
間合いを詰めて、一閃を薙ぎ払うと刃から発生した衝撃波がミュルミドネスに襲い掛かる。
「ガァアアッッ……こんなものぉおおお!!」
ただの力技なのか、攻撃を受けながら必死に両手で俺を振り払おうとしていた。
(七色の森や樹がなければこいつはこんなにも弱いのか)
ここまでの戦い方を見ていると明らかに体力が落ちており、一撃ごとに苦しんでいる。
(悪いけど、俺が終わらせるんだ)
今までとは違い、最速に近いスピードで剣を振るい、一刀に全ての力を込めた。
「尽力の一撃!!」
俺の一撃は逃げることを許さず、ミュルミドネスの体を両断する。
「こんな……」
ミュルミドネスが驚愕の表情を浮かべて言葉を発し終わる前に、上半身が地面に落ちた。
何かされるかと警戒しながら剣を振り上げた俺をミュルミドネスが嘲笑いながら見てくる。
「私は不滅だ。今倒されようと再びあの樹と共に蘇る」
「それなら次も斬るまでだ」
「不可能だよ。おまえには絶対にできない」
口元を歪めて笑い続けるその表情は、負け惜しみではなく事実を語っているように見えた。
「クサナギキヨシも同じことを言っていたからな。ハッハッハッ!!!!」
高笑いを最後に、ミュルミドネスと七色の樹がが塵になって消えていく。
完全に消滅すると俺は剣を下ろし、その場に座り込んだ。
「草凪澄も? ミュルミドネスは四百年前にもいたってことか?」
俺の言葉に対して答える相手はいなかった。
代わりにミッション達成を告げる画面が視界に飛び出してきた。
【異界ミッション7 達成】
ユニークモンスター【ミュルミドネス】の撃退に成功しました
報酬として時の回廊への鍵を授与します
(撃退で達成ってことは……ミッションは最初からミュルミドネスを討伐できないってわかったいたのか……)
画面を見ながら立ち上がって砂埃を払うと、手元が白く輝き始める。
それは手のひらほどの大きさで形をなしていった。
(これが【時の回廊への鍵】なのか?)
宙に浮かぶそれを手に取りながら眺めていると、補足するように説明の画面が現れる。
【時の回廊への鍵】
使用することで時の回廊へ入ることができます
(どうせ試練だろ? ……それだったら報酬があるな)
試練を突破した時の報酬は、今まで鍵の名前に関連したアイテムやスキルだった。
時の回廊へと名付けられているので、時間に関係するスキルが手に入る可能性がある。
(試練に行く前に異界の片付けをしないとな……マルタ大陸全土か……まずはリリアンさんに報告へ行こう)
リリアンさんたちがいる避難施設へ戻るためにワープの画面を出す。
街の再建に人の移動、結界の張り直しなど、やることが多すぎてため息をついてしまう。
(さっさと終わらせよう。森を焼いたときのフィノと同じように、メーヌへ魔力を注げば全土にあった村や街の再建くらいできる……よね?)
何事も壊すよりも作る方が難しい。
森は焼くだけでよかったが、配置などを考えながら建物を作るなんて、気が遠くなってきた。
(まあ、簡単にはいかないよな……でも早く終わらないと異界の人たちが困るか……)
不安を感じながらも、やれることはやろうと気持ちを持ち直した。
ワープを発動しながら、もう一度大きなため息をついた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
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