異界の異変解決③~ローレンさんへの選択肢~
澄人がローレンさんへ選択肢を突きつけます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「あなたは冷静じゃない。ジェイソンさんが倒せなかった俺をどうして倒せると思ったんですか?」
「グアッ!?」
ネッドさんが全力で剣を振るう腕へ電気を走らせ、大剣を持てなくした。
剣を振ろうとした勢いが殺せず、ネッドさんは地面へ打ち付けられる。
そのままローレンさんと目を合わせると、俺の前に立っていた彼女が驚きながらつぶやく。
「えっ……どうして!?」
「どういうことだ! 俺に何をした!!」
大剣を落として地面に転がったネッドさんは、信じられないといった表情で俺を見上げていた。
それを見ていたハンターたちも何が起きたのか理解できていないようで、ざわついている。
「落ち着いてください。ジェイソンさんが勝てなかった俺にあなたが勝てると思いますか?」
「貴様ぁああ!?」
ここまで言ってしまうと、自分が草凪澄人だと口にしたようなものなので、仕方なくフードを取った。
地を這うように俺へ近づいてくるネッドさんを雷で動けなくする。
「現状を正しく把握していますか? 今、俺と争うことに意味があると思っているのですか? 答えられるように口だけは動きますよ」
「このぉ!! お前だけはっ!! お前だけは許せないっ!!!!」
俺の言葉も聞かず、ネッドさんは怒り狂いながら叫び続けている。
このままでは話が進まないと判断した俺はネッドさんの全身へさらに雷を走らせた。
「グアアアアアアアアッ!!!!」
どの程度の雷で死んでしまうのか、皇高校の生徒に協力をしてもらったおかげで十分に分かっている。
ネッドさんは皇の生徒よりも頑丈なので、もう少し強くしても大丈夫だろう。
「スミトさん! これ以上は止めてください!! お願いします」
完全に俺への敵意がなるまで雷を流し続けようとしたら、ローレンさんが俺を止めた。
ローレンさんも被害者のようなものなので、彼女が止めてほしいというのならそれでも良い。
「う……ぐっ……」
まだ意識が残っているようなので、死んでいないようだ。
ただ、こんな状況で俺を狙うような人をこのままハンターにしておくのはもったいない。
神格が7まであるようなので、俺のコレクションにしてもよい才能だ。
「彼は混乱しか生みませんよ?」
「それでも殺さないでください……覇王が戦えない今、彼がアメリカのハンターをまとめる役目を担うのです……」
人の話を聞かない人を代表にしても破滅しか思い浮かばない。
ネッドさんをこのままハンターとしてのさばらせていたら、俺や清澄ギルドに悪影響しか及ぼさない未来が見える。
(事故のふりをして一回殺しちゃうか? そうするにしても目撃者が多いなぁ……)
ネッドさんを殺すのは簡単なのだが、ここで問題を起こしてしまうと、また余計な仕事が増えそうだ。
しかし、ローレンさんが説得するように語り掛けてきたので、少しだけ考えて返事をする。
「ローレンさん、あなたはジェイソンさんの治療のために来ましたよね」
「そ、それは……はい」
「ジェイソンさんを治すか、ネッドさんがハンターをして活動できなくなるのか、ローレンさんが選んでいただけますか?」
「…………はい?」
ローレンさんが聞き間違えたかのように間抜けな顔をしたまま固まった。
しかし、すぐに正気に戻り、倒れているジェイソンさんを見ながら数秒悩んだ後、小さく首を振る。
「そんなの……選ぶことなんてできません」
「選んでください。でないと、ジェイソンさんが今のまま動けず、ネッドさんも同じようになってしまいますよ」
「そんな……」
「次に俺と会う時までに考えておいてください。異界ゲートまで送ります」
時間がないのでこれ以上ローレンさんたちにかまうのを止めた。
しれっと、異界ゲートまで案内するように誘導し、みんなを引き連れて向かわせる。
ネッドさんは同じギルドの人たちに抱えられ、引きずられるように俺から引き離された。
(本当に俺に害しか来なさそうな連中だ……)
ネッドさんを抱えた人たちも俺のことを睨んできたため、もう何もしないアピールをしながら見送った。
俺が遠くのモンスターを雷で倒してしまい、周りで警戒しながら移動している人がいなくなっている。
一時間ほど集団に付いていくように歩いていると、地図上に異界ゲートの印が浮かび上がってきた。
もうここに用がなくなったため、ローレンさんへ一言だけ伝えてから離れることにする
「ローレンさん、俺は少し周りのモンスターを倒してから戻りますね」
「えっ!? ちょっと待って!」
「次に会えるのを楽しみにしています」
ローレンさんへ確認のように言葉を言い残し、雷の翼で空へ浮かび上がった。
元の場所へ戻るように空を飛びつつ、ワープ画面を開く。
(マルタ大陸で俺が一番初めに立った場所……そこから森が伸びているはずだ)
ライコ大陸に一番近い場所へ移動するためにワープを発動させる。
(なんだこの樹はっ!?)
転移先の視界の先に映ったのは、俺の視界を埋め尽くす一本の樹だった。
七色の根が螺旋をえがきながら天高く伸びており、樹の周りにはなにもない。
俺の目の前にはまるで別の世界が広がっていた。
(なんだ……ここ……)
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次回の更新時期は未定です。
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