異界の異変解決②~クワホー大陸のハンター~
澄人がクワホー大陸にいるハンターと接触します。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
今までサラン森林では、アーミーアントがいる部分だけが赤い印が表示されていた。
それが、今は余すところなく全体が赤くなっており、森全体にモンスターがいると地図が表している。
(全体なんてどんな数だ……これはどういうことだ?)
地図に表示されていた地形の色が変化したことと、サラン森林だけ赤くなっていることは絶対に関係がある。
俺は焦る気持ちを抑えて他の地点にも目を向けると、サラン森林が広がっている場所すべてが赤色になっていた。
(とにかく早く森の確認を! ダメだ、その前にさっきの人たちの話を聞かないと……)
自動翻訳されていたが、あの人たちは明らかに地球のハンターだった。
【クワホー大陸】が地球のどこと異界ゲートで繋がっているかがわかれば、新たな取引先として使える。
また、森がクワホー大陸に残っていた場合、そこから繁殖されるかもしれない。
(まずはこの大陸の調査が優先……最悪の場合、もう一度同じことが起こせるからな……)
こんなに遠くの大陸にまで侵略しているサラン森林が、俺たちのライコ大陸へ来ない理由の方が少ない。
クワホー大陸の調査が終わり次第、サラン森林の対岸にあるライコ大陸へ行く必要がある。
(ライコ大陸へサラン森林が来ていないなんていう、都合の良いことはない)
森林が直接海を渡るなんてこと、俺は想像もしなかった。
(俺にできることは……一刻も早い解決だ!)
そのためにこの大陸での用事をさっさと終わらせる。
地図を消し、アーミーアントと戦っていた集団の元へ雷の翼で移動する。
そこでは先ほど撤退したハンターたちが、傷ついた仲間を助けようとしていた。
「この人には回復薬を! ヒーラー!! こっちに来て!!」
聞き覚えのある指示で、周りの人がテキパキと負傷者を治療する。
(あの人に話を聞ければいいか。とりあえず、神の祝福)
指示をしている女性の手が空くように、俺は倒れている人全員を対象に神の祝福を発動させた。
腕や足がなくなった人、血を流している人がすべて完全に回復する。
リーダーと思われる女性が、黄金の光を放っている宙にいる俺へ視線を向けた。
(……ジェイソンさんの治療を急ぐ理由はこれだったのか?)
その女性は、世界ハンター協会で役員をしている女性で、俺へジェイソンさんの治療を必死に訴えてきたローレンさんだ。
気付かれていないことを祈りながらローレンさんの前へ着地する。
「貴様!! 救世主草凪澄人だな!! どうしてここにいる!?」
そんな俺へ大剣を持った男性が立ちふさがり、顔を真っ赤にして怒っていた。
黒いマントとフードで俺だということがわからないようにしているのに、なぜバレてしまったのか不思議に思う。
「…………」
「黙っていても無駄だ! 火の精霊と今の回復魔法で、貴様が救世主以外に考えられない!」
この男性は俺が草凪澄人だと確信しながら怒鳴っている。
ただ、この男性をよく観察すると、俺よりも一回り以上大きいにもかかわらず、何故か怯えているような印象を受けた。
(どこにおびえる必要が? もしかして……)
虚勢を張るように剣先を俺へ向ける男性に疑問を持ちながらも、どう答えるべきかを考える。
すると、ローレンさんがその男性へ手を添え、下に降ろすようにと小声で注意をした。
「いいんです……。彼は敵ではありません……」
「し、しかしこの男のせいでギルドマスター……覇王さまはっ!」
「今はそんな時ではありません、周りを見てみなさい」
二人の会話を聞いていると、この剣を俺へ向けている男性は覇王ギルドの人なのだろう。
となると、ここはアメリカのどこかと繋がっているのかと予想していたら、ローレンさんが俺の前へ出てくる。
「姿を隠すのには理由があると思います。ただ、今回は助けてくれて本当にありがとう」
頭を下げた彼女の声色は、俺へ依頼を受けるように訴えてきた時とは別人のようだ。
他の人たちは少し離れたところから不安そうにこちらの様子をうかがい続けていた。
深々と頭を下げられるのは、あまり気分が良いものではないため、少し早目に要件を切り出すことにした。
「いつからあの蟻たちが侵略を?」
「気付いたのは一ヵ月以上前です。異界のモンスターが急に凶暴になったことが始まりでした」
「凶暴に?」
「はい……始めは覇王ギルドのみなさんが対応してくれていましたが……」
「お前が覇王さまをあんな風にしたからこうなっているんだ!!」
「ネッド!! 止めなさい!!」
1メートル近くある大きな剣を持っているネッドと呼ばれた男性が叫ぶのを聞いた瞬間に確信できたことがある。
(ジェイソンさんはサラン森林に対抗するために、ソニアさんたちへ強引な勧誘を始めたのか)
ソニアさんたちから聞いていた時期と蟻の侵略の時期がほぼ一致しているため、間違いないだろう。
蟻を放置をしておけば、ハンターの強化や素材収集などができる異界が滅茶苦茶になる。
そうなる前に対応しようとしたジェイソンさんが強硬手段に出て、俺に倒された。
(それとこれは別だな。蟻が侵略しているからって、人に迷惑をかけていいわけじゃない)
協力を要請されれば考えないこともなかったため、俺の実験材料になったのは強引な手段をとったジェイソンさんが悪い。
改めて治す必要がないと確認をできたところで、俺は別のことを聞いてみる。
「この人たち全員が覇王ギルドのハンターですか?」
「違うわ。今はアメリカにある全ギルドが協力して対応しているの。私はその管理をしているわ」
俺はローレンさんの目をしっかりと見ながら質問をすると、彼女は迷いなく答えてくれた。
話しながら、横にいるネッドさんの背中を押して俺から離そうとしていた。
「ローレン! なぜこの男が信用できるというのだ!? この男はマスターを……」
「ネッド止めて!! 今、ジェイソン・ホワイト氏の治療と彼へ協力を得る事……どっちが重要だと思っているの!?」
ローレンは両手を広げ、ネッドさんから俺を守るように立ちふさがる。
ネッドさんは有り得ないと呟きながら大剣を大きく振り上げた。
「愚問だ!! こいつにマスターの治療をさせれば、こんな状況簡単に覆るに決まっているだろう!!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまは、ぜひ物語の【フォロー】をよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます