異界の異変解決④~七色の樹~

マルタ大陸の先端に七色の樹がそびえ立っています。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 突然の光景に動揺を隠せない。


 あまりにも異常すぎて理解ができずにいる。


 ただ、自分の目で見ているものを信じるしかない。


「俺はワープ場所を間違えたのか? そんなわけないな」


 何度もワープを行った地点を間違えるわけがなかった。


 地図を見ても近くにライコ大陸があり、ここは本来大陸の先端のはずだ。


 ところが今は、軽くジャンプすればライコ大陸へ着いてしまうほど、大陸間が近くなっている。


(根が大陸を目指して伸びてる……今までの森の侵攻とは違うな……)


 この樹があるのか興味がわいてきた俺は、ゆっくりと降り立とうとした。


 そのとき、警戒していた俺の雷を突き破り、拳大程の何かが高速でこちらへ向かってくる。


「なっ! なんのっ!!」


 慌ててアダマンタイトの剣で防いだものの、その衝撃で黒い刀身が砕け散った。


(俺が使うと壊れるから、もうこの剣使えないな)


 剣の柄を投げ捨て、次々と打ち出されてくる【ナニカ】を避け続ける。


 空中で態勢を整え、地面へ足を付いた瞬間、俺は地面に埋まっているナニカを確認した。


(七色の……実か!? 樹が攻撃を仕掛けてきている!?)


 七色の実が巨大な樹から弾丸のごとく飛んでくる。


 雷だけで防げるような威力ではないため、立ち止まったら体をバラバラにされそうだ。


(草薙の剣で七色の樹を叩き切ってしまえば終わるか!?)


 数秒の時間を稼げれば神の一太刀で樹を一刀両断できる。


 その時間を稼ごうとして樹から離れたとき、背後で地面を踏む音が聞こえてきた。


「よくぞ私の眷属たちを可愛がってくれたな」


 後ろを振り向くと、この世のものとは思えぬ美女が立っていた。


 腰まで伸びた長い髪が揺れ、体全体が薄い七色光で包まれていた。


 背中にある六枚の羽がとても神秘的に見え、なぜか恐怖心を抱く。


「この私が直々に迎えに来てやったというのに逃げ回るとは何事か」


 人ならざる者にもかかわらず声まで美しく聞こえるので、普通の敵ではないと思い警戒心を最大にした。


 女性は俺を上から下へと観察した後、触手のような腕を伸ばしてくる。


「クサナギスミト、お主の戦い方はよく知っている……ジョンと呼んだ方がいいのか?」


 俺をつかむ直前で手を止め、女性も俺をじっと見つめたまま問いかけてきた。


 なぜ俺のことを知っているのか分からないが、ただ俺の名前を呼んだだけ。


 それだけなのに、本能が告げている。


 今のままでは勝てないと――。


「あんたは誰だ?」


「ほう、我を知らないとはな……ますます面白い」


 俺に答えを聞かせることなく、女性の姿が変わり始めた。


 全身が白く輝き、頭から2本の触覚が伸び始める。


 俺に伸ばした手が徐々に大きくなっていき、人のものとは思えない鋭い爪が現れる。


 そして、口の中から覗かせた牙が人間ではなく獣であることを主張していた。


「私は神族、ミュルミドネスである! 愚かな人間よひれ伏せ!!」


 神族と名乗る化け物は、圧倒的な威圧感を放ちながら俺を見下ろした。


 二メートルはあるであろう大きな足が大地を踏みしめているため、その巨体がどれほどまで大きいのかが想像できない。


 そんな規格外の存在を前にしても俺は一歩たりとも引けなかった。


(マジか―……こんなタイミングで出てきちゃうのか……)


【異界ミッション7 条件開放】

 開示時間前ですが対象と遭遇したため条件を開放しました


【異界ミッション7】

 ユニークモンスター【ミュルミドネス】の撃退

 成功報酬:時の回廊への鍵

 失敗条件:受注者の死亡

      異界人の生存者数【0】⇒現在749人


(どれだけ減っているんだ!!?? アリテアスの人口だけでも5000人は超えていたのに!?)


 ここで倒すことができなければ異界に未来はなく、いつ地球へ魔の手が伸びるかわからない。


(ミュルミドネスが話しかけてきてから、実による攻撃が止んでる……今がチャンスだ!!)


 そう考えた俺は一筋の希望を見出すために全力の一撃を放つことにした。


 アイテムボックスから草薙の剣を抜き放ち、強く握りしめる。


 ミュルミドネスの後ろに回り込み、七色の樹とミュルミドネスを両方視界にとらえた。


「神の一太刀!!」


「愚か者め!!!!」


 草薙の剣から放たれた黄金の斬撃へ、ミュルミドネスは自ら飛び込んだ。


 ミュルミドネスに当たった黄金の斬撃は金色の光を放ちながら飛散した。


(何が起きた!? ミュルミドネスは!?)


 まばゆい金色の光で視界を遮られ、ミュルミドネスがどうなったのか目視で確認できない。


 雷による察知を展開したとき、俺へ鋭い爪が迫ってきた。


 慌てて体をそらして避け、その勢いのまま距離を取るように後ろへ跳ぶ。


(まだ死んでいない!? ミッションが達成できていないのが証拠か!!)


 神気創造で魔力を神気へ変換し、草薙の剣へ注ぎ込む。


「愚か愚か愚か!! 私は神族ミュルミドネス!! 神器のよる攻撃は無意味!!」


 再び神の一太刀を放とうとした時、地面から根のようなものが現れて俺を拘束する。


 必死に引き剥がそうとするもののびくともしない。


 その間にも次々と根は現れて俺に絡みつき、身動きが取れなくなってしまった。


「踊らされし愚かな人間よ。我ははるか昔よりこの時を待っていたのだ」


 口まで拘束され、身動きが全く取れない俺へミュルミドネスは近づいてくる。


 全身を拘束された俺は宙吊りになるような形で体を固定される。


「忌々しい草凪の名を継ぐ者をこの手で葬れて【あの方】もお喜びになる」


 そう口にしながら、ミュルミドネスは怒りによって顔をゆがませて歯を食いしばり、憎しみを込めた視線で俺を射抜いてきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

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