救世主草凪澄人⑩~システムメッセージ~

システムメッセージが澄人の前に表示されております。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「なんだこのメッセージは……」


 地面へ降りると同時に出た謎のメッセージに眉をひそめる。


 今までシステムメッセージは、機能の開放通知や説明などしか表示されなかった。


 それが今は具体的に俺へ何かを伝えようとしている。


「境界の謎を知りたかったら神域へ行けということか?」


「どうしたんだい? なにか問題でも?」


 画面を眺める俺をケビンさんが心配そうに見ている。


「いえ、なんでもありません。打合せ通り、また凍らせるので、観測機器の準備をお願いします」


 確実なデータを取るため、異界と同じ方法でモンスターの確認を行う。


 レッドゲート内という緊張もあり、一部の観測員には焦りの表情が見える。


「「「「「「「ブモォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」」」」」」」


 安心させるために声をかけようとした時、大地を揺るがすほどの咆哮が全方向から響き、全身が総毛立つ。


 聞いたこともないような咆哮にケビンさんたちも驚きを隠せず、硬直したまま動けないでいた。


「モンスターは澄人くんが食い止める! 私たちは観測作業を進める!!」


 しかし、ケビンさんの落ち着きと的確な指示により混乱を招くことなく順調に作業を再開することができた。


 あとは全方位からくるモンスターを俺が食い止めれば作戦は完了だ。


「さぁ……やるか!!」


 魔力を最大限まで放出するため、大きく両手を広げる。


 ミノタウロスの大群は進行が速いが、それ以上に俺が周囲を氷漬けにするのが早い。


「はあああっ!!!」


 体中から魔力が漏れ出し、地面から冷気が噴き出した。


 瞬く間に広がる白い霧がドーム型を形成し、その中にいるすべてのものを凍らせていく。


──キィィイイン!!


 空気さえも凍らすその音と共に周囲に、四方から迫るミノタウロスが氷漬けとなって止まる。


「ガァア……」

「ゴア……ガガ……」

「グルルルルゥウ……」


 冷気に触れたミノタウロスが凍り、その動きを完全に止めた。


 観測の邪魔にならないように、さらに魔力を集中して一帯を白く染め上げる。


 限界近くまで魔力の放出を行ったことで、境界内で動けているミノタウロスがいなくなった。


(なんかミノタウロス多いな……こんなにいたか?)


 本当に動いているミノタウロスがいないか雷で探っていたら、異界よりも数が多いような印象を受けた。


 そんな疑問を覚えながらも、これで調査ができるので気を引き締めてミノタウロスを観察する。


「ケビンさん!! ありました!! ペイントです!!」


 ミノタウロスを一体一体見て回っていると、俺が用意したペイントボールと同じ色が付着している個体を発見した。


 俺が見つけたミノタウロスを確認してもらうために、慌ててケビンさんを呼ぶ。


「本当にいた……異界と境界は繋がっていたんだ……」


 寒さでただでさえ青い顔をしている彼の口から絞り出すようにして声が出る。


 俺の声につられてケビンさんについてきた観測員の人たちも、ミノタウロスに付いたペイントを見て絶句していた。


「必ず他にもいるはずです。すべてのモンスターを調べましょう」


 俺の言葉に全員がうなずき、レッドライン内にいるすべてのミノタウロスを調べる。


 調査結果としては、異界でペイントを付けたすべてのミノタウロスがレッドゲートへ出現していた。


 しかし、半分以上のミノタウロスにはペイントがないのと、一定時間ごとにペイントの付いていないミノタウロスが現れるため、さらに謎が深まる結果となった。


 すべてのミノタウロスの調査が終わったのを確認してから、最初の地点にケビンさんたちを集める。


「撤収準備は終わりましたか?」


 俺は観測員たちの顔を見ながら状況を聞く。


 すると、誰も言葉を発さずに黙って首を縦に振った。


「えっと、出口は……」


 そう言いながらレッドゲートの出口を探すが、どこにも見当たらない。


 なんで? と思いながら周りを見ると、ミノタウロスの氷像が俺たちを囲んでいることに気が付いた。


(いけないいけない。完全に倒すのを忘れていた)


 レッドラインへ突入したら中のモンスターを倒しきるまで出ることができない。


 氷漬けにしていたらその法則を忘れていたため、まだ出口を出現させていないことに気が付いた。


 動かなくなっているミノタウロスは俺の魔力の支配下にあるので、一斉に粉々に吹き飛ばす。


 小さな氷の粒子が大量に舞う中、帰還用のゲートが現れた。


「それでは帰りましょうか」


 ケビンさんたちに帰還を促すとみんなが俺のことをじっと見つめてくる。


(どうかしたんだろう? ……まあいいか)


 見つめてくるだけで何も言われないため、どうぞとばかりにゲートに手を向けた。


 一応全員が帰還するまで警戒して、何もないのを確かめてから俺はもう一度システムメッセージを表示させる。


【システムメッセージ】

 境界の謎を解明しようとする者へ

 神器をすべて集めよ

 さすれば扉が開かれる


「神器……俺が手にしていないのは勾玉の【陰】だ」


 俺が持っていない神器は、結界石を生み出すと言われている八尺瓊勾玉【陰】。


「この時間が経つ前に異界に行った方がいいのかもしれないな」


【異界ミッション7】

 解放条件:ユニークモンスター【???】の討伐

 条件開示まで62:25


 時間が経ってから該当のユニークモンスターを探そうと思っていたが、サラン森林の侵食がどうにも気になる。


 異界ゲートを通じて地球へ根を伸ばしてくるほどなので、異界ではどんなことになっているのか想像もつかない。


 サラン森林の調査のついでに、クサナギさんを説得して八尺瓊勾玉【陰】を譲ってもらおう。


「でも、その前に今回のまとめだな。相変わらずやることが多い」


 次から次にやることが増え、やるべきことが多すぎて苦笑いを浮かべる。


 ため息をつきながらレッドゲートを後にする俺は、この後に来るであろう事務処理に頭を悩ませた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

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