救世主草凪澄人⑨~異界ゲートの場所~

澄人がグリーンランドにある異界ゲートを探しています。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「本当に海の中にあった……これは見つけられないはずだ」


 俺はあふれるように出てくるアーミーアント処理しつつ、異界ゲートを眺める。


(こちら側が海の場合、異界へ海水は流れ込まないのか?)


 異界ゲートをくぐってみようかとも考えたが、その間を与えてくれないほどアーミーアントが押し寄せてきていた。


(まずはこれを止めるか)


 途切れることなくアーミーアントがこちらへ侵攻しようとしているため、まずはこれを止める。


 堰き止めたアーミーアントを氷漬けにしたまま粉々にせず、異界ゲートの向こうまで俺の魔力を流し込む。


 最大限に氷の付与を行い、触れるものすべてを凍らせる勢いで魔力を放出した。


(魔力がゲートの向こうへ届くことはわかってる! 永久凍土にしてやる!!)


 空気さえも凍らせる濃度で魔力の放出を続け、余波で周囲の海が動きを止めた。


「これくらいにしておくか。向こう側には行けないな……」


 異界ゲートの周辺が真っ白に染まっており、生き物を拒絶するかのような冷気を放つ。


「ゲートの向こう側も同じようになっているといいな」


 異界でも氷河期が訪れたみたいに白く染まった世界になっていてほしい。


 メーヌの能力があれば凍った地面を探し出すことが可能なため、ここが異界のどこと繋がっているかがわかる。


「サラン森林の近くであることは確かだけど、ゲートっぽいものは見たことがないんだよな……」


 何度も行き来しているサラン森林付近の地形を思い出すが、森の風景しか思い出せない。


「あー……このままにしておくと、もう一回サラン森林の植物がこっちに来る可能性があるのか」


 俺は腕を組み、白い景色の中心にある異界ゲートを睨む。


「今のままだと困るな」


 いくらゲート周辺を凍らせても、新たなモンスターや植物がこちらへ来るかもしれない。


 その可能性があるため、このまま異界ゲートを放置しておくのは危険だ。


「これって消せるのかな? やってみればわかるか!」


 念押しのためもう一度異界ゲートの向こう側へ、氷を付与した魔力を十分に注ぎ込んでおく。


 そうしてから草薙の剣を取り出し、頭上で構えて神気を開放する。


「草薙の剣よ!! 異界ゲートを断ち切れ!! 神の一太刀!!!!」


 異界ゲートを消滅させるためだけに神の一太刀を放つために、草薙の剣を振るう。


 振り下ろすと同時に金色の斬撃が異界ゲートに向かって放たれる。


 周りに立つアーミーアントの氷像を割ってから異界ゲートに衝突した金色の斬撃がさらに強い光を放つ。


「きえ……た……な」


 数秒ほど輝き続けた光が収束していく中で、俺は異界ゲートが完全に消滅したことを確認できた。


──パキィーン!!


 異界ゲートの消滅を祝福するように甲高い音が鳴り響き、氷の世界となった一帯に静寂が訪れる。


「よしよし、上手くいったようだ……けど……」


 氷漬けになったまま動かない海を横目に、何にも現れない画面に首を傾げた。


 これまで他の人がやったことないようなことをした時、【シークレットミッション達成】などの画面が現れた。


 今回も異界ゲートを消滅させたので同じように何かしらのミッションを達成したことになると思っていたのだが──。


(出ないな……これはミッションになっていなかったのか?)


 何かもらえることを期待していただけに、何も起こらないと、どっと疲れが湧いてくる。


「よし! 切り替えよう。最初の目的を達成しないと」


 元気を出し、雷の翼で氷漬けの海を突き破るように抜け出した。


 改めて自分が氷漬けにした海を見て、異様だったことに反省する。


「こんなに凍らせたのか……フィノで溶かしておこうかな……」


 自分で作り出したものだとしてもここまでできるとは思っていなかった。


 海面が波立ったまま広範囲に渡って凍っており、水の流れを止めてしまっている。


(相手がモンスターじゃないとこんなになるのか)


 自分の周囲だけを凍らせていたつもりだが、一キロメートルに及ぶ広大なエリアを一瞬にして凍結させていた。


「もう2度と同じ事はしないようにしよう。よし!」


 フィノに頼んで氷を解凍してから、グリーンランド中央部に発生したレッドラインの場所を再確認する。


(ケビンさんたちに来てもらうからもう一度モンスターの掃除だな)


 すべてのレッドラインを消滅させたわけではないので、もう一度目的地周辺の清掃をしておく。


 そのついでに邪魔にならないように、レッドラインを消滅させたいと思う。


「ポイント稼ぎだ。やるぞ!」


 気合を入れなおした俺は意気揚々とレッドラインへ単独突入を繰り返した。


◆◆◆


「みなさん、ここがグリーンランドです」


 清掃が終わった俺は、ケビンさんたちをグリーンランドへ連れてきた。


 わくわくしながレッドラインを眼前に見据え、これから起こるであろうことに胸を躍らせる。


 このレッドラインの中に異界で確認をしたモンスターがいれば境界発生の仕組みが解明されるはずだ。


「澄人くん、本当にこんな平和なところがグリーンランドなのかい?」


「そうですよ。掃除をしたのでそう思われるのもわかります」


「……掃除とは?」


「全部で18あったレッドラインをすべて攻略し、オーバーフローで出ていたモンスターを消滅させておきました」


 俺の説明を聞いたケビンさんたちはポカンとした表情のまま固まってしまう。


「ハハハ……発表することが増えたな……」


 数秒すると、ケビンさんだけは乾いた笑いを浮かべ、どこか遠くを見つめていた。


「レッドラインへ突入します。準備はいいですか?」


 俺は少しでも早く突入したい気持ちを抑えながら、みんなに声をかけた。


 同行してくれているケビンさんたちは真剣な面持ちになり、静かにうなずく。


「じゃあ、行きましょうか」


 いつものように雷を展開しながら、目の前で回る赤い渦巻へ足を踏み入れた。


 地面へ着地しようとした時、いつもとは違う画面に俺は目を奪われた。


【システムメッセージ】

 境界の謎を解明しようとする者へ

 神器をすべて集めよ

 さすれば扉が開かれる


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまはぜひフォローをよろしくお願いいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る