天草紫苑の長い一日前編~草凪澄人からのメッセージ~
天草紫苑視点による救世主草凪澄人の活躍をお送りします。
前後編に分かれているので、お楽しみください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
──ブー、ブー、ブー
「こんな朝からなんでこんなにメッセージが?」
眠い目をこすりながらスマホを見ると、草凪くんからミス研の一年グループへメッセージが送られてきていた。
それに返信しているのか、いまだにメッセージの通知が鳴りやまない。
【ミステリー研究部一年生G】
草凪澄人【今日か明日にみんなを驚かせるニュースが入ると思うよ】
SENA【私はお兄ちゃんにいつも驚かされているけど?】
真【ギルドマスターが頭を抱えていた件ですか?】
♰翔♰【平義先生も昨日誰かと電話をしてから学校に泊まり込んでいるらしい】
SENA【それ初耳! お兄ちゃん、今回は何をしたの?】
まゆまゆ【今日も部活が休みらしいから、どこかに集まらない?】
輝正【僕は大丈夫!】
Arabella【わたしもみんなに会いたいです】
私以外のクラスメイトがメッセージをやり取りしている。
真友の提案へ返信をするためにメッセージの入力を始めた。
紫苑【私も大丈夫。おじさんのお店に集まる? 注文さえすれば喜んで場所を貸してもらえるよ】
SENA【パフェを食べたいから、紫苑の意見に賛成!! お兄ちゃんスマホ見てる!?】
聖奈の返信速度に微笑みながら、今日喫茶店の手伝いをすると言っていた姉へ一言伝えておこうと思う。
(姉さんはもう下かな?)
ベッドから体を起こし、着替えている途中でふと気づくことがあり手を止めた。
「……私たちを驚かせることってなんだろう?」
こう言ってはなんだが、草凪くんに振り回されている私たちは大抵のことでは驚かなくなっている。
それを草凪君も知っているはずなのに、わざわざ前もってそう宣言をされると、相当強烈なことじゃないと驚かないだろう。
(うーん……全く想像がつかないな……)
1人で考えていてもわからないと思ったため、姉さんに聞いてみることにする。
手早く支度を終えて1階にあるリビングへ行くためにドアを開けた。
すると、キッチンからはいい匂いが漂っていており、食欲を刺激するために鼻を動かして空気を取り込む。
お母さんが用意してくれた朝ごはんに釣られるように下へ降りると、先に食事を済ませた姉さんがコーヒーを飲んでいた。
「おはよう姉さん」
「おはよう紫苑、お父さんたちは出かけたよ」
「ふーん、いただきます」
姉さんと向かい合うように座り、朝食を食べ始まる。
ゆっくりとコーヒーを飲みながらテレビを眺めている姉さんの横顔を見ながら口を開く。
「そういえば、草凪くんが私たちを驚かせてくれるみたいだよ?」
「ふーん……まだニュースでそれらしいことは言っていないけど……なんだろうね?」
姉さんも草凪くんの話に興味を持ち、私の方を向いて相槌を打ってくれた。
ニュースを聞き逃さないようにテレビのボリュームを上げていく。
『──続いてのニュースは』
食事を終えてしまったけれどもう少し姉さんと話していたかったため、食後の紅茶を入れてから改めて座り直した。
「あ、そうそう。今日、一年生グループでおじさんのバーガーショップへ行こうと思うんだけど、大丈夫かな?」
「一年生全員で? 注文さえすれば大丈夫よ。今日は私もアルバイトで入るし、話をしておく」
「ありがとう、助かる」
姉の協力を取り付けたため、バーガーショップ草地に集まれることをみんなへ報告しようと思う。
スマホの画面を見ると、草凪くん以外のメンバーが参加すると連絡してきていた。
(午前中の集合がいいかな? お昼を頼めばおじさんも笑顔になってくれるよね)
そう考えて連絡をしようとした時、テレビから緊急速報を知らせる音が鳴り響く。
その音に驚いてスマホから目を離すと、とんでもないことが字幕で表示されていた。
【速報】
【救世主草凪澄人により、グリーンランド全土が開放された。また、長年偶然とされていた境界発生の原因も判明】
「はぁ!?」
「噓でしょう!?」
字幕の文字を読んだ瞬間に私とお姉ちゃんは声を出してしまい、テレビにくぎ付けになる。
私たちは自分の体が震えるのを感じるほど衝撃を受け、言葉を発することができなくなった。
(あのグリーンランドを開放!? それに境界の発生には理由があったの!?)
グリーンランドへ人が入れないことも、境界発生が偶然なことも教科書に載っているレベルのことだ。
それが草凪くんの手によって覆されたと、文章を読んだ私は理解した。
『先ほど世界ハンター協会より発表がありました! 人類が居住を諦めたグリーンランドが開放され、境界発生のメカニズムが判明したようです!』
慌てるようなアナウンサーの声とともに映像が切り替わる。
その映像の右上部には世界ハンター協会会見と表示されている。
英語で行われている会見を日本語に訳した文字が流れるように進んでいく。
赤い光を放つ石や青い光を放つ石を【結界石】と説明しており、これを異界で使うと地球上に境界が発生するようだ。
結界石は異界で自然発生するものらしく、草凪くんが偶然発見したらしい。
「あんな石見たことない……」
姉さんがテレビに映された結界石と呼ばれるものを見ながらそうつぶやく。
会見をしている人が持つ結界石を私も凝視したが、姉さんと同じように見たことがなかった。
その間にも会見が続き、結界石の用途も説明されており、異界内で安全地帯を確保できるそうだ。
(結界石でモンスターが現れなくなる!? そんなことって……)
これまで異界内ではいつモンスターに襲われるかわからず、常に警戒しなければならなかった。
それなのに、結界石はモンスターが出現しなくなるという。
会見の内容をにわかに信じることができず、私は訝しげにテレビを見つめてしまう。
しかし、説明のために用意された画面に映し出された映像を目にし、息をのんで見入ってしまった。
それは、私たちが見慣れている異界で建物を建てるために作業している動画だった。
(嘘……異界に建物が……)
信じられないことだけれど、しっかりと撮影されていることから、事実として受け入れるしかないと感じる。
会見が終わっても私の頭の中はこんがらがっており、混乱の渦に巻き込まれてしまった。
無意識のうちにスマホに手が伸び、画面へ視線を移していた。
まゆまゆ【みんなテレビをつけて!!】
♰翔♰【澄人のことをテレビでやってる!】
草凪澄人【俺は用事で異界へ行くから集まれない】
会見を知らせるメッセージと、途中に送ってきたとみられる草凪くんのメッセージが表示されていた。
グループ内の全員がテレビにくぎ付けになっていたのか、誰も草凪くんの返事に応答していない。
(草凪くんに質問ができる!!??)
今、世界中のハンターが質問をしたいと思っている相手へ私がメッセージを送れる。
動かない脳をフル回転させて、なんとか草凪くんへ聞きたいことをまとめようとした。
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ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
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