戦いの結果⑦~草地翔の実力~

澄人が翔と戦おうとしております。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 大剣を持った人と戦うときに気を付けなければいけないことは、いくつかある。


(ジェイソンさんと戦った時のことを思い出せばなんとかなるだろう)


「始め!!」


 先生の開始の合図と同時に、翔は地面を強く蹴って一気に距離を詰めてきた。


「ふっ!!」


「くっ!?」


 振り下ろされる一撃をギリギリで避けると、地面にめり込んだ刃から土煙が上がる。


 そして、そのまま横薙ぎに払われる攻撃を避けるために後ろへ飛び退いた。


「まだまだぁっ!!!」


 着地した俺へ、翔の追撃が続く。


 右から左へ水平切りを放ってきたので、バックステップを踏みつつ腰を落としてかわす。


 さらに一歩踏み込んでから、袈裟斬りにするように斜め上から振り下ろしてきたが、これは上体を反らして回避する。


 そこから俺が反撃に移る隙もなく、次々と攻撃を繰り出してきた。


「澄人!! どうして反撃してこないんだ!!」


 翔が叫ぶが、俺は鑑定で覗いた彼の体力数値を見て顔をしかめてしまう。


 なぜなら、翔が攻撃を行うたびに体力が減っており、命を削るような行為をしているからだ。


「澄人ぉっ!!!」


 翔の気迫に押されてしまい、一瞬だけ足が止まってしまう。


 その隙に翔が大剣を振りかぶって俺へ肉薄してくる。


 ここが勝機だと判断したのか、翔は赤い魔力を大剣に纏わせた。


「くらえぇええーー!!!!」


 翔の雄叫びが競技場に響き渡り、空気が震えているのがわかる。


 翔が渾身の力を込め、掲げた大剣を叩きつけようとしてくる。


 しかし、俺はそれを見ても動かずに翔を見据えていた。


――ズドォオオンッ!!!!


 轟音と共に割れた石が舞い上がり、砂埃が競技場に充満する。


 翔は俺が立っていた場所を見つめ、肩で息をしながら立っている。


「翔、後ろだよ」


 俺がそう言うと、翔は信じられないものを見たかのように目を大きく見開く。


「……え?」


――ドンッ!!!!


 呆然としている翔の背後から、わき腹をえぐるように回し蹴りを放つ。


「グっ!?」


 咄嵯に大剣の腹の部分を使ってガードした翔だったが、勢いを殺すことができずに数メートル吹き飛んでいく。


 俺はその様子を冷静に見届けてからゆっくり近づき、転がっている翔に声をかける。


「立てよ、まだ終わりじゃないんだろう?」


 翔はよろめきながら立ち上がり、血走った目をこちらに向けてくる。


「声を……かけるなんて……遊んで……いるのか? 本気で……戦ってくれよ」


「本気で避けて、確実に当たる時だけ攻撃をしているんだよ。それに――」


「……それに?」


「俺が避けているだけでも、翔は自滅するだろう?」


 剛剣というスキルの効果なのか、翔の攻撃は能力以上の威力を発揮していた。


 それこそ、副作用で体力の数値も大幅に削れてしまうほどだ。


 今も、翔の顔色は青白くなっており、額には脂汗を浮かべている。


 それでも彼は戦うことをやめず、歯を食いしばって剣を構えた。


「……なるほどね。確かに……そうだ」


 翔は納得したような表情を浮かべると、大きく息を吸って呼吸を整える。


(倒れるまで戦い続けるつもりか?)


 そんなことを思いながらも、俺は雷をまとって翔を迎撃する準備をする。


 俺の体に迸る雷を見て、大剣を構える翔が笑みを浮かべる。


「澄人……これが、俺の全力だ!!」


 翔は大剣を握りしめたまま目を閉じて集中すると、体の周りにオーラのようなモノを纏う。


 その色は深紅に染まり、炎のように揺らめいていた。


「……【修羅開放】!」


 翔の言葉が終わると同時に、翔の姿が見えなくなる。


「なっ!?」


 一瞬で距離を詰めてきたと思った時にはすでに目の前に迫っており、上段からのが振り下ろされた。


 俺は反射的に体をひねるようにしてかわすと、耳元で風を切る音が聞こえる。


「なんだよ……それ……」


 地面をえぐった大剣や超加速した翔よりも俺の目が釘付けになったのは、彼の能力値だった。


【名 前】 草地 翔

【神 格】 4/5

【体 力】 60,000/60,000(+300%)

【魔 力】 21,000/21,000(+300%)

【攻撃力】 SS(+3)

【耐久力】 S(+3)

【素早さ】 SS(+3)

【知 力】 D

【幸 運】 D

【スキル】親和性:剣C・剛剣Ⅳ

     身体能力向上Ⅳ・集気

     気配察知Ⅳ・修羅

【備 考】 スキル【修羅】発動中


(能力上昇率がすごいことになっているんだけど……なんだこれ……)


 今まで見たことがないほど能力が上昇しており、俺は言葉を失う。


「うおおおぉぉぉーー!!」


 翔が声を張り上げ、石畳がひび割れるほどの力を込めて踏み込む。


「くっ!?」


 一瞬で間合いに入ってきた翔が、大剣の刃ではなく側面を使って俺の体を弾き飛ばそうとする。


 それを受け止めると、俺の足が膝まで地面にめり込んでしまった。


「まだまだぁ!!」


 翔がそのまま押し込もうとしてくるので、俺は両手で大剣を押して耐える。


 しかし、徐々に押されてしまい、このままでは負けてしまうと焦ってしまった。


 強引に力を込めて押し返そうとしたとき、目の前から大剣が消えた。


「なにが!?」


 俺が驚きの声を上げると、視界の端から赤い残光を残す翔が飛び込んでくる。


「ハッ!!」


 神気で身体能力を底上げし、地面を蹴散らしながら慌てて横へ跳ぶと先程まで俺がいた場所に赤い閃光が走る。


「まだまだぁ!!」


 体勢を立て直す前に、再び赤い軌跡を残して翔が斬りかかってきた。


「そう何度もくらうか!!」


 高速移動する翔を迎撃するために雷の剣を体の周囲へ展開する。


 そして、翔が攻撃する瞬間に合わせて剣を射出した。


「これでどうだ!!」


「効かない!!」


 俺の放った剣を大剣で打ち払いながら、翔は勢いを殺すことなく突き進んでくる。


(ここまでやるとは思わかなったな)


 俺は剣を打ち払われても動揺せず、すぐに次の行動へと移す。


 相手が命を削りながら一撃を放ってくるのなら、こちらも同じように攻撃をすればよい。


 ジェイソンさんが忘れていった【オリハルコンの剣】をアイテムボックスから取り出す。


――ガキィッ!!


 攻撃を防ぐと同時に剣を挟んで翔と肉薄し、お互いの視線が交差する。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次回の更新時期は未定です。

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