戦いの結果⑥~平義先生からの頼み~
澄人が平義先生から頼まれごとをされます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「澄人、ちょっといいか?」
「はい、なんですか?」
「お前、今日の放課後は空いているか?」
「今日は部活もないので、空いています」
「そうか、俺が迎えに行くまで教室で待っていてくれ」
「わかりました」
(何の用事だろう?)
平義先生と約束を交わしたあと、俺たちはそれぞれ学校へ向かう。
教室に入ると、いつもの場所に輝正くんが座っていたので、約束を果たしたことを伝える。
「おはよう輝正くん。昨日の話だけど、そのうちギルドマスターから話があると思うからよろしくね」
「おはよう……昨日の今日でもう話をしてくれたの?」
輝正くんが目をぱちくりしながら挨拶をすると、少し離れた場所から声が聞こえてきた。
「全員面接をしてくれるみたいだから、日程が決まったら教えるね」
一緒に教室へ入った聖奈が水守さんと紫苑さんへ俺と同じようなことを伝えている。
水守さんと天草さんは嬉しそうに聖奈へ礼を言い、聖奈は笑顔のままうなずく。
その様子を見ていた翔が輝正くんと話をしている俺へ熱視線を向けてくる。
「翔も先生が頼んでいたから大丈夫だよ」
「……本当に?」
「うん、平義先生から連絡があると思うよ」
「そっか、わかった」
翔は安心したのか、ほっと息を吐いて胸をなでおろす。
その後、始業の時間まで雑談をしていたら平義先生が入ってきて、ホームルームが始まる。
先生が話をしている間、翔がソワソワとしているのが気になった。
「澄人、今日は部活へ顔を出すの?」
帰りのHRが終わると、紫苑さんが俺の席まで来てこれからの予定を聞いてきた。
「今日は平義先生に呼び出されているからいけないと思う。部長へ伝えておいてくれるかな?」
「いいよ。じゃあ、また明日」
「うん、また」
俺が断ると紫苑さんが少し残念そうな顔になったが、それ以上何も言わなかった。
紫苑さんは俺に手を振ってから、すぐに聖奈たちのところへ向かっていった。
それを見送っていると、翔が鞄を持ってこちらを見ていることに気が付き、目が合う。
「澄人……俺も先生から残るように言われているんだけど……」
「翔も?」
「ああ……なんだろうな?」
「さぁ? 何も聞いてないよ」
「そっか……」
俺が知らないということがわかると、翔は困った顔をしながら着席する。
何も話をせずに二人でボーっとしながら待っていたら、平義先生が教室に入ってくる。
「澄人、翔、行くぞ」
「あっ、はい」
いきなりついてくるように言われた俺たちは、先生の後を慌てて追いかける。
(どこへ行くんだろう?)
先生が俺を連れて向かった先は、ミステリー研究部専用の更衣室だった。
「二人とも、着替えてこい」
「えっ!?」
「あの……どうしてですか?」
先生の指示に対して俺と翔は驚きの声を上げてしまう。
しかし、先生は質問には答えず、ただ黙って俺たちを見る。
仕方なく俺たちはそれぞれのロッカーへ向かおうとした。
「地下の競技場で待つ」
それだけ言い残して先生はこの場から離れていった。
「……」
「どうしよう澄人」
「とりあえず着替えようか」
2人で顔を合わせてしまったが、言われた通りに着替えることにした。
荷物をまとめて準備を終えると、ちょうど先輩たちが更衣室に入ってきた。
「あれ? 二人とも今日は休むんじゃなかったの?」
「はい、その予定だったんですけど……」
翔が事情を知らない先輩たちへ説明を行う横で、俺は淡々と着替えを終わらせる。
「翔、先に行ってるよ」
「あ、待って!」
「すいません、今日はご迷惑をおかけします」
「先生に呼ばれているなら仕方がないよ、気にしない気にしない」
先輩たちに一礼をして更衣室を出て、翔と二人で競技場へ向かう。
競技場へ着くと、先生が1人でベンチに座っており、こちらへ来いと手招きをしてきた。
指示された通りに近づくと、先生はおもむろに口を開いた。
「翔、澄人と全力で戦え」
先生から告げられた言葉は唐突なものだったが、薄々感づいていたことなので特に驚かない。
ただ、なぜこのタイミングそんなことを言われるのか理由がわからずに困惑してしまう。
「先生……本気ですか?」
「本気だ」
翔が真剣な表情で先生へ問いかけるが、先生は迷わずに即答をする。
俺は薄々気付いていたため何も言わずに、鑑定で翔の能力を視た。
【名 前】 草地 翔
【神 格】 4/5
【体 力】 20,000
【魔 力】 7,000
【攻撃力】 B
【耐久力】 C
【素早さ】 B
【知 力】 D
【幸 運】 D
【スキル】親和性:剣C・剛剣Ⅳ
身体能力向上Ⅳ・集気
気配察知Ⅳ・修羅
(だいぶ成長しているな。もう一端のルーク級だ)
翔は能力値Bが二種類以上あるため、出会った時の夏さんと同じルーク級だ。
俺が翔をじっと見つめていると、先生が話を続ける。
「澄人、翔の能力を知っているな?」
「はい」
「それを踏まえて、今の翔と戦ってほしい」
「わかりました」
先生と会話をしている間も、翔は一言も言葉を発さずに俺のことを見続けている。
(何を考えているんだろうか?)
翔が無言のままなのが不思議でならない。
いつもなら何かしら話しかけてくるはずなのに、今日に限ってずっと黙っている。
「翔、武器はそれでいいの?」
翔はミスリルの大剣を背負ったまま俺を見ているため、本当に戦うのか確認する。
「……」
しかし、翔は何も答えない。
俺の質問を無視するように立ち尽くしている。
「翔?」
もう一度声をかけるが、それでも返事をしなかった。
「澄人、翔のことは気にしなくていい。始めろ」
先生は翔が何も喋らないことをわかっていたようで、俺に戦いを始めさせようとする。
「翔、始めるぞ」
「…………わかりました」
翔は深い深呼吸を終えてから、大剣を構えて俺に向き直る。
俺は翔のステータスを思い出しながら間合いを取った。
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