戦いの結果③~白間輝正の推薦~
澄人が輝正へ推薦の条件を伝えます。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「注目を集めても良いなら推薦するよ」
「注目? 清澄ギルドに加入するからってこと?」
「それに似ているんだけど、輝正くんには覚悟を決めてもらう必要がある」
「どんなことがあっても大丈夫だよ。僕は君と同じギルドに入りたいんだ」
輝正くんの目は真剣そのもので、俺が思っている以上に本気なのだろうと感じる。
「わかった。じゃあ、食事が終わった後にギルドハウスへ案内するよ」
「ありがとう! 澄人くん!」
嬉しそうな輝正くんが手を差し出してくるので、力強く握り返した。
「ただ、一つだけ約束してほしいことがあるんだ」
「なにかな?」
「俺がやったことに対して、絶対に口外しないでほしい」
「……わかった」
俺の真剣な表情を見たからなのか、輝正くんは俺の目を見ながらゆっくりとうなずいてくれた。
輝正くんと手を離すと、妙に納得がいかなそうな翔が首をかしげながら戻ってくる。
眉間にしわを寄せている翔へ輝正くんが近づく。
「翔、どうだった?」
「えっと……事情を話し終えたら、わかったって即答された」
「よかったじゃん!」
「そうだけど、こんな簡単に決まっていいのかな?」
「良いんじゃない? 平義先生が適当に返事をするわけないし」
「そうだよね……」
「そうだとおもうよ。推薦がもらえたんだから美味しい物でも食べに行こう!」
輝正くんが翔の肩を数回叩き、駅の方へ向かって歩き出す。
俺は二人に置いて行かれないように後を付いて行った。
食事が終わって翔と別れてから、俺と輝正くんはギルドハウスがある雑居ビルへ到着した。
階段を上り、2階の扉を開けると、中は学校の教室よりも広いオフィスになっている。
奥にはキッチンとカウンターがあり、2人が座れるソファーとテーブルも置いてあった。
「ここがギルドハウスなんだね。すごい……」
電気をつけると、輝正くんが部屋を見回しながら感嘆の声を上げていた。
「とりあえず、飲み物を用意するからそこに座って待っていて」
「わかった」
俺は冷蔵庫から麦茶の入ったポットを取り出す。
コップを2つ用意してから、俺は机を挟んで反対側にある椅子へ腰かけた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
注いだお茶を受け取ると、輝正くんはコップを見つめたまま動かない。
俺はそんな彼を見て、先に口を開く。
「輝正くんには神格【8】のハンターになってもらおうと思っているんだ」
「…………え?」輝正くんがこちらへ顔を向けると、驚いたような声を出した。
俺が何を言っているのか理解できないようで、何度も瞬きをしている。
その反応も当然だと思っており、少しの間を置いてから話を続けた。
「輝正くんの従者機能を解除して……覇王の能力を移植しようと思っているんだ。それでね――」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!」
輝正くんが両手を前に出して俺の言葉を遮ってきた。
俺が口を閉ざすと、輝正くんは深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「ごめん澄人くん。話が唐突すぎて頭が追い付かない」
「うん。そうだよね。ちゃんと説明するよ」
「お願いします」
俺が輝正くんへ説明を始めると、途中で質問を挟みながらも最後まで静かに聞いてくれた。
特に従者登録を解除することには強い抵抗感があったようで、理由を聞いてくる。
「どうして僕が澄人くんの従者を解雇されないといけないの?」
「それはね、輝正くんの神格を上げるためだよ」
「僕の……?」
「俺の従者のままだと俺の神格以上にはなれないんだ」
「…………」
輝正くんが考え込むように黙ってしまったので、俺はそのまま説得を続けた。
この方法なら、輝正くんがハンターとして成長できるかもしれないと思ったからだ。
環境適応症に苦しんでいた時期に比べれば贅沢な悩みだが、能力に蓋がされている今の状態が続くよりかはマシだと思う。
それに、神格の上限が8まであるということは、他のハンターからすれば喉から手が出るほど羨ましいことだ。
しかし、輝正くんの顔色は良くならず、ずっと下を向いていた。
「……それでもごめん。僕は澄人くんの従者を続けたい」
しばらくすると、小さくつぶやくような声で輝正くんが答えを出す。
その言葉を聞いた瞬間に俺は自分の予想していた結果になりそうだと思いながら、輝正くんへ話しかける。
「どうしてもだめかな?」
「病気から救ってくれた澄人くんの従者であることは僕の誇りなんだ。だから、従者を辞めたくない」
「そうか……。わかったよ」
輝正くんの意思が固いことを察した俺は、それ以上は何も言わなかった。
彼が自分で決めたことなので、俺が勝手に何かを言うことはできない。
「それじゃあ、従者のまま能力を移植してみようか」
「えっ!?」
こうなるだろうとある程度予想していたため、俺は次のプランを輝正くんへ提案する。
「成功するかわからないけど、従者を辞めたくないならこの方法しかないよね」
「う、うん? ……お願いします」
自信満々に言い切った俺に対して、輝正くんは半信半疑のような返事をした。
そんな彼の様子を見ながら、机の上にコップを置く。
「じゃあ、まずは死んでみようか」
「え? 死ぬ? 僕殺されるの?」
「そうだね。一回死んで、蘇生するときに能力を移植するって感じかな」
即答した俺に対して、輝正くんが目を丸くしながら、目の前にいる俺のことを見つめている。
その表情に戸惑いが混ざっていることに気が付き、俺は首を傾げた。
「どうしたの?」
「……いや、なんでもないんだ……よくわかったよ」
「そっか。よかった」
輝正くんが何かを言おうとしたが、すぐに首を横に振って笑顔を見せる。
俺はそんな彼に微笑み、右手を差し出す。
「苦しまないように一瞬で殺してあげるからね」
「……ありがとう」
輝正くんが覚悟を決めたのか、俺が差し出した手を握り返してくれた。
俺は輝正くんの体を魔力で包み、捕食を行って彼を一飲みにした。
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