戦いの結果④~能力の譲渡~
澄人が輝正へジェイソンの能力を付与しようとしています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
視界の端に表示されたメッセージを確認してから、呼吸を整える。
対象が生存している状態では、能力を付与することができずにいた。
そのため、姿形がなくても蘇生できる【従者】の白間くんで能力付与の実験を行うしかない。
(従者とはいえ、同級生で【実験】をしてしまう……必ず成功させたい)
従者を神格8に上昇させる貢献ポイントは、2千万ほどになることが予想される。
俺の神格を上げる倍は必ず必要になっていたため、輝正くんが了承してくれて本当に助かった。
(今はステータスを上げるのにも一苦労するほど貢献ポイントが足りていない。これを成功させないと……)
ジェイソンさんのハンターとしての能力と輝正くんを一緒に蘇生させる。
この実験が成功すれば、楠さんや輝正くんへ使うためのポイントが多少は浮く。
ただでさえ今は境界を大量に購入した影響で保有しているポイントが少なくなっていた。
(俺のためだけど、これが成功すればとんでもないことになる)
深呼吸を何度か繰り返し行い、緊張をほぐす。
そして、準備が整ったところで輝正くんを蘇生させると同時に、ジェイソンさんの能力を付与した。
光に包まれながら輝正くんの体が床に横たわる。
(ここまではいつも通りだ……あとは……)
目を開けない輝正くんの能力を鑑定しようとしたとき、遮るように【金色の画面】が表示された。
【シークレットミッション達成】
能力移植に成功しました
スキル【確保】を付与します
【スキル詳細】
スキル:《確保》
使用条件:対象の無力化
説明:対象を生きたままアイテムボックスへ収納することができる
保有者が死亡した場合、アイテムボックス内にいる対象も死亡します
(アイテムボックス内では時間は経過しません)
「よし!!」
思わず声が出てしまい、慌てて口を押さえて周りを見渡す。
誰もいないことを確認した後、大きく息を吐いて胸を撫で下ろした。
俺は倒れている輝正くんのそばでひざを付き、軽く肩を叩く。
「大丈夫? 起きれるかな?」
肩に置いた手で軽く揺さぶると、輝正くんがゆっくりと目を開けてくれた。
彼はぼんやりとした様子だったが、俺が顔を覗き込んでいると、徐々に意識を取り戻していく。
完全に輝正くんが意識を取り戻す前に、俺は彼の能力を確認した。
【名 前】 白間 輝正
【神 格】 5/8《上限拡張不可》
【クラス】 バトルマスター □
【体 力】 25,000(+20%)
【魔 力】 9,000
【攻撃力】 S(+2)
【耐久力】 B
【素早さ】 S(+2)
【知 力】 C
【幸 運】 C
【スキル】皇流剣術Ⅴ・親和性:剣C
身体能力向上V・痛覚耐性Ⅲ
状態異常耐性Ⅲ・境界耐性 □
(上限の拡張だけか……ついでに神格も上がっていてほしかったな……でも、成功だ)
ジェイソンさんのハンターとしての能力を輝正くんへ移植した結果、神格の上限だけに作用している。
能力をそっくりそのまま。というわけにはいかなかったが、これは驚異的なことだ。
じいちゃんやお姉ちゃんたちは魂を削るような鍛錬の末に神格の上限を拡張することに成功した。
それが、他人の能力を移植するだけで拡張するのなら、これほど簡単なことはない。
(従者以外の人へ移植できるか……)
もし、従者以外の他人への能力付与が可能だとしたら、神格の上限が8のハンター集団が作れるかもしれない。
そうなれば、世界中のどの集団よりも強くなれてしまうだろう。
(先走りすぎだ、今はまだ考えなくていい……)
移植をする能力先や、誰に移植を施すかなど、考えることはたくさんある。
ただ、今すぐに実行するわけではないため、今考える必要はない。
(それよりも……輝正くん、そろそろ起きそうだ……)
寝ぼけ眼をこすりながら上半身を起こした輝正くんに微笑みかけた。
「おはよう、輝正くん。体調はどうかな?」
「うん? ここは……どこ……?」
周りを見渡して困惑している輝正くんに、俺はここがギルドのオフィスであると説明した。
すると、次第に状況を理解し始めたのか、自分の手を何度か握る。
「僕は……何か変化したの?」
「それを確認してもらいに行こうか。ハンター証は持っているよね?」
「あるけど……」
そう言いながら、輝正くんはポケットから銀色に輝くカードを取り出した。
俺がそれを受け取って確認してみると、確かに彼の名前が記載されている。
そして、そこには【神格】の欄に【5/5】と記載されていた。
(前に神格を5へ上げたときから変わっていない。夏さんに視てもらえばわかる)
俺は輝正くんを待たせて、スマホを取り出して夏さんへ連絡をする。
今日は地下のギルドハウスで仕事があるようなので、電話をすれば来てくれると、事前にメッセージを貰っていた。
「もしもし、澄人さまですか?」
「そうです、上へ来てもらえますか? 2階オフィスです」
「わかりました。すぐに伺います!」
俺が用件を伝えると、夏さんが快く引き受けてくれたので通話を終える。
夏さんの到着を待つ間に俺は輝正くんと話をしながら、彼に変化がないか慎重に観察をしていた。
それからしばらく待っていると、ノックの音と共にドアが開かれた。
「こんばんはー!」
元気よく入ってきた夏さんは、部屋の中にいた輝正くんを見て目を丸くしていた。
夏さんが輝正くんから目を離さないのは、事前に送っていたメッセージのためだろう。
俺は輝正くんのハンター証を持って立ち上がり、夏さんの前に立つ。
「どうでしょうか? 神格の上限が増えていますよね」
俺の質問に対して、夏さんは目を細めてじっくりと見た後、ゆっくりと首を縦に振った。
「はい……上限が【8】になっています……澄人さま、これは……」
「夏さんが言うのなら間違いないですよね。視ていただきありがとうございました」
俺の言葉を聞いた夏さんが、目をぱちくりとさせて固まってしまった。
「本当に僕の神格の上限が……8? そんな……」
輝正くんは自分に起きたことを理解できていないようで、戸惑っているようだった。
彼の気持ちはよく分かるので、俺は優しく話しかけた。
「まだ実感がないと思うけれど、これから神格を上げるために境界へ積極的に突入してもらうからね」
今回は上限が増えただけで輝正くんの神格が上がったわけではない。
俺がそう伝えると輝正くんは力強くうなずき、覚悟を決めた表情を浮かべる。
「僕が強くなれば、澄人くんのためになるんだよね?」
「もちろん、そのために上限を上げたんだ。ギルドの加入の推薦も任せておいてよ」
「ありがとう。これからもよろしく」
輝正くんが笑顔を俺に向けている横で、夏さんがしかめっ面で考え事をしていた。
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ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
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