臨時世界ハンター会議⑮~捕食の可能性~
澄人がジェイソン・ホワイトを氷で捕獲しました。
これから捕食を行います。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「今、ソニアさんたちを諦めると決心していただけたら、無傷で開放してあげますよ?」
俺が魔力を注ぎ込んだ氷はジェイソンさんが暴れてもびくともしない。
「ふざけるな!! 誰に命令をしているんだ!! てめぇを殺してソニアたちを無理やり連れて帰る!!」
ジェイソンさんが怒鳴ってから、俺へ唾を吐こうとしてきた。
しかし、その唾はジェイソンさんの口から出る直前に、口と一緒に氷漬けにされた。
「交渉決裂ですね。残念です」
そのままジェイソンさんの顔をすべて氷で覆い、完全に動きを封じる。
ここにきて、俺は胸の奥からこみあげてくる興奮を抑え込むことができず、笑みがこぼれてしまった。
ジェイソンさんの顔があるところまで移動し、右手で氷に触れた。
「ようやく人間相手に捕食を行えます……ジェイソンさん、実験を手伝ってくださいね」
俺の魔力でできた氷へ捕食のスキルを付与する。
捕食が付与された氷はジェイソンさんの体を消滅させ、俺の栄養へ変換した。
【スキル獲得】
金剛の意思Ⅵ
説明:目標を達成するまで心が挫けることはない。
尽力の一撃Ⅵ
説明:限界を超えて力を込めることができる。
強者の威圧Ⅵ
説明:格上の相手でもひるませることができる。
(なかなかのスキルだな……っと、関心している場合じゃない)
氷の中にいたジェイソンさんが突然消えてしまったら、この戦いを【見ている】人たちが戸惑ってしまう。
それに、この実験もまだまだ終わりではないため、その合図として豪快に氷を消滅させることにした。
「フィノ!! 業火をもたらせ!!」
『わかったわ!!』
俺の言葉を聞いたフィノが、巨大な炎の玉をジェイソンさんがいた場所に撃ちこんだ。
その炎はジェイソンさんを束縛した氷を燃やし尽くすだけではなく、周囲の大地も焦がしていく。
完全に消滅した氷があった場所を中心に地面が黒焦げになっていた。
「さて、実験はここからだ」
誰にも聞かれないようにポツリとつぶやいた俺は、魔力を練る。
(ジェイソン・ホワイトを蘇生)
人を死から蘇らせることができる神の祝福で、俺が吸収したジェイソンさんを復元する。
金色の光が収まると、そこには無傷のジェイソンさんが現れた。
ジェイソンさんが現れると同時に、俺の前へ画面が勝手に表示される。
【スキル消失】
捕食対象が完全に蘇生したため、以下のスキルが消失します
・金剛の意思Ⅵ
・尽力の一撃Ⅵ
・強者の威圧Ⅵ
(なるほど……捕食した対象が生きていると吸収したスキルが消えてしまうのか)
現れた画面をじっと見つめ、捕食のスキルに対する理解度を深める。
俺の目の前で、ジェイソンさんは不思議そうな顔をしながら周囲を見渡していた。
「ん? ここはどこだ? 確か……俺は……スミト・クサナギと戦っていて……」
記憶を辿っていたジェイソンさんは、俺と目が合うと目を大きく見開く。
「スミト・クサナギ!? お前は何をしたんだ!?」
「ジェイソン・ホワイトさん、三人のことを諦めてもらえませんか?」
ジェイソンさんの言葉を無視し、俺は一方的に彼へ話しかける。
俺の言葉を聞いたジェイソンさんは、激高したように顔を真っ赤にしながら立ち上がろうとした。
「諦めるわけ――」
「メーヌ埋めろ」
「なっ!!??」
立ち上がろうとしたジェイソンさんをメーヌに頼んで、首から下を生き埋めにする。
首だけが地面から出ているジェイソンさんへ、笑顔を向けながら彼の大剣を持つ。
「諦めるって言うまで実験に付き合ってもらいますね」
「や、やめ――」
「……できれば、まだまだ諦めないでくれると嬉しいです」
ジェイソンさんが何かを言おうとした瞬間、俺は大剣に魔力を付与して彼へ頭から突き刺す。
剣先が彼の頭に突き刺さり、力を込めて体へめり込ませていく。
(はい、吸収っと)
再びジェイソンさんを吸収した俺へスキルが付与され、地面には突き刺さった大剣だけが残された。
ジェイソンさんが埋まっていた場所へ視線を向け、上がってしまった口角をゆっくりと指で元に戻す。
(何とかしてスキルを剥がす方法がないか調べてみよう……分かるまで諦めないでくださいね。ジェイソンさん)
何か方法があるはずなので、わかるまではジェイソンさんに粘ってほしい。
そう考えながら俺は再びジェイソンさんを蘇生した。
◆
ジェイソンさんを捕食し続けて数十回目。
ようやくスキルだけを抽出する方法がわかりかけてきた。
ヒントはスキル消失の画面内にあり、【完全】な蘇生をしなければよいようだ。
完全という言葉の意味を解釈するのに時間がかかり、二十回ほど試行錯誤する羽目になった。
「さて、【不完全】にジェイソンさんを復活させてみよう」
神の祝福を単純に使うのではなく、蘇生させたい対象を具体的にすることで、スキルを俺へ残すことができる。
【ハンターとしての能力】を除外し、ジェイソンさんの体のみを復元する。
金色の光が徐々に形成されていき、光が収まった時には鎧を身にまとったジェイソンさんが現れる。
(よし、復元は完了した。次はスキルが残っているかどうかだな)
ジェイソンさんの体が復元されたことを確認してから、俺は自分のステータスを表示させた。
項目へ視線を移した俺は見慣れない文字を見つけ、思わず声を出してしまう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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次回の更新時期は未定です。
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