臨時世界ハンター会議⑭~ジェイソン・ホワイトという男~
澄人が覇王ジェイソン・ホワイトに会うため、学校へ向かっています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ヘレンさんから貰った情報では、ジェイソン・ホワイトはソニアさんの熱狂的なファンだったらしい。
二人はレッドゲート攻略戦で一緒に突入してから、ジェイソンはソニアさんを自分のギルドへ勧誘をし続けているという。
ソニアさんたちが清澄ギルドへ入ろうと思ったのも、ジェイソンさんの勧誘を断る理由にしたかったようだ。
それでもソニアさんたちへの勧誘は止まらず、痺れを切らした彼は直接接触を図ろうとしてきた。
(この二つ名が集まる世界ハンター会議は絶好の機会だったというわけだ)
ジェイソンさんには聞きたいこともあったため、俺は今回直接彼女たちへの勧誘を辞めるように彼へ話をすることにした。
ヘレンさんはお姉ちゃんと師匠へ相談をしていたが、俺が割り込んで今回のようにしてもらった。
「三人とも能力がすごい優秀だし、欲しい気持ちはわかる……だけど、あまりにもしつこすぎる」
ヘレンさんが言っていたことを思い出しながら呟いていると、目的の場所である草根高校が見えてきた。
俺はヘレンさんから預かっている封筒を取り出し、中を確認する。
そこには『ジェイソン・ホワイトの戦闘記録』と書かれていた。
「このタイミングで俺に渡すってことは……ジェイソンさんと戦う可能性が高いってことだよな」
俺は胸から溢れ出そうになる気持ちを抑え、校門を通り抜けて校庭へ向かった。
今日は平日のため普通科の生徒は登校しているものの、総合学科の生徒は全員世界ハンター会議の見学へ行っている。
ジェイソンさんが来ていればこのように静かなわけがなく、どこかしらで大騒ぎになっているはずだ。
「一時間前にいるはずもないよな」
これならのんびりヘレンさんから貰った資料を読めると思いながら校舎内に入ろうとした瞬間、背後から殺気を感じた。
反射的に振り向くと、目の前に大剣が迫ってくる。
咄嵯にアイテムボックスから修理をしたアダマンタイトの剣を抜き、それを受け止める。
そのはずみで持っていた封筒が風に舞い、校舎の方へ飛んで行く。
「ほう、よく防いだな」
俺に攻撃を加えた人物がニヤリと笑いながら言った。
「スミト・クサナギ。お望み通り誘いに乗ってやったぞ」
ジェイソンさんは愉快げに笑いながら口を開く。
「ソニアたちを手放す気になったのか? それなら腕一本で済ませてやろう」
「家族を渡すわけがないでしょう? あなたに諦めてもらうために呼んだんです」
俺の言葉を聞いた瞬間、ジェイソンさんの顔はニヤリと歪む。
「クク……ハハハハハ!! いいな! お前は本当に最高だ! この俺をここまでコケにするのはお前が初めてだ!」
ジェイソンさんはそう叫びながら剣を弾き、再び俺に斬りかかってきた。
「最初から俺と戦いに来たんでしょう?」
「そうだ!! お前を潰せばソニアたちは俺のものになるからな!」
俺が剣を横に振ろうとすると、ジェイソンさんはしゃがみこんで避けた。
「甘い!!」
ジェイソンさんの蹴り上げが俺の顎を狙うが、バックステップをして避ける。
隙が生まれたジェイソンさんを拘束しようと、雷で動きを止めるために魔力を走らせた。
前回の会議の時は簡単に無力化できたため、油断していた部分があったかもしれない。
いくら雷の攻撃をジェイソンさんへ発動させても彼の動きが全く止まらない。
「どうしたぁ!? こんなもんかァッ!!!」
無力化されたことがあるにもかかわらず、彼は雷を気にせず突っ込んできているのだ。
「なぜ……」
俺は思わず言葉が出てしまう。
しかしそんな疑問はすぐに解決された。
「10億ドル使って、お前のためにこの装備を用意してやったんだ。光栄に思え」
彼が着ているのは全身を覆う白銀の金属でできたフルプレートアーマーだ。
それだけで俺の雷を阻止できるとは思えず、ジェイソンさんが止まっている間にも攻撃を続ける。
「チッチッチ。効かんなぁ。この鎧はあらゆる魔法攻撃を吸収する」
ジェイソンさんが自慢げに話しながら大剣を振り下ろしてきた。
俺はその攻撃を受け止めることができず、後ろに吹き飛ばされる。
地面に叩きつけられそうになったが、なんとか受け身を取って衝撃を殺すことができた。
「そして!! インナーも絶縁素材で作った!! お前の雷は俺に効かない!!」
ジェイソンさんが俺に向かって走り出す。
時間を稼ぐために彼から離れようと、俺も全力で【冷たい空気】を切るように走る。
(もう少しだな。時間がかかるのが悔やまれる)
この寒さを全く気にしていないジェイソンさんは、さらにスピードを上げて追いかけてきた。
ジェイソンさんの振るう大剣を受け止めると、俺の持つアダマンタイト製の剣にヒビが入る。
「まだまだァッ!!」
ジェイソンさんが叫んだ瞬間、彼を中心に凍った空気が吹き荒れた。
「なんだこれはっ!!??」
突然足元を氷漬けにされたジェイソンさんは驚きの声を上げる。
持っていた大剣で氷を砕こうと、何度も打ち付けていた。
(もっともっと魔力を!!)
【親和性:氷】を初めて使ってみたが、効果が表れるまでに時間がかかった。
俺はジェイソンさんを拘束している氷をさらに大きくするため、さらに魔力を注ぎ込む。
ジェイソンさんが焦りながらも余裕の表情を見せてくる。
「貴様……こんなもので俺を縛れると思うなよ……? この鎧がこんな氷も――」
「これは魔法攻撃ではないので、鎧が反応していないですよ? あなたの周りを魔力製の氷で固めているだけです」
俺はそう言いながらも氷を成長させるのを止めず、見る見るうちにジェイソンさんの首から下が氷漬けにされていく。
「あなたを完全に固定しました。そんなに言うのなら動いてみたらどうですか?」
「クソが!! 動けねぇ!! おい!! 俺を開放したら半殺しで勘弁してやる!!」
ジェイソンさんが叫ぶが、俺はそれを無視して口を開いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新時期は未定です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまはぜひフォローをよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます