草凪澄の目的⑧~青き草原の試練2~
澄人が青き草原の試練②へ挑もうとしています。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
試練中に呆然とし続けるわけにもいかないため、俺は気持ちを落ち着けながらお知らせ画面を表示させる。
【青き草原の試練①】
達成
5分後に青き草原の試練②を開始します
あと2分26秒
試練が始まる時間が差し迫っていたが、どのような試練なのかは始まってからしかわからない。
少しでも優位に試練を進められるように、俺は雷の翼を広げて森の上空へ脱出しようとした。
「いてっ!?」
ほのかに青く光っている木々の上に出ようとしたら、見えない壁に阻まれて頭を打った。
雷の感知ではなにも引っかからなかったため、完全に油断をしていた。
頭を押さえて痛みを我慢しつつ、見えない結界へ手を添えた。
「なんだこれ? 異様に固い……勾玉の結界とどっちが強固かな?」
触った感触は薄いガラスのようなものだが、力を入れて押してもビクともしない。
試しにアダマンタイトの剣で斬ってみるが、傷一つつかなかった。
「ん? なんだ急に?」
さらに別のことで結界を破ろうとしたら、正面に文字が画面が浮かび上がってきた。
【警告】
これよりこの空間は閉鎖されました
この空間から脱出する方法はありません
【青き草原の試練②】
力を示せ
開始まで あと30秒
「どうせ力を示すのなら……もう、すべてを開放してやる」
この試練はまだ俺の力に納得をしていないらしい。
今まで同じような試練内容はあっても、まったく同じ内容のことはなかった。
地面にはさっきと同じような騎士が群れを成している。
(同じようなモンスターが現れている……もう【これ】を見たいとしか思えない)
俺はこの試練をすぐに終わらせるため、アイテムボックスから草薙の剣を取り出す。
試練がこの剣を振り下ろせというのなら、俺はそれに応える。
剣に溜まっている神気を開放しつつ、神の一太刀を実行するために詠唱を始めた。
我が名は草凪澄人
草凪の意志を継ぎ、試練を攻略する者なり
詠唱が始まると神気が消費され、黄金の光が辺り一面に散る。
詠唱の代償として体力が減り続けるものの、眼下に広がる敵を一掃できるのなら構わない。
(それに、俺がこれだけ草薙の剣を使えることを試練に見せつけるんだ)
草薙の剣を握る手に力を籠め、さらに体力と神気を注ぎ込んだ。
草薙の剣の刀身が輝きを増していき、視界に入るすべての敵を飲み込むように金色の刃を伸ばしていった。
草薙の剣よ我が想いに応えよ!
神の一太刀!!
――ズバァアアッンッ!!!
詠唱を終えて振り下ろした瞬間、草薙の剣からは金色の光線が伸び、周囲の木や地面にいたモンスターたちを一瞬にして消滅させた。
地面はえぐれ、見える限りの地面へ一直線に切れ込みが入っている。
「これでどうだ!?」
限界まで体力を絞り出したせいで息が上がり、肩で呼吸をしながら声を出す。
すると、背後に気配を感じ取り、振り返ると青い光の輪に囲まれていた。
『お見事です』
青い光の輪から現れたのは、先ほどの美しい女性だった。
女性はゆっくりと歩いてきて、微笑みながら拍手をしている。
その光景を見ても、不思議と恐怖心はなく、むしろ安堵した気持ちになっていた。
「そろそろあなたの名前を聞かせていただけますか?」
俺がそう聞くと、女性は口元に手を当てて笑い始めた。
「ふふっ……これは失礼しました」
女性が手を振るうと、目の前にいたはずの姿が消えてしまう。
「私はあなたが試練の書と呼んでいる存在……ですが、私は草凪澄が試練の書を持っていると思っておりました……」
突然後ろから話しかけられたことに驚きつつも、後ろに瞬間移動した女性へ顔を向ける。
彼女は笑顔を絶やすことなく、俺のことを見つめてきていた。
「どういうことですか?」
彼女の言葉に耳を傾けつつ、周囲にいるモンスターを警戒した。
しかし、周りにはモンスターの姿はどこにもなく、聞こえるのは風が吹いている音だけだった。
「それはですね……あ、これをするのを忘れていました」
女性の言っていることが理解できずに首を傾げていると、彼女は「えいっ」と言いながら指を振った。
【青き草原の試練② 達成】
青き草原の試練②を達成しました
成功報酬として、試練の守護者と会えます
女性の声と共に俺の目の前へ画面が表示され、試練を達成した旨を伝える文章が現れた。
「先に出てきちゃいました」
「出てきちゃいましたって……」
俺が呆然としている間に女性はこちらへと近づいてくる。
その姿はまるで女神のようで、見ているだけで吸い込まれてしまいそうだ。
「あなたが試練を終わらせたんですか?」
「はい。あなたの力を存分に見せていただきました」
「ありがとうございます……あの、それで、試練の守護者って?」
俺の言葉を聞いた女性は目を丸くし、驚いた表情で俺を見てきた。
「あら? 試練の書に書いてあった物語を覚えていないの? 守護者について、何回が説明があったと思ったんだけど……」
頬に手を添えて申し訳なさそうな顔をしている彼女に、俺は慌ててフォローを入れる。
「ごめんなさい。読んだのが一年前で、一度しか目を通していないので忘れました……」
「そう……じゃあ、私から教えておくわね」
「お願いします」
俺が謝りながら頭を下げると、彼女かは嬉しそうに笑っていた。
「まず、さっきの場所は青き草原……【始まりの地】と私は呼んでいるわ」
「始まりの地……」
俺のつぶやきに守護者を名乗る女性が反応し、じっと瞳を見つめてくる。
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