草凪澄の目的⑦~青き草原の騎士を蹂躙する澄人~
澄人が青き草原にいる騎士たちを蹂躙しております。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
(なんだこいつら……全然止まらないぞ!? なんだ……あれは!?)
俺に向かってはいずってきている騎士へいくつかの残骸が集まり、元通りの姿に戻る。
同じように周囲に散乱している引き千切られた騎士の残骸がうごめき、元に戻っていく。
(こいつら不死身か!!?? いくら切っても同じじゃないか!!??)
「グギャギャギャ!!??」
恐竜のうめき声のような鳴き声が俺の口から放たれる。
そういえば、先ほどから俺の声がすべてこのようになってしまっているようだ。
べつに話ができなくて困ることもないので、今は気にしないことにした。
俺の声のことよりも、迫りくる騎士たちの勢いが弱まらないことが問題だ。
(この騎士たちはどうなっているんだ? 体力もほとんど減っていない……)
そんなことを考えている間にも、騎士たちは次々と復活を果たしていた。
鑑定で騎士たちの体力を視ても、俺の攻撃が効いていないのか、ほとんど変化していなかった。
(こうなればとことん破壊し尽してやる!!!!)
「グアアア!!!!」
俺は目の前にいた騎士の頭を鷲掴みにし、思いっきり地面に叩きつける。
頭が取れたのにも関わらず、足元の騎士へすぐに胴体が集まってきて、また動き出す。
(無限スライムのような核があるのか? それなら細切れにしてやる!)
疑問を抱きながらも、再生をしようとしている騎士たちを鉤爪で切り刻んだ。
騎士の体は原型が留められないほど粉々になるが、それでも復活する。
(何で倒せないんだ!? 意味が分からない!!)
騎士たちを倒すために剣や鎧などもすべて壊したが、まったく効果がなかった。
それでも粉々にした騎士はなにごともなかったかのように再生する。
だが、体力は減っているため、俺は諦めずに何度も騎士の体を細かく刻んでいった。
騎士たちがバラバラになった肉片になっても、また集まり始めてしまう。
(こならどうだ!!)
「キシャアアア!!」
内側から攻撃をするためため、再生中の騎士の体へ俺の腕をねじ込む。
騎士の体の中は液体のように柔らかく、粘着物が俺の腕へまとわりつく。
そのまま腕を体内をかき回すように動かし、内部から騎士の体を飛散させた。
(これでもだめなのか!?)
「ギイィッ!?」
ここまでしても、散らばった騎士の体が寄り集まっていく。
俺の腕にこびりついた残骸も離れ、集合した塊の中から騎士が再生する。
(倒せない敵を倒そうとしちゃダメなのか?)
このままではジリ貧になってしまうと思いながら、再生を続ける騎士を見つめる。
倒せない騎士たちを圧倒的な力で薙ぎ払ってつつ、この試練の内容を思い出す。
(力を示せってことは……こいつらはもしかして……)
俺はこの騎士たちが何者なのか予想がついたところで、試したいことができた。
この試練が俺の力を出し尽くすつもりで作られているのなら、この騎士たちが不死身なのも納得だ。
(考えても仕方がない! やってみるか!)
俺は騎士たちに背を向け、走り始めた。
後ろからは追いかけてくる気配があり、騎士たちの足音が聞こえる。
ある程度距離を取って立ち止まり、この姿のモデルになったモンスターを思い出す。
(大地を喰らう暴君は
魔力を遮断されて雷が通らない相手を、この恐竜のような口で直接食べる。
剣を振り上げて襲い掛かってくる騎士の腕に狙いをさだめ、口を大きく開けた。
「ガアァ!!」
「!!??」
大きく開けた口に騎士の右腕が入った瞬間、噛みちぎる勢いで顎を閉じる。
鎧が砕けるような音を聞きながら咀しゃくした。
(すごいな鎧ごと噛み砕いちゃったよ)
味覚がないためよくわからないけど、噛むたびに硬いものが砕けていく感触があった。
俺は腕を飲み込んでから大きく口を開き、腕を失った騎士へさらに噛み付く。
(ん? ……なんだ?)
「ゴク……?」
騎士一体を食べ終えると、突然俺の前へ画面が現れる。
【スキル獲得】
魔力遮断
物理ダメージ軽減V
思考共有V
(スキルを獲得できた! やっぱりこの体は捕食スキルが付与されているんだ!)
騎士を食べたことで、暴君が持っていた捕食の能力が発揮された。
俺は次の捕食対象を決めつつ、新しく獲得したいくつかのスキルを確認した。
【魔力遮断 詳細】
魔力による攻撃を軽減・遮断する
※知力SSのため、この値以下の魔力攻撃をすべて遮断
【思考共有V 詳細】
他人と思考を共有できる
5人と同時に共有可能(V)
【物理ダメージ軽減V 詳細】
物理ダメージを半減する(V)
(なるほど、魔力遮断は、知力の値で遮断できる範囲が決まるのか。だから、こいつらは騎士なのに知力が高いんだな)
他のスキルは想像通りだったため、そこまで驚くことはなかった。それよりも気になるのはこの騎士たちのことだ。
(こいつらには意思がない。仲間が喰われているのに、一切躊躇わずに俺へ攻撃をしてくる)
俺は目の前の騎士たちをみながら、自分の仮説が正しいと感じはじめていた。
◆
―――1時間後。
「グアア!!」
俺の目の前には、大量にいた騎士が今は一体たりとも残っていない。
スタイルチェンジを解除し、元の姿に戻った。
「ふぅ……やっと終わった……」
長い時間食べ続けていたらさすがに疲れたため、地面に座り込み、呼吸を整える。
「試練はこれでよかったのかな?」
俺は試練をクリアしたのか不安になり、試練についてのお知らせを地面に座りながら待つ。
すると、画面が出ると同時に視界が真っ暗になった。
「え!?」
慌てて立ち上がろうとしたら、今度は地面が揺れ始める。
「うわっ!?」
あまりの揺れで立っていることができず、地面に膝をついてしまう。
「なんだこれ……」
揺れが収まってから画面を見ようとしたら、先ほどまでの風景が全く残っていないことに気が付いた。
周囲を見渡すと、なぜか草原にいたはずの俺が森の中にいる。
(森……か? 試練で場所が変わるのは初めてだ)
先ほどまで平原にいたはずが、いつの間にか木々が生い茂る森林地帯になっていることに驚きを隠せずにいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
次回の更新も物語を書き上げたら行うため不定期です。
更新を見逃さないためにも、この物語に興味のある読者さまはフォローをよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます