神の使者②~首都へ~

澄人が首都クサナギにある教会にきています。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 獲得したスキルを知らせる画面が表示され、捕食・極で初めてスキルを手に入れることができた。


 同じようにスキルを持っているモンスターを捕食すればどんどん強くなることができるだろう。


「あの、ジョンさん? フローズンフロッグが……」


 その場にいなかったかのように消えたフローズンフロッグを見て、リリアンさんが困惑していた。


 余計な質問をされたくないため、さっさとこの場を後にしたいということをリリアンさんへ伝える。


「フローズンフロッグは跡形もなく消したので大丈夫です。それより、首都へ向かいませんか?」


「え? あ、はい! 急ぎましょう!」


 リリアンさんはフローズンフロッグが凍らせた場所をじっと見つめてから、すぐに切り替えて歩き出す。


 草原を抜けて1時間もしないうちに、アリテアス以上の城壁が俺たちの目の前に現れた。


「あそこが首都クサナギです」


「あれが……すごいですね」


「私も初めて見たときは同じことを思いました」


 アリテアスとは比較にならない大きさと広さのある城壁を見上げていると、リリアンさんが苦笑いを浮かべていた。


 ここでも門の前ではたくさんの人が列を作っており、順番が来るまでしばらく待たなければいけないようだ。


「待ちそうですね……」


「いえ、今回は私がいるので城門は優先的に通れますよ」


「え? どういうことですか?」


「私は特級開拓者なので、検問を待たなくても良いんです」


 リリアンさんが開拓者証を懐から出し、俺に笑顔を見せてくれる。


 そういえば、彼女が身につけている草凪の家紋が入ったマントも特級開拓者専用の物だ。


 並んでいる人たちの横を通ると、嫌な顔をされることが多かったが、リリアンさんの背中を見て納得するようにうなずいている。


 中には応援のような声をかけてくれる人もおり、特級開拓者が特別な存在だということが伝わってきた。


「次! これは……リリアン様! お帰りなさい!!」


「ただいま。この方は私の連れだ、通らせてもらうぞ」


「はっ!! どうぞ、お通りください!!」


 リリアンさんが開拓者証を見せると、兵士の人たちは敬礼をして俺たちを通してくれた。


 この待遇に慣れているのか、リリアンさんが堂々とした態度で城門を通る。


「リリアンさん、俺は何も見せなくてもいいんですか?」


「問題ありませんよ」


 慣れた様子のリリアンさんに続いて、俺も城壁の中へ入る。


 街へ足を踏み入れた瞬間、活気にあふれた空気が肌で感じられた。


「すごいな……」


 立ち並んでいる建物もアリテアスよりも高く、道路も広い。


 何よりも、人の往来が多く、活気づいた街並みが印象的だ


 特に目を引いたのは大通りに並ぶ露店の数々で、食べ物や飲み物を売っている店がたくさんあった。


「ここが首都クサナギの中心である大広場です。ここから東へ行くと開拓者ギルドの本部があります。奥には【クサナギ】さまがいらっしゃる教会が建っています」


 リリアンさんが指さす方向を見ると、白い石造りの大きな建物が見えた。


 あれが教会のようで、この街のシンボルにもなっているらしい。


 そして、首都の指導者だと思われるクサナギという人物がいる場所のようだ。


「教会は誰でも入れるんですか?」


「はい。定期的に集会も行われているんですよ」


「それなら行ってみようかな。案内してもらえますか?」


「もちろん!」


 リリアンさんが俺の腕を取り、引っ張るようにして走り出した。


 急に走るものだから転びそうになるが、何とか体勢を整えて付いていく。


「どこへ行けばいいんですか?」


「えっと……確か、この道をまっすぐ行った先にあったはず……ありました! あれがクサナギ教会で間違いないと思います」


 リリアンさんが示した先には、草凪の家紋が扉の上部に彫ってある白を基調とした教会がそびえたっていた。


 入り口の左右には女性の石像が飾られており、リリアンさんは中へ入る前に二人の女性像へ頭を下げている。


「この方々は、初代のクサナギさまとこの世界へいらした、【ミカガミ】さまと【スメラギ】さまです」


「水鏡さまと……皇さま……ね。なるほど……」


 二人とも和服のような服を着ており、一人は盾のような鏡を、もう一人は大きな勾玉を持って微笑んでいた。


 像の持っている物が、草凪澄が両家へ渡したという神器を示しているようにしか思えない。


「あの、ジョンさん? どうかしましたか?」


「いえ、なんでもありません。この女性たちも神の使者なんですか?」


 二つの像を見比べながらリリアンさんへ質問を投げかけた。


 すると、リリアンさんは目を丸くしてから言葉を出さないように口元を押さえている。


 間髪なく答えが返ってくると思っていた俺は、予想外の反応に戸惑った。


 俺が見つめていると、リリアンさんがゆっくりと深呼吸をしていた。


「えーっと……すいません。説明させていただきますね、こちらへ」


 リリアンさんが教会にはいる人の邪魔にならないように石像へ近づく。


 俺も石像を真剣な表情で見つめるリリアンさんの横に並んだ。


「こちらは、神器を使い、世界に平穏をもたらした御二人の石像になります」


「神器で? 平穏を……ですか?」


 リリアンさんの言葉を聞いて、俺の知っている神器と似た効果なのかと思いながら石像を眺めた。


(異世界にある勾玉で結界石を作っているのか? ……俺の持っている勾玉とは効果が違うな)


 ふと気になり、アイテムボックスにある勾玉へ目を向けると、今まで表示されていなかった文字が出ている。


【八尺瓊の勾玉(陰)】


 俺の持っている勾玉の名前へいつの間にか(陰)という文字が追加されていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。

大変励みになります。


次の投稿は2月10日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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