首都クサナギへ⑨~マハヨ集落復旧作業~

精霊たちの力を借りて澄人がマハヨ集落の復旧作業をしています。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 メーヌはこの無機質な材料たちに質問をしながら建物を立て直してくれるようだ。


『澄人、火を完全に消しちゃうと真っ暗になるから、光源をいくつか置いておくわね』


「助かる」


 フィノによって建物を燃やしていた火の勢いが完全になくなり、周囲が薄暗くなってきた。


 その代わりに光る火球がいくつか現れ、村中を照らし始める。


 俺はにょきにょきと生えるように建設されていく建物を見ながら、「あっ」と言う声が漏れた。


(そういえば、イアンさんの家族もここにいるんだよな……お世話になったしお礼でも……この姿じゃだめか)


 この姿で暴君と戦ったので、村人の前で素顔を見せるのは避けたい。


(単純に今の俺の姿では目立ちすぎて、イアンさんのご両親へ迷惑をかけるかもしれないからな)


 フードを深く被り直し、埋まっていたり見逃してしまった村人がいないのか捜索することにした。



「いないか。建物の立て直しも完了したから……あとは……」


 1時間ほどかけて、ほとんど元通りに建物を立て直すことができた。


 見逃している村人もおらず、人命救助については満点の評価をもらえるだろう。


 ただ、建物の材質などは異なるため、これがミッションにどのような影響を及ぼすのかは不明だ。


 右手でメーヌへ魔力を注ぎつつ、地中深く埋没している暴君へ意識を向ける


「メーヌ、金属を圧縮して暴君を押しつぶしてくれ」


 メーヌは強く輝くことで返事をしたあと、暴君の埋まっている場所へ飛び出した。


 するとすぐにミッション終了を報せる2つの画面が目の前に表示された。



【緊急ミッション:ユニークモンスターに襲われている村の被害を抑えろ 終了】

 達成状況[損傷率:0%]

 損傷率に応じて貢献ポイントを授与します

 損傷率0%のため【貢献ポイント1000万】授与


【シークレットミッション:大地を喰らう暴君討伐 達成】

 大地を喰らう暴君を討伐しました

 スキル【捕食】を授与します

 捕食スキルを所持していたため、【捕食(極)】に成長しました




 二つのミッションが終わった通知に目を奪われ、詳細を確認するために文字を読み進めた。


(貢献ポイントが1000万!? それに捕食が極みって……)


 予想していなかった報酬に驚きつつ、捕食(極)の詳細を確認する。


【スキル詳細】

 スキル:《捕食(極)》

 使用条件:なし

 消費魔力:なし

 説明:対象を体内に取り込む

【補足】

 対象に意識が存在する場合でも無関係に取り込めます

 効果の対象は、存在する全てのものです

 このスキルは魔力やスキルに付属することで効果が発動します

 捕食対象のスキルを獲得できます



「……えっと……これは……どうなんだろうか……」


 スキル詳細読み進めていくと、信じられない内容が書かれていたため、困惑する。


「捕食の時にはあった成功率云々の文章が丸々消えて……おまけにスキルを獲得できるだって!?」


 今まで戦いながら体力や魔力を回復するだけに使っていた捕食スキルが一気に使い勝手が良くなった。


 良くなったどころか、モンスターや人のスキルまで吸収できるので反則じみた性能だ。


(試したいけど、今は相手になるモンスターがいないな……捕食してみたかった……)


 暴君を倒すことで捕食の性能が向上したため、叶わないことだとしりつつどうしてもそう思ってしまう。


 自分の分身を大量に作って戦わせたり、身代わりを作り出すなど、便利そうなスキルが獲得できたので、そんな相手をまた探すしかない。


(まあ、この話は後で考えよう。それよりも村の修繕が終わったから戻ってきてもらわないとな)


 俺が思考を切り上げて、村人が集まっている場所へ雷の察知を飛ばす。


 強制的にワープさせた村人も全員起きている。


 その人たちに囲まれるように立っているのは、リリアンさんと思われる気配。


 俺のやりたいことが終了したのでこのまま放っておいてもよいのだが、リリアンさんには首都まで案内をしてもらう必要がある。


 ここで置いていくわけにはいかず、俺はリリアンさんのために集団の近くへワープした。


 雷の翼を使って音を立てずに着地し、リリアンさんの正面に立って手招きをする。


 俺のことに気が付いていないのか、リリアンさんは困った顔で村人の対応をしていた。


 リリアンさんの手を握り、嬉しそうに涙を流すのは燃えている村で俺に突っかかってきた大柄の男性だ。


「ありがとうございます!! あなたのおかげで村は救われました!!」


「いえ、私はなにも……あの方がユニークモンスターを倒してくれたのです!」


 間の悪いタイミングで俺の方を向いたリリアンさんは、両手を合わせて目を輝かせていた。


 リリアンさんの言葉で俺の存在に気が付いた村人たちが一斉にこちらを見てくる。


(ああ、もう……手早く済ませよう……)


 俺はフードが脱げないように細心の注意を払い、数歩村人たちへ歩み寄った。


「みなさん、もう脅威は去りました」


 声をかけるだけで村人たちから歓声が上がるのを見て、俺はこの場から早く立ち去ろうと決意した。


 これ以上ここにいても、感謝されるだけなので、さっさと終わらせるに限る。


「建物も元通りまでとは言いませんが、それなりに修復してあります。安全なので村へ戻ってください」


 村にいたモンスターをせん滅したという言葉も付け加え、村人たちへ移動するように呼びかける。


 だが、ほとんどの村人は移動せず、俺を囲うようににじり寄ってきた。


「本当にありがとうございました。私たちだけでは今頃どうなっていたか……」


「あなた様には感謝しきれません。どうか今日はゆっくりとお休みになって……」


「それは良かったです。それでは失礼します」


 感謝を伝えてくる村人たちの言葉を遮り、俺はその場をあとにしようとした。


 それを村人が許してくれるはずもなく、行く手を阻まれてしまう。


「お待ちを! せめてお名前を聞かせてください」


「名乗るほどのものではありませんよ。お気になさらず」


「それならお顔だけでも見せていただけないでしょうか?」


 この人たちはなぜここまで食い下がってくるのだろう。


 何度も断っているのに、全く引き下がる様子がない。


「しつこいですよ。俺は急ぐので失礼します」


 俺が複数人の村人をかわしてリリアンさんを回収しようとしたら、さらに別の村人たちが迫ってきた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。

大変励みになります。


次の投稿は2月1日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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