首都クサナギへ①~開拓者の仕事~
澄人がサラン森林を開拓しております。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「レックスさん下がってください!!」
槍を持っているレックスさんへ下がるように指示を出し、迫りくるアーミーアントを迎え撃つ。
鉄の剣でアーミーアントを薙ぎ払っていると、レックスさんが俺の真後ろへ来た。
「ジョン! あと少し進んだら【結界石】を展開させるぞ!!」
「そんなに進んでないです! もう少し行きましょう!!」
モンスターの住んでいる土地を人の生存圏にする。
その役目を担うのが開拓者であり、生存圏を拡大するため物がレックスさんの持っている【結界石】だ。
【結界石】は展開させることでモンスターを寄せ付けなくする効果がある。
結界石を設置をすることで魔力が切れるまで効果が続くため、基本的に街などの場所にはこの石が厳重に保管されているようだ。
貴重品のためB級開拓者以上の者しか扱う資格がない。
今回、俺はサラン森林を開拓しろという依頼のために、レックスさんと一緒にこの森を進んでいる。
俺は森へ入った経験があることに加え、アーミーアントを倒せるのでこの依頼に志願した。
アリテアスの街ではレックスさんしか結界石を扱えないため、半ば強制的に参加してもらった。
サラン森林を開拓する依頼は集会所が【B級依頼】として認定したため、達成することができれば俺はB級開拓者になる予定だ。
「ジョン! 囲まれたぞ! もう使っていいか!?」
「まだです! 森の境目から近すぎます! もう少し進みましょう!」
「このあとのことを考えろ! 広ければ広いほど大変になるんだぞ!!」
「わかりました!! じゃあもう少しだけ我慢してください!! 確実に開拓をしたという証を残したいんです!!」
モンスターに囲まれて戦っているせいでどうしても声が大きくなってしまう。
レックスさんも俺の言葉を理解してくれたのか黙ってうなずいてくれる。
「あと十歩ぐらい前に進んだら結界石を使いましょう!!」
そう言ってさらにモンスターを倒していく。
一体何体倒しただろうか? 五十を超えた辺りから数えていない。
ただひたすらにアーミーアントを倒し続けて、ようやく地面を10歩進むことができた。
「よしっ! 今です!!」
「ジョン任せたぞ! 俺の命を預ける!!」
レックスさんが結界石を発動させると、青い光が球体状に50メートル程広がった。
すると、その光の中にいたアーミーアントが地面から這い出て、こちらへ目掛けて一斉にやってくる。
「察知されていないのにこちらへ来る……モンスターも結界石が使われたことを分かっているのか!?」
結界石が効果を定着させるまでの30分の間に、石がモンスターに破壊されたらここまで来た意味がなくなってしまう。
この30分という時間を稼ぐために、四方から来るアーミーアントを押し返すように鉄の剣を振うが、多勢に無勢だ。
結界石を守るように立っているレックスさんも、アーミーアントの大群に押される俺を見て焦りを感じているようだ。
「レックスさん、踏ん張ってください! アレをやります!!」
「わかった!!」
剣へ魔力を注ぎ込み、じいちゃんが振るった槍の一撃を思い出す。
草凪流の技で【破】の名を冠する一撃。
聖奈の破月や、じいちゃんの破天のような威力を出したい。
そう思いながら、魔力をふんだんに込めた剣をアーミーアントへ振り下ろした。
「このぉ!!」
――ズドォンッ!!! 大きな音と共に、俺を中心に半径5メートル程の円を描くようにしてアーミーアントたちが吹き飛んだ。
その光景を見てレックスさんが唖然としている。
「また威力が上がったか?」
「えっと……ちょっとだけですね」
前回試したときよりは威力が出たものの、まだまだあの2人には及ばない。
剣の親和性がCじゃまだ弱いか。
今は積極的に鉄の剣でモンスターと戦っているが、なかなか剣の親和性を上げることができず、歯噛みしてしまう。
俺が倒したモンスターの残骸でできた壁を続々と別のアーミーアントが乗り越えてくる。
そいつは仲間を呼び寄せるフェロモンでも出しているようで、周囲から続々と集まってきた。
キリがないと思いつつ、結界石が定着するまで鉄の剣を振り続けた。
「ジョン! 時間だ!!」
アーミーアントを薙ぎ払っているとレックスさんのいる場所から青い光が放たれる。
レックスさんが守っていた結界石が弾け飛ぶと同時に、冷汗が噴き出す。
これは境界線じゃないか!!
結界石の有効範囲内にいたモンスターが宙へ生まれた青い線に吸い込まれていく。
俺が倒したアーミーアントの残骸はそのままなので、生きているモンスターだけを境界線は吸い込んでいた。
その光景を見てしまった俺の手から鉄の剣がこぼれ落ちた。
まさか……境界は……異界のモンスターだったのか?
宙に青い線が維持されているのを眺め、砕け散った中で一番大きな結界石を拾ったレックスさんが一仕事終えた顔で振り返ってきた。
「どうだ、ジョン! これで開拓できたんだ!! 依頼は完遂したぞ!」
「レックスさん……」
俺は目の前で起きていることを受け入れられず、呆然として言葉を失ってしまう。
それでも俺は考えるのを止めず、仮説を立証するために質問の内容を練る。
今の青い線が境界になるとしたら、【あっち】もあるはずだ。
乾いてしまった喉を潤すためにゴクリとのどを鳴らし、息を整えながら剣を拾う。
「レックスさん、今のは青い光でしたけど……ほかの結界石もあるんですか?」
自然に、何も知らない開拓者ならこのようなことを聞いても違和感はないはずだ。
レックスさんは腕を組んで顎に手を当て、首を傾げている。
「ん? ああ、あるぞ。もっと有効範囲の広い街を作る土地を確保するための赤い結界石があるんだ」
赤い結界石があるとレックスさんが言った瞬間、ドクリと心臓が高鳴った。
いくら生唾を飲み込んでも喉がカラカラになる。
「そうなんですか。集会所にもあるんですか?」
「いや、ない。首都に保管してあるって話だ」
「なるほど……教えていただきありがとうございます」
レックスさんに背を向け、宙に漂う青い線へ視線を向ける。
【見慣れた】境界線がそこにはあり、手を伸ばせば境界へ突入できてしまいそうだ。
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ご覧いただきありがとうございました。
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大変励みになります。
次の投稿は1月8日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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