開拓者⑪~アーミーアント戦終了~

侵略してきたアーミーアントを撃退しました。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 周囲にアーミーアントの死骸だけになったのを確認し、一息つく。


「ふぅ……こんなもんかな……」


 探知で探ってみても、もう近くにモンスターはいない。


 本当に全部片付いたみたいだ。


「それにしても、今回はやけに少なかったな。森の入り口付近だったからか?」


 俺がサラン森林内で感じていた気配の数を考えると、もっと多くてもおかしくはない。


 まだ中から警戒してきているのか? そんな知性がこいつらに?


 サラン森林にはしばらくいたが、アーミーアントは感知した相手へ群れで襲いかかるということしかしていないように見えた。


 今回はただハドリーさんを感知したのがこいつらだけだったのかと、森を見据えながら考えを巡らせる。


「考えても仕方ないか、今は森へ入れないからな」


 それよりも、この地面へ大量に広がっているアーミーアントの死骸をどうしようか悩んでいたら、後ろの方から足音が聞こえてきた。


 誰か来たのかと思い振り返ると、そこにはレックスさんが複数の人と一緒にこちらへ駆け寄ってくる。


「おい、大丈夫かジョン!! これは……」


 俺の目の前で足を止め、足元に転がっているアーミーアントの死骸を見て固まるレックスさん。


 他の人も同じように大量にあるアーミーアントの死骸を見ながら絶句していた。


「ジョン……ここは俺たちに任せて……集会所にいるシエンナへ……脅威は消えたと伝えてくれ」


「よろしくお願いします。それでは失礼します」


 俺はレックスさんのゆっくりと吐き出された言葉にうなずき、その場を離れた。


 そして、言われた通りに集会所でシエンナさんへレックスさんの言葉を伝える。


 シエンナさんや周りにいた職員、開拓者たちは俺の伝えた内容を聞いて言葉を失っていた。



◆◆◆◆◆◆



「それで、どうやってあんな量のモンスターを倒したんですか?」


「剣で切り倒しました」


「剣で……ですか? 硬い甲殻に覆われているアーミーアントを? ハドリーさんも同じようなことを……」


 夕食を食べ終わったあと、俺は開拓者集会所に併設された宿屋でシエンナさんから質問攻めにあっていた。


 新人開拓者は無料で止まれるようなので、今日はここで宿泊することにした。


 俺の部屋でシエンナさんへ今日起きた出来事をありのままに伝えたのだが、やはり信じられないようだ。


 ブツブツとなにかつぶやいているシエンナさんは考え込むように顎に手を当て、視線を下へ向ける。


「アーミーアントはそんなに倒しにくいんですか?」


「そうですね……数体がこの街に来ようとしただけで城門を閉じて、帰るのを待つしかなくなります」


 シエンナさんはアーミーアントが街に来たときのことを話しており、どういうわけか俺の質問には答えてくれていない。


 理由がわからず、俺はもう一度同じ質問をすることにした。


「倒さないんですか?」


「えぇ……私はアーミーアントの素材を直接見たことがありませんでした。あんな量が集会所に持ち込まれたのは誰も見たことがないと思います」


 ちらりと、俺たちが囲っているテーブルの中央に置いてある、金貨がぱんぱんに入った布袋をシエンナさんが見る。


 俺が倒したアーミーアントの死骸は、レックスさんたちが集会所の解体場へ運んでくれたそうだ。


 アーミーアントが持ち込まれるまで俺は他の開拓者の人から一人で飛び出したことに注意を受けた。


 ただ、その注意もレックスさんたちが大量に持ち込んだアーミーアントの素材の報告により、すぐに終わってしまう。


 その後、戦いを見ていたハドリーさんや素材を回収したレックスさんが集会所職員による聞き取りを行われ、今は俺がシエンナさんと話をしている。


 ちなみに、俺が倒したアーミーアントの死骸は、なんと金貨百枚以上の金額で集会所に引き取られたらしい。


 まだ俺には金貨1枚の価値がわからないが、シエンナさんが複数の職員と一緒にこの袋を持ってきたことを考慮すると、とてつもない金額なのだろう。


 そのお金が入った布袋を視界から外し、俺のほうを向いたシエンナさんは苦笑いをした。


「おそらく、今回の件でジョンさんは良くも悪くも注目されることになりました」


「注目……ですか」


 確かに、今日の一件で俺のことを知らない人はいなくなると思うけど……。


 集会所を出るときに、他の開拓者が俺のことを様々な感情をこめた視線で見てきたことを思い出した。


 人の目を気にするタイプではないが、あまり良い気分ではない。


「それで、開拓地でのモンスター討伐は国から報酬が出ています。もちろん、このお金もそうです」


「そうでしたね」


 開拓者が未開の地から持ち帰ってきたものは、国の代理人である集会所が買い取ってくれる。


 その説明を聞いた時、あんな広大なサラン森林がこの人たちにとっては未開の地だということを理解した。


 そのことが衝撃的すぎて、シエンナさんの話に集中できずにいる。


「それでは、ジョンさん。おやすみなさい」


 とても丁寧に話をしてくれたシエンナさんが退出し、部屋の中が静まり返った。


 ベッドへ横になって一息つくと、今まで音沙汰が無かったミッションを告げる画面が急に現れた。


 通知されたミッションの内容を読み、俺はしばらくその画面から眼を離すことができなくなった。



【異界ミッション6 開放】

 首都【クサナギ】にいる指導者と対面せよ

 成功報酬:スキル【神気創造】の付与


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

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大変励みになります。


次の投稿は1月2日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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