開拓者⑩~ハドリーさん救出へ~

澄人(ジョン)がハドリーさんを助けるために集会所を飛び出します。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 人垣をかき分け、集会所を出てサラン森林に近い城外へ急ぐ。


 城壁の外へ探知用の雷を飛ばそうとしたら、城壁上部の結界を通過することができない。


 城壁の下部にある城門から出た雷のみ街の外へ出ることができたため、探索範囲が狭まってしまう。


 雷を曲げられればいいんだけど、直線的にしか伸ばせないんだよな……。


 少なくとも、城門から真っ直ぐ進んだところにハドリーさんがいないことだけはわかった。


 それならどこにいるんだ!? そんなにはなれているのか!?


 詳しい場所を聞いておけばよかったと思いながら城門の外へ出た。


 出た瞬間に雷を最大出力で展開し、ハドリーさんらしき気配を探す。


「いたっ!!」


 ここから1キロほど離れた場所でハドリーさんらしき気配が数十のモンスターに囲まれている。


 俺が急に声を出したため、城門を守っている兵士の人たちが驚きの形相でこちらを見てきた。


 声をかけようか迷うような声が聞こえてきたため、呼び止められる前にサラン森林へ向かう。


 検問で並んでいる人たちを跳び越え、少しでも早く助けるために土煙を上げながら疾走した。


「いた! あそこだ!!」


 1分も経たないうちにサラン森林の手前で戦っているハドリーさんを目視で確認できた。


 大きさが1メートル近くあり、様々な色の甲殻に覆われたアーミーアントは、6本の太い足をじりじりと動かし、ハドリーさんへ接近していた。


 ハドリーさんが大きな剣をアーミーアントに振りかぶっているものの、弾き飛ばすので精一杯のようだ。


「よし、間に合ったな!」


 俺は足に力を入れて跳躍し、モンスターの群れへ突っ込んでいく。


 突然現れた俺に驚いたのか、モンスターたちがハドリーさんから視線を外した。


「邪魔だあああぁぁぁ!!!」


 俺は大声で叫びながら鞘から鉄の剣を引き抜き、一直線にモンスターの集団へ飛び込む。


 俺に向かってきていた数体のアーミーアントが、振り下ろした剣によって粉々に砕け散る。


 その光景に、ハドリーさんを取り囲んでいたアーミーアントの動きが止まった。


「はああっ!!」


 俺は止まっているモンスターの塊へ飛び込み、一匹ずつ確実に倒していく。


 地面を蹴り、空高く舞い上がって襲い掛かってくるアーミーアントの攻撃をかわす。


 そのまま空中で身をひねり、下へ向かって回転しながらアーミーアントの背中を切り裂いた。


 地面に着地してすぐ、別のアーミーアントが向かってくる。


 俺は落ち着いてそのアーミーアントの攻撃を横に避け、すれ違いざまに胴体を切り落とす。


 さらに後ろから迫ってきたアーミーアントの攻撃をしゃがんでやり過ごし、相手が前に出たところで一気に立ち上がる。


「これで終わりだ!!」


 アーミーアントの首筋に剣を突き刺し、突き刺したまま力任せに横へ薙ぎ払った。


 最後のアーミーアントが切り飛ばされ、一瞬の静寂が辺りを包む。


 俺は倒したモンスターたちを確認するために、周囲の様子をうかがった。


「確かお前……ジョン……だよな?」


「ハドリーさん話は後です! 逃げますよ!!」


「お、おう!!」


 突然表れた俺にハドリーさんが呆気に取られていたが、すぐに状況を理解して走り出す。


 背後からはまだアーミーアントたちの鳴き声が響いていた。


「なんでここに来た!?」


「アルマちゃんに頼まれました!」


「アルマから!? すまない、助かった!!」


「今は安全なところまで逃げることが先決ですから、話している余裕はありません!」


 ハドリーさんはありがとうと言いながら笑みを浮かべて走っているが、顔色が悪い。


 鑑定で体力がないことが分かったので、懐へ手を入れるようにしながら回復薬を取り出した。


「これを飲んで全力で逃げてください! 俺は森から出てきているのを倒し切ります!」


「いや、さすがにそれは——」


「いいから早く!」


 ハドリーさんへ無理やり回復薬を渡し、森から侵攻してくるアーミーアントの群れを討伐するために立ち止まる。


 こちらへ向かって100を越えるアーミーアントが行進してきており、俺が逃げればアリテアスが危ない。


「クッ……ジョン、すまない!!」


 アリテアスに向かって走るハドリーさんを背中で見送り、前方から迫りくるモンスターたちに意識を向ける。


「どの程度まで能力を解放しようか……遠目で見られているんだよな……」


 アリテアスから出たときから、俺と常に一定距離を保ちながら付いて来る気配があった。


 おそらく、集会所を出たときから俺のことをつけていたのだろう。


 その人物に俺の能力をすべて見せるわけにはいかず、剣だけで戦うようにしていた。


 ゆっくりと歩いて来る百体以上のアーミーアントも、腰に下げている鉄の剣だけで戦いきるつもりだ。


「まあ、何とかなるか」


 今回の目標として、剣の親和性だけがCで停滞しているため、これを上げようと思う。


 俺は剣へ魔力を纏わせ、鉄の剣の耐久度と切れ味を増幅させる。


 知力で纏わせたときの効果が変わるため、今の俺の剣はアダマンタイト製の剣よりも硬くて鋭いはずだ。


 また、この付与させた魔力は隠匿機能で他人に見えないようにしておいた。


「いこう」


 走り出した俺は、正面から向かってきていた大群の先頭にいたアーミーアントの頭部を両断する。


 さらに、二匹目の首を刎ねる直前に、真上から迫ってきているアーミーアントの存在に気付き、上空へ跳んだ。


「キシャアアァ!!」


「うるさい!!」


 落下中に噛みついてきたアーミーアントの口内へ、鉄の剣を差し込み、上顎と下顎を引き裂く。


 アーミーアントの死骸を踏みつけながら、俺は次々と押し寄せてくるモンスターの群れへ飛び込み、次々に斬り伏せていく。


「次!! ……はいないか」


 無我夢中で戦っていたら、俺の周りからアーミーアントが1体残らず地面に倒れていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。

大変励みになります。


次の投稿は12月30日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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