国際ハンター会議へ⑬~祖父の元へワープ~
澄人が祖父のいる場所へワープを行ないました。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「これはっ!?」
ワープで目的地へ着いた瞬間、無数のモンスターに自分が囲まれていることを雷で察知する。
じいちゃんがどこにいるのかわからなかったため、念のために雷を展開していた。
「ありえないだろ!! 千は越えているぞ!?」
その雷が千を越えるモンスターを察知し、処理していた俺の頭が熱を上げてクラクラしてくる。
手が届くところに俺よりもはるかに大きな恐竜のようなモンスターがおり、声を上げた俺に反応した。
大きな口を開け、生えている無数の鋭い牙で俺を捕食しようとしている。
「頭を下げぇい!!」
後ろの方から大声で指示され、反射的に頭を下げる。
すると、俺がいた場所を通り過ぎていった風圧によって、周囲のモンスターが吹き飛ばされた。
「ギャアァッ!!」
俺もその風圧でしゃがんだ状態から尻餅をついてしまった。
すると、数秒前まで俺がいた場所に、白髪交じりのおじさんが大きな黒い槍を持って立っている。
そのおじさんは大量の返り血を防具に浴びており、俺を助けてくれたらしい。
「あ……ありがとうございます……」
顔の老け具合からおじいさんということがわかったが、体格が覇王よりも良く、立っているだけで圧倒された。
こんな人間がいるのかと思いながら見上げてしまい、言葉を発することができない。
「礼などよい! それよりも、お主はなんなんじゃ!? レッドゲートに飲み込まれたのか!?」
このおじいさんはいかつい顔をしながらも、俺のことを心配してくれていたようだ。
周囲の恐竜たちが体勢を立て直し、こちらへじりじりとにじり寄ってくる。
うっとうしそうに舌打ちをしたおじいさんは漆黒の槍を構えた。
俺も剣を取り出しつつ、助けてくれたおじいさんの質問へ素直に答える。
「……俺は草凪澄人と申します。ここはどこですか?」
「なんだって!!?? 草凪澄人じゃと!!??」
名前を名乗った途端、おじいさんは急に大きな声を出し始め、驚いてしまった。
俺の名前がどうかしたんだろうか。
「あの……なにか?」
「すまぬ。わしの孫と同名だったもので驚いただけじゃ」
「お孫さんとですか……偶然ですね」
記憶している祖父の印象とだいぶ違う風貌のため、この人は俺のじいちゃんではないだろう。
孫と同じと言われてもピンとはこないけど、今はそんなことを話している場合ではない。
俺たちを囲う大量のモンスターがよだれを垂らしながらこちらへ襲いかかろうとしてきている。
「ちなみになんですけど、あなたのお名前をうかがってもよろしいですか?」
「草凪正澄じゃ!!」
名乗るのと同時に、じいちゃんと同姓同名のおじいさんが槍を大きく後ろへ振り上げた。
魔力を注ぎ込んでいるのか、漆黒の槍が赤く染まってゆらゆらと空気を揺らす。
「草凪流槍術!! 破天!!」
槍から打ち出された赤い突きは、モンスターを薙ぎ払いながら一直線に進み続ける。
その攻撃を繰り出したと同時に、俺の腕がおじいさんにつかまれた。
「いったん逃げるぞ! こっちへこい!」
「はい!!」
地面すれすれを進む赤い線は遠くまで伸びていき、その線に沿っていたすべてのモンスターが倒れていく。
しかし、それを見ている余裕もなく、おじいさんに引っ張られるまま走り続けた。
すごい力だ……。
ただ腕を引っ張られているだけなのに、引きずられるように走っている。
ここがどこかわからない。
おじいさんに手を引かれながら、俺は改めてモンスター以外の風景へ目を配らせた。
ワープは成功したはずだから、ここはじいちゃんがいると思われる場所だろう。
ただ、ワープをした地点にじいちゃんの姿がなく、筋肉隆々のおじいさんがいたことから、曖昧な場所へ運ばれたようだ。
人を指定した場合はこんなことはなかったけど……。
今までワープを使っていて曖昧な場所へ飛ばされたのは、地図を見て地点を登録したときだけだった。
視線を上へ運ぶと、妙に見に覚えのある空が広がっている。
「ぬらぁ!!!!」
考えを巡らそうにも、片手で黒い槍をもったおじいさんが蚊を追い払うようにモンスターをなぎ倒していてそれどころではない。
「きりがないのぉ!! きみ、少し我慢してくれ!」
会った中で1番強いと思われるおじいさんは、俺を脇に抱えてきた。
「えっ!? ちょっと!!」
「じっとしておれ!! ぬぅりゃああ!!」
そう言って、俺を抱えたおじいさんは先ほどと同じく赤くした槍を地面に叩きつける。
その衝撃で地面が割れ、おじいさんは空へ放り出されるように跳躍した。
数秒前まで俺たちが立っていた場所には、大きな縦穴ができており、土煙を上げている。
何十体もの恐竜や翼竜のようなモンスターたちがこちらを見上げている中、おじいさんは空を飛んでいたモンスターの背中へ着地する。
「口を開くなよ! 舌を噛むぞ!!」
信じられないことに、おじいさんは飛んでいるモンスターの背中を次々と飛び移り始めた。
こんな動きができるのかと思いつつ、俺は黙っておじいさんに運ばれるしかない。
足場にされたモンスターたちはこちらへ向かってくることはなく、おじいさんに踏み抜かれて体勢を崩し、地に落ちていた。
「よし! 抜けたぞ!!」
モンスターたちから離れると、おじいさんはモンスターの背中から地面へ飛び降りた。
難なく着地するおじいさんは軽く息を乱していた。
「ありがとうございます」
「礼などよいこれから寝食を共にする仲間だ」
「それはどういう?」
おじいさんは少し悲しそうな目になりながら俺と視線を合わせる。
「この近くでレッドラインから出られなくなったハンターたちが共同生活を送っている。きみもそうなんだろう?」
俺を地面へ降ろしながら「心配することはない」と励ますような声をかけてくれていた。
俺そんなんじゃないんだけどなぁ……すごく言い出せない……。
おじいさんが親切心で言ってくれている言葉を否定するわけにもいかず、俺は黙ってうなずく。
「こっちじゃ、少し走るが着いてこられないようなら声をかけてくれ」
「はい」
おじいさんは大きな黒い槍を担ぎ、木々が1本もない大地を走り始めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
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次の投稿は11月21日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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