国際ハンター会議へ④~聖奈&朱芭戦~

澄人視点による聖奈&朱芭戦です。

お楽しみいただければ幸いです。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「仕留めそこなったわ! 聖奈!」


「任せて!! はぁぁああああああ!!!!」


 攻撃が弾かれて体制を崩した朱芭さんを庇うように俺の前へ聖奈が降り立ち、怒涛の勢いで剣を俺へ振るってきた。


 雷を高出力で放電した直後で反応が遅れた俺は、一時的に避けることで精一杯になる。


 そんな俺の隙を逃さず、聖奈が再び剣を頭上に掲げた。


「破月!!!!」


「閃光一閃!!!!」


 またも2人は息を合わせたかのように、同じタイミングで強力な攻撃を放ってくる。


 聖奈の競技場を砕く一撃はもちろん、結界を貫きそうな朱芭さんの一閃も十分に脅威だ。


 皇流剣術の技である閃光一閃を朱芭さんが使うことなんて頭になかったため、さっきは・・・・反応が遅れた。


 すでに見切った攻撃をただ避けるのでは芸がないので、俺はアイテムボックスから勾玉を取り出す。


「もうそれは知っている、《神気浸食》」


 聖奈と朱芭さんによる同時攻撃を八尺瓊の勾玉による空間把握で受け止める。


 指定した空間に存在するものを自由に操れる神気浸食で、2人の攻撃を《無かったこと》に変えた。


「今度は俺の番だ!」


 以前応接室で殿下に仕掛けられた洗脳攻撃を2人へ仕掛ける。


 膨大な量の力が突然消えて硬直した2人を精神汚染の牢へ閉じ込めた。


 初めてのことでなにもできない朱芭さんの瞳からは光が消え、意識を完全に牢獄へ引き込む。


「あっ……ぐっ……」


 牢から抜け出す方法を知っている聖奈が抵抗を見せ、もがくように言葉を漏らした。


 ここからで更に浸食を追加すれば聖奈も落とすことも可能だが、勝負と言っておいて最後は道具で勝つのはあまりにもつまらない。


 勾玉をアイテムボックスへ戻し、俺は自分自身の限界を測るために2人と距離を取る。


「朱芭! 体から自分以外の魔力を出して! そうすれば動くようになるから! うぅ……はぁはぁ」


 大声で精神汚染の対策を朱芭さんへ伝える聖奈だが、額からは大量の汗が流れ、膝が落ちて立ち上がれない。


 呼吸を大きく乱しており、回復するのにはもうしばらくかかりそうだ。


「さて、この間に準備でもしようか」


 2人とは十分に離れてから、俺は自分の体へ意識を向ける。


 親和性:雷を手に入れた時からあの姿を忘れることができなかった。


 銀色の雲に覆われて、見たこともないはずの雷帝龍。


 猛々しい姿の中に、生物の頂点であるかのように品のある振る舞い。


「あの姿になりたいと……そう願っていた……」


 頭の中に思い描いた雷帝龍の姿になるため、体内にあるすべての魔力を雷に変換する。


 すると、赤色の画面が俺の前に現れ、新たな力を提示してきた。


【スタイルチェンジ承認画面】

 親和性:S

 攻撃力:SS

 知力:SS

 以上の条件を満たしました

 雷龍へのスタイルチェンジが可能となります

 承認しますか?


 俺の願いに能力が応え、雷龍へなるための承認画面が出現した。


 歓喜で全身が震え、笑みがこぼれる。


「ごほっ! ありがとう聖奈……なんとかなった……ぅ……」


「朱芭は……はぁはぁ……休んでいて…………私だけで……お兄ちゃんとやるわ」


「聖奈……ごめん」


 体に力が入らないのか、朱芭さんが悔しそうに競技場の石床へ両手を付いてうなだれる。


 何とか動けるようになった聖奈は息が絶え絶えになりながらも、殺気を込めて睨んでくる。


普段絶対にすることがない表情になり、最後に一矢報いてやろうという意思が伝わってきた。


「あああああああああああ!!!!」


 聖奈が一直線に俺へ向かってくる。


 その動きにはなんのフェイントや駆け引きもなく、ただ暴力的な力でまっすぐに走ってきていた。


【承認】


「きゃっ!? なに!?」


 承認を押した俺の体から一気に魔力が放出され、周囲に雷の膜が生まれる。


 黄色い膜に肉薄した聖奈はバチンという音とともに弾かれ、競技場を転がっていく。


この場にいる全員がその音に目を丸くし、何が起こるのか俺から視線を外さない。


 この膜を通して魔力が循環している? 体中の魔力を入れ替えようとしているのか。


 別の生物になるべく、膜から放たれる幾多の雷を際限なく俺の体が吸い込んだ。


 まだまだ俺の魔力があるぞと放出しようとしたとき、急に黄色い膜と雷が四方へ分散する。


【お知らせ】

 場所が狭いため、姿を変えずに5分間雷龍の能力を再現できます

(5:00)


 現れた画面が龍の姿になれなかったと知らせてくるものの、俺の全身は雷を纏っている。


 そして、この姿で出来ることが次々と直感的に理解する。


「こぉんのぉおおおおおおお!!!!」


 体の変化を確かめていた俺の隙を狙い、聖奈が剣を振り上げて接近してきていた。


「圧縮放電」


「きゃあっ!?」


 手のひらから雷鳴が響くと同時に、雷の柱が放たれた。


 どんな威力かわからないので直撃はしないように注意をしたものの、余波だけで聖奈が感電しながら石床に叩き付けられる。


 聖奈の持っていた剣が割れ、ピクリとも動かなくなってしまった。


「聖奈のかたき!!」


 倒れた聖奈を見て、離れた場所で休んでいた朱芭さんが苦しそうにこちらへ駆けている。


 圧縮放電を目の当たりにしてもなおこちらへ向かってくる彼女を全力で迎撃する。


「雷のゆりかごよ」


 地下にいるはずの俺たちへ黄色い雨が降り注ぐ。


 頭上を覆うように現れた銀色の雲からこぼれる雨は俺以外の生物から体の自由を奪い、やがては死へと誘う。


 そんな雨はこれから行う技の前座でしかない。


 銀色の雲に飛び込み、その中で体内に残る雷をすべて消費する。


天雷てんらい召喚」


 銀色の雲全体が雷を帯び、空気を揺らして競技場全体へ黄色い柱が降り注ぐ。


 頑丈なはずの競技場は砕け、これまで幾多の攻撃を遮断してきた結界が割れた。


 聖奈と朱芭さんはもちろんのこと、他の部員も雲から放たれる怒れる雷の余波を受けて行動不能に陥る。


「澄人! 終わりにしろ!!」


 両脇に人を抱えた先生が落ちてくる雷を避けながら、俺を止めるように現れた。


 抱えられているのはアラベラさんと楠さんで、2人とも涙目になりながら俺のことを見ていた。


 発動させた俺でも止め方がわからないので、落雷を自分の雷でいなすことでこれ以上被害がでないようにする。


 落雷の威力が想像以上にあり、雷の操作に集中して部員を守った。


 落雷が止まり、銀色の雲が消えたあとに競技場内にいた部員を運んでくれていた先生へ頭を下げる。


「やりすぎました。先生ありがとうございます」


「お前の本気が見られて嬉しいよ……あいつら全員を治療してやってくれ」


 競技場が見る影もなくなり、周りの芝生や壁のところどころに焼け跡が残る。


 上からはぱらぱらと小石が落下していたため、メーヌを呼んで競技場を元の姿に戻してからみんながいる所へ足を向けた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。

大変励みになります。


次の投稿は10月25日に行います。

次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。

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