国際ハンター会議へ②~放課後学校案内ツアー~
アラベラさんへ草根高校の案内を行ないます。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お兄ちゃん、お昼を一緒に食べない?」
昼休みになると、少し怒り気味の聖奈がお弁当袋を持って俺の机の前に立ち塞がった。
断る理由もないので、お弁当袋と飲み物を持って席を離れる。
「いいよ。部室? それともどこか別の場所?」
「人がいないところが良いな。お兄ちゃんと2人だけで話がしたい」
「んー、なら外で適当なベンチを確保するか」
教室を出るために廊下へ向かおうとしたら、アラベラさんが俺へ悲しそうな顔を向けてきていた。
「お兄ちゃん、早く行こう!」
アラベラさんへ俺に話があるのか聞こうとする前に、聖奈が俺の腕を持って強引に廊下へ引っ張り出してくる。
聖奈が無言のまま中庭にあるベンチに座り、膝の上へ持っていたお弁当を置いた。
「お兄ちゃん、アラベラが転校してくること知っていたの?」
「何も知らなかったよ」
お弁当を開けながら聖奈がぽつりと話を始め、食事をしながら会話をする。
しかし、聖奈はお弁当に手を付けず、箸を持ったまま俺の方へ顔を向けて視線を外さない。
「2人で話をしているとすごく良い雰囲気だけど、なにかあるの?」
「特になんにもないよ。お弁当どう? 美味しいかな?」
「ん……美味しいよ……毎日作ってくれてありがとう……」
ようやくお弁当に箸をつけた聖奈は唇をとがらせてから食事を始めた。
味については文句がないようなので、安心して俺も食事を再開する。
「お兄ちゃんはアラベラみたいにきれいな人がそばにいた方がいいの?」
「いた方がって……どうしたんだ? 質問が多いぞ?」
「答えて! ……やっぱり、私よりもアラベラがいい?」
思わず手が止まり、なんでこんなに質問をしてくるのか理解ができなかったため、文句を言おうとしたら聖奈の必死な顔で訴えかけてきた。
このような質問は適当に答えたら後で困るのは俺なので、俺も一旦箸を置いて真剣に考える。
「聖奈は妹だし、アラベラさんはギルドメンバーでクラスメイト、それ以上でも以下でもないだろ。お前は俺になんて答えてほしいんだ?」
どんなに考えても質問の意味が分からず、聖奈へどう答えて欲しいのか逆に質問をしてしまった。
すると、聖奈はなぜか頬を赤く染め、斜め下に視線をずらした。
「それは……その……大切で可愛い妹とか?」
「自分で言うなよ」
呆れを通り越して文句を言う気力も無くなり、力が抜けたようなため息が漏れた。
食事を再開したら、聖奈がまだ何かを言いたそうにしており、つくづく自分が妹には甘いと自覚してしまう。
「聖奈はどうしてアラベラさんと俺の関係を知りたいんだ? まだ会って数日しか経っていないんだぞ?」
「なんだかアラベラがお兄ちゃんを見る目が普通じゃないんだもん」
「それは俺がアラベラさんの命を救ったからだろ。今まで救ってきた人が逆の立場になったから印象に残っているんじゃないか?」
「うーん……それだけじゃないと思うんだけどなー……」
俺の出した結論に聖奈は不服そうに箸を口に咥えたまましかめっ面になる。
食べ終わったお弁当を片付けた俺は、そんな聖奈へ時間を見せて立ち上がろうとした。
「さっさと食べないと昼休み終わるぞ? 空腹でこの後の授業過ごすのか? 俺は行くぞ?」
「それは嫌! お兄ちゃん待っててよ!」
勢いよくお弁当を食べ始めた聖奈の横で、俺は涼しげな風に身を委ねて目を閉じた。
予鈴のチャイムで目を覚ますと、ニヤニヤしながら俺の顔をのぞき込んでくる聖奈と目が合う。
「なんだよ」
「そろそろ行かないと授業に遅れるよ? ねぼすけお兄ちゃん」
「寝過ごしていないからまだ平気だよ。走っていけば間に合う」
「クシシッ、一緒に走っていこうよ」
聖奈が悪戯っぽく笑い、俺の手を取って小走りで教室に向かう。
授業が始まる数秒前に教室へ入り、授業担当の草矢さんに見守られながら俺たちは着席した。
「アラベラさんこれで大体施設の案内が終わったけど、何かわからないことはあるかな?」
午後の授業終了後、真友さんが中心となってアラベラさんに校内の案内をした。
実習室や食堂など主に使う施設の場所を一通り教え、今は下駄箱にいる。
「ミステリー研究部へ入部したいんですが、どうすればいいですか?」
「えーっと……澄人くん、どうすればいいかな?」
「顧問の平義先生へ聞くのが一番だと思うよ。それか天草部長じゃない?」
「そうよね……私、ちょっと平義先生のところへ行ってくるわ」
「その必要はない」
真友さんが走り出そうとした直前、平義先生が俺たちの背後へ突然現れた。
翔が臨戦態勢のように飛び退り、背負っていないはずの剣を引き抜こうと手を背中へ回す。
不可解な翔の行動に好奇心が湧き立ち、話をしているみんなの輪を離れた。
「どうしたの? 冷や汗かいているけどなにかあった?」
「最近の訓練であの人から不意打ちをされることばっかりだったからつい体が……」
「訓練って真友さんたちも一緒にやっているってやつ?」
「うん……最近は朱芭さんや紫苑さんも参加していて、内容が厳しくなってきたんだ」
「へー……でも、今の動きを見る限り誰よりも反応が早かったから、良い訓練を受けているんだね」
翔は雷の探知を使っていない俺よりも早く平義先生の声に反応していた。
声が聞こえたと同時に体が動いていたように見え、その反応が訓練の賜物だと感じた。
「澄人くん! 翔! 一度部室に集合だって!」
「わかった! 行くよ!」
先生に誘導されて部室に入ると、先輩たちの目がアラベラさんへ注がれる。
いくつもの視線を受けつつも、アラベラさんは動揺一つせずに席へ座る。
「入部試験として、ミス研全員でアラベラと一緒に異界へ突入してこい」
部員を見回してから平義先生が元々決めていたかのように言い切り、制服姿の天草先輩へ準備をするように指示する。
「ただし、澄人は俺とゲート前で待機だ」
部員が続々と更衣室へ向かう中、平義先生は無表情で俺へ待機命令を出してきた。
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ご覧いただきありがとうございました。
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次の投稿は10月16日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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