清澄ギルドの今後⑬~ライブ終了後~
ライブが終わり、聖奈と澄人が帰宅します。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ソニアさんのライブが終わり、聖奈は幸せオーラを全身から放ちながらファンクラブの集まりへ顔を出しに行った。
俺はソニアさんたちとの二次会をする【
(何で俺はこんな印象を持っているんだ?)
帰り道にレストランの名前を検索してみたところ、品格のある場所ということがわかった。
ただ、俺はそのガゾンカルムへ
(なんなんだろう……勘違いかな? でもこんなにはっきりと覚えているから変なんだよな……)
部屋にある自分の日記や本を流し見ても、ガゾンカルムという単語さえ出てこない。
(そんなことして良いのかよって思った場所なんだけど……おっかしいなぁ……)
俺がレストランについて悩んでいるとスマホがメッセージを受信した。
【明日の20時にレストランを予約しました。夜遅いため、保護者同伴が好ましいです】
【わかりました】
ヘレンさんからのメッセージに返信を行い、お姉ちゃんたちの予定を確認することにした。
今、2人はギルドハウスで今日のツアーの報告書を作っていると思うので、お姉ちゃんへメッセージを送ろうと思う。
【明日の夜、ガゾンカルムで食事をすることになって、相手の人が保護者さんも一緒にどうぞって言ってくれているんだけど、行けないかな?】
【いくわ】
(はやっ!)
仕事をしているはずのお姉ちゃんは俺がスマホを置く前に返事を返してきた。
それだけすごいレストランなんだろうと自分を納得させ、ヘレンさんに保護者が来てくれることを伝えた。
翌日の夕方、俺は制服を着たまま畳へ腰を下ろし、その場でくるくると回る聖奈を眺めている。
何十着目と服を着ても納得がいっていない聖奈は、俺の姿を見てあっという声を出した。
「お兄ちゃん、ドレスコードって制服でも大丈夫なの?」
「高校生は制服が第一礼服だから、それで合っているけど……」
「わかった! 着てみるね!」
「着てみるもなにも……それほとんど毎日……」
俺の漏らした言葉は聖奈の足音にかき消された。
聖奈がレストランへ向かう直前になっても着る服について悩んでおり、俺を相手にファッションショーをしていた。
(制服で良いなら最初から言えばよかった……)
長い時間聖奈が服について悩む必要があったのかと思うが、それだけソニアさんたちと会うことに気を使っているのだろうと考えることにした。
普段、着る服について悩んだことがない聖奈が制服に着替えて戻ってくる。
「お兄ちゃん変じゃないかな?」
「似合っているよ」
「制服だから似合っているとかないでしょ……汚れや皺がないか見てもらいたいんだけど……」
制服を見つめる俺を呆れるように聖奈がくちびるを尖らせている。
聖奈の制服をメンテナンスしているのは俺なので、状態については本人よりも把握している自信がある。
「それなら問題ないよ。ボタンのほつれもこの前直したし、そのあとにアイロンをかけたから皺もない」
「これでレストランへ行けるね!」
ファッションショーが終わったかと思ったので立ち上がろうとしたら、聖奈が姿見の前で鼻歌を歌いながら胸元のリボンを調節していた。
ご機嫌な聖奈は、髪の毛の乱れを気にしながら口を開く。
「ガゾンカルムへ行ってみたかったんだよね。
「……ん? 草凪ギルドでは止められていたの?」
「えーっと……なんだったかな……特別なお店って誰かが……あれ? 高いからだったかな?」
聖奈が俺の質問に対して唸るような声を上げながら、なんだったかなと思い出そうとしてくれていた。
(やばい……思い出した……まさかっ!?)
俺は机の引き出しの奥に保管してある【おじいちゃんのメモ帳】を取り出した。
最近、俺が元々住んでいた小屋を掃除した時にたまたま見つけたものだ。
これには草凪家のことや水鏡家のことなど、ハンターに関わる様々なことが書かれている。
(これだガゾンカルム……マジか……)
そのメモ帳にはっきり【ガゾンカルム】と書かれており、目を疑ってしまった。
「聖奈、駄目だ……制服じゃあ行けない……」
「えっ? どうして? これ礼服なんだよね?」
「ここを読んでみて」
自分の気持ちを整理するために、聖奈へじいちゃんのメモ帳を渡す。
「《草凪の者がガゾンカルムへ行くときには、タンスの一番上に入っている服を着るべし》……赤色と黄色から選べ? お兄ちゃんなにこれ?」
「最近見つけたじいちゃんの遺言っぽいメモ。草凪家の心得とか書いてあるよ」
「本当だ……どこのタンスから選べばいいのかな?」
聖奈がメモ帳をパラパラとめくり、中に書いてあることを確認していた。
じいちゃんの部屋にある物にはほとんど手を付けていないので、おそらくその部屋にあるタンスだと思われる。
「たぶん、じいちゃんの部屋にある鍵のかかった桐タンスだと思う」
「それなら選びに行こうよ。おじいちゃんが残してくれたんだから、きっと良い物だよね!」
メモ帳を返してくれた聖奈は、早く行こうと言いながら俺の手を引っ張る。
聖奈に連れ去られるように奥にあるじいちゃんの部屋へ向かいながら、大切な相談を持ちかける。
「聖奈は赤と黄色だったらどっちがいい?」
「黄色かな。赤よりもそっちの方が好き」
「そうか。それなら俺は赤でいいや」
わざわざどっちの色か選べと書かれていたので、中の物を見る前に決めておく。
毎週末掃除をしているじいちゃんの部屋に入り、桐タンスを開けた俺は一番上に入っている服を見て硬直してしまった。
「お兄ちゃん本当にこれを着ていくの? お店の人に怒られない?」
「アロハシャツ……じいちゃんが入れるところを間違えたと思ったけど、色が合っているんだよな……」
桐タンスの一番上へ大事そうに畳まれていた服はなぜか派手な色のアロハシャツだった。
種類も黄色と赤なので、じいちゃんが指定した服はこれで間違いないだろう。
聖奈が黄色のアロハシャツを手に取り、不思議そうに着替えてくると言いながら部屋から出て行った。
「……これも……なの? じいちゃんメモを書いた時正気だったのかな?」
俺は残された赤いアロハシャツをタンスから出した時、思わずじいちゃんが錯乱していたのではないかと疑ってしまう。
こうしている間にも刻一刻と約束の時間に近づき、時計の針の音がやけに大きく聞こえてきた。
「仕方がない遺言だし……俺も着替えるか」
アロハシャツとその上に乗せられていたモノをタンスから取り出し、部屋へ戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
次の投稿は10月1日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます