清澄ギルドの今後⑪~八尺瓊の勾玉への挑戦~
皇立高校に張られている結界へ澄人が挑戦します。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
詠唱を終えると、赤い光線が皇立高校の敷地内全体へ降り注ぐが、何かに吸収されたようにかき消される。
勾玉による結界でグラウンド・ゼロが無力化され、何も破壊することが出来なかった。
(魔力による攻撃は駄目か……それなら雷の剣も使えないな。選択肢は1つか)
グラウンド・ゼロの破壊力で突破できない結界なら、俺の取れる手段は1つしかない。
アイテムボックスから草薙の剣を選択し、詳細を表示させる。
【草薙の剣 詳細】
スキル1:【神の
スキル2:【神気解放】
シークレットスキル:【草薙の
草根高校へ帰る前にステータスの攻撃力をSSに上げたとき、草薙の剣がアイテムボックスから飛び出して俺へ教えてくれたスキル《草薙の一太刀》。
【スキル詳細】
スキル:《草薙の一太刀》
使用条件:攻撃力SS以上
意志を継ぐ者
消費体力:無制限
神気:全開放
説明:草薙の剣による一撃
その詳細を見て、今が使い所だと判断し、剣を大きく振り上げてからスキルを発動させる。
発動させると草薙の剣が淡い緑色に輝き、新たな画面が出てきた。
【草薙の一太刀 詠唱解禁】
体力消費中、詠唱による威力向上が可能です
「いいね! そうこなくっちゃ!!」
草薙の剣が最高の形で俺の気持ちに応えてくれている。
皇立高校に張り巡らしてある結界を切り裂くべく、回復薬を連続使用しながら詠唱を始めた。
我が名は草凪澄人
草凪の意志を継ぎ、境界を攻略する者なり
我が道を阻んだ愚かな敵よ
草薙の剣は俺の体力を無尽蔵に吸い込んでいく。
体力の消費が激しく、無料の回復薬では追いつかないため(特)を使用するしかない。
(この注ぎ込んでいる体力と草薙の剣で神器の結界を打ち破れ!!!!)
このひと振りの前にひれ伏せ!!
草薙の一太刀!!!!
剣を振り下ろすと緑色の光を金色が包み、皇立高校を切り裂くように襲いかかる。
――ピシャァァン!!
グラウンド・ゼロの時とは違って途中で阻まれることはなく、皇立高校全体を覆っていた結界を砕いた。
緑色の光は皇立高校全体を覆っていた結界を破り、余波で空気を大きく揺らした。
(神器に勝ったのは神器だったな。これでここは無防備だから好き放題できるぞ)
この高校を守り続けてきた結界が無くなったので、まずはグラウンド・ゼロで皇立高校の象徴である旧校舎を完全に破壊する。
使えるようになった雷の察知で、今使われている校舎以外は敷地内に人はいないことを確認した。
(ここ以外は全部壊してもいいんだな。よし!)
事故が起こらないようにもう一度確認をしてから、現校舎以外を消滅させるようにグラウンド・ゼロを発動させる。
創立以来守られてきた皇の旧校舎が跡形もなく吹き飛び、敷地内が校舎を残してドーナツ状のクレーターとなった。
上空からその光景を眺めている俺は、これこそ相手のモノを奪うだけ奪ってきた引きこもり学校のあるべき姿だと満足する。
(おっ? ようやく人が出てきたぞ?)
焼け野原よりもひどく、地面が黒く焼き付いている敷地を見回すように校舎の屋上へ人が集まってきた。
その中に殿下の姿があったため、俺も屋上へ降り立つ。
すると、頭皮が見えている禿げ頭のスーツを着た中年男性がすごい剣幕で俺へせまってきた。
「お前ぇ!! 歴史と伝統のある我が校へこんなことをしてただで済むと思うなよ!!」
「神器の結界に引きこもっていただけですよね? 結界が無くなればなにもできないんですか? それで……殿下、この方が言っているように、徹底抗戦というのが皇立高校の答えですか?」
教職員と思われる人を引きつれるように屋上へ来ていた殿下へ、中年男性の言葉を俺なりに解釈した返事を投げかける。
いきなり殿下に話しかけるとは何事だと中年男性が俺と殿下の間に割って入るので、黙らせるようにアイテムボックスから輝正くんのお父さんを2つ取り出した。
「これ、なにかわかりますか?」
「ひぃ……白間さんじゃないか……死んでいるのか……」
俺の襟元をつかんでいた中年男性が腰を抜かし、後ろにいた殿下やその他の教職員が顔を青くする。
頭をつかみ、中年男性へ見せつけるように差し出すと怯えながら下半身を濡らして涙を撒き散らす。
「この人が草根高校へ奇襲を仕掛けてきました。殿下、ご存知ですよね?」
「いや……私は……」
辛うじて平然を装っている殿下は知らない振りをしている様子はないので、失禁している中年男性へ話しかけた。
「皇の生徒全員が草根高校で暴れ回ってくれたんですが……あなたはご存知ですか? 嘘をつくとあなたもこうなりますよ?」
脅すように中年男性の足元へ頭を置くと、話すから止めろと涙と鼻水を垂らしながら叫ぶ。
「は、白間さんが言い始めたんだ!! 草根を攻撃すれば異界や皇の名誉が全部元通りになるって!! それで!!」
聞きたい内容が中年男性の口から出たので、俺は改めて殿下と目を合わせる。
「殿下、ご存知だとは思いますが、八尺瓊の勾玉はかつて草凪家から天皇へ信頼の証として献上したそうです」
殿下が次に俺が何を言うのかわかっているように何も言わず、無念そうにうなずく。
「今回、殿下が管理しているはずの皇立高校からこのようなことが起こり、草凪家当主として天皇家を信頼できなくなりました」
そうだなと呟く殿下は俺が要求をする前に懐から勾玉を取り出す。
「草凪家の信頼を損ねて大変申し訳なかった。これはお返しする」
俺が勾玉を受けとろうとすると、教職員の人たちが殿下それはと引き留めるようにつぶやいていた。
その声を振り切り、殿下が頭を下げてから俺へ緑色に鈍く輝いている勾玉を渡した瞬間、すすり泣く声が聞こえてくる。
「これで殿下と俺個人のことは終わりです。次は、学校対抗戦の代償として異界ゲートの管理権をいただきますね」
絶望している人たちへ草根高校としての要求をさらに突き付ける。
これ以上何か持っていくのかと涙目で訴える人が出てきたので、笑顔を返した。
「それが叶わない場合には、ここを全て破壊して、跡地に草根高校の研修所を作ります。いかがいたしますか?」
「皇が残るのならそれでよい。これまでの歴史で、皇はいくつもの高校を潰した……その報いだ」
殿下が自分と教職員へ言い聞かせるように口を開き、俺の要求に納得をしてくれている。
その殿下の足元へいつまでもこれを置いておくべきものではないので、勾玉を持っていない方の手で草薙の剣を取り出す。
「澄人くん、なにを……」
「草凪の名のもとにこの者へ祝福を」
なんの媒体もなしにこの人数の前で死者を蘇生したらどのように伝わるのかわかったものではない。
俺は仰々しく2つの神器を輝正くんのお父さんの体の上へ掲げながら神の祝福を使った。
「こ……これは……」
銀色の光に包まれた輝正くんのお父さんの頭と胴体がくっつき、身を起こす。
殿下が目を丸くし、輝正くんのお父さんへ視線が釘付けになっている間にワープでこの場を離脱する。
「神器が二つ揃うとこのような奇跡も起こせるんですよ。それでは、失礼します。異界ゲートの件は守ってくださいね」
それではと言いながらこの場にいる人たちへ手を振り、ワープ偽装用の水晶を輝かせた。
草根高校へ帰ってきた俺は、手に握り締めた八尺瓊の勾玉の鑑定を行なった。
【八尺瓊の勾玉】:SSS級
特性:不壊・???
スキル1:【神の不可侵領域】(クールタイム10年)
スキル2:【神気浸食】(任意指定)
※スキル1 次回使用可能まで(8年114日9時間51秒)
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ご覧いただきありがとうございました。
もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
次の投稿は9月25日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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