境界適応症⑦~境界適応症の更新へ~
境界適応症完治のため、輝正くんを連れて境界巡りをしています。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「輝正くん、お疲れさま。体の調子はどうかな?」
C級境界を攻略したあと、発掘等の作業を終えてから脱出すると輝正くんが地面に座り込んでしまっていた。
Hから始まった境界巡りも、一週間ほどでここまで終わらせることができた。
なかなか目的の境界が現れず、何度かアイテムショップの境界を使用したが、境界耐性の取得には問題がなさそうだ。
「澄人くん……」
胡坐で腕を使って体を支えるように座っている輝正くんは、頬に汗を流しながら疲労を浮かべた顔をこちらへ向けてくる。
境界内にどれほどの時間いれば良いのかわからないので、能力が低い輝正くんには逃げ回ってもらった。
そのため、C級境界でも自分の身を守ることだけを考えれば滞在が可能だったため、俺が攻略するまで無事に済んだ。
「まだ時間があるし、次はB級境界だけど少し休んでから行こうか」
今日も学校が終わってからすぐに出発したおかげで、まだ日が落ちていない。
相変わらず輝正くんは病院から退院できないものの、扉を閉めきって入室謝絶にしているので、今のところこのように抜け出して問題になっていないようだ。
そんな輝正くんはぎこちない半笑いを浮かべ、ハハッと乾いた声を出す。
「僕……能力が足りなくてレッドラインへの突入はできないよ?」
「わかっているよ。それでも問題ないから、30分くらい休んでから次へ行こう」
すでにレッドラインの単独突入をさせてもらえる期限が切れており、白間くんを連れてB級以上の境界へ突入するのは難しいことはわかっている。
また、世界でも年に数回しか起こらないレッドラインを日本だけポンポンと発生させるわけにはいかない。
これらの解決策は見つけているので、俺はこれから輝正くんとB級境界と同等の場所へ行くつもりだ。
俺の決意が伝わったのか、大きくため息をついた輝正くんはゆっくりと手を差し出してきた。
「……わかったよ。飲み物をもらえるかな?」
「どうぞ」
アイテムボックスから取り出した飲み物を輝正くんに手渡す。
「ありがとう――プハァ!」
受け取ったペットボトル飲料を一気に飲み干した輝正くんは、汚れるのを気にせずに大の字に寝転がった。
(よっぽど疲れていたんだな。それにしてもハンター協会は融通が利かない……)
輝正くんは俺の従者になって一部の能力が上がり、E未満なしでC以上2つかB以上1つというビショップ級の条件は満たしている。
ただ、ハンター協会は神格が上がった時以外にはハンター証の更新をしてくれないので、輝正くんの階級はナイト級のままだ。
【白間輝正 ハンター証】
【名 前】 白間 輝正
【ランク】 ナイト級
【神 格】 4/4
【体 力】 14,000
【魔 力】 3,000
【攻撃力】 C
【耐久力】 D
【素早さ】 D
【知 力】 E
(まあ、ビショップ級以上は高校を卒業するまでは仮階級だから、俺や聖奈も高校には通う必要がある……高校を辞めたら、キング級の能力があるナイト級になってしまう)
輝正くんのハンター証に書かれている内容を振りかえりつつ、高校に通っている意義を確認してしまう。
最低限ハンターとして自由に活動するためにはビショップ級にならなければいけず、その資格は高校を卒業する以外に方法はない。
現在は高校卒業見込みで暫定という形でハンター証が発行されているため、俺のハンター証にはそれが分かるように記載がしてある。
【草凪澄人 ハンター証】
【ランク】 キング級(仮)
【神 格】 5/5
【体 力】 20,000/20,000
【魔 力】 25,000/25,000
【攻撃力】 A
【耐久力】 A
【素早さ】 A
【知 力】 S(U)
レッドラインを攻略したときに神格が5に上がったと報告をしたので、俺のハンター証の記載内容はこのようになった。
知力の項目についている(U)はS以上ということを表す記号のようだ。
「さて……次は何処へ行こうかな」
寝息を立て始めてしまった輝正くんから少し離れ、スマホでB級境界が【攻略できなかった】場所を検索する。
《レッドラインオーバーフロー》と呼ばれるこの場所は、B級以上の境界を攻略できなかった時に生まれてしまう。
境界に存在するモンスターがこちらへ出現するようになり、地形をも変える。
解決するには中心部にあるレッドラインへ突入し、境界を攻略するしかない。
(オーバーフローが起こるとモンスターが境界内よりも強くなって、数も際限なく現れるから攻略難易度が格段に上がる……か)
場所の検索をすると最初に表示されるのはこの情報で、一度オーバーフローが起こってしまうと簡単に解決できないことがわかる。
特にオーバーフローが起こっているのは、島などのハンターが集まりにくい場所という印象を受ける。
(日本にもいくつかあるけど……人に見つからない場所がいいな)
レッドラインを攻略し、交流戦でグラウンド・ゼロを放った影響が俺の周囲を騒がしくしている。
平義先生に対応を任せているが、テレビや雑誌の取材なども来ているそうだ。
注目を集めるとは覚悟していたものの、ここまで反響が大きいとは思わなかった。
(侵略境界の攻略をしたらそれはそれでまた注目を浴びるから、するとしてもばれないようにだな)
境界適応症を治すには境界に入ることができればよいため、攻略をする必要はない。
(目立たない場所で、あまり人が行かない所……どこがいいかな……あ、【
スマホで調べて目的地を決め、休憩時間が終わるまでこれからのことを考える。
(異界ミッションを終わらせるより、この《青き草原の鍵》を先に使おうかな……とりあえず、輝正くんのことを解決してから行動だ)
30分が経って、休憩時間が終わったため輝正くんに近づく。
俺が近づくと輝正くんが膝に手を当てて、体を重そうに立ち上がる。
「ワープをするからしっかりと俺につかまってくれる?」
「……わかったよ」
しんどそうに返事をした輝正くんは俺の左腕をつかみ、こちらの様子をうかがってくる。
これからのことを考えてしっかりとつかまるように伝えたのに、輝正くんが腕しかつかんでこない。。
「腕だけで大丈夫?」
「平気だよ。絶対に離さなければいいんでしょう?」
輝正くんにしっかりとつかまっていてほしいことは伝わっているようなので、これ以上何も言うことはない。
「じゃあ、ワープするね」
俺はスマホで見た神津島をイメージしながら2人分のワープを発動した。
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ご覧いただきありがとうございました。
もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
次の投稿は8月2日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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