境界適応症③~従者機能~
従者機能が解禁されました。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「うーん……届いていないのかな?」
部屋の椅子に座りながら、新しく解放された従者の情報とにらめっこをしている。
【従者一覧 1/2】
【白間 輝正】《情報》《交信》《召喚》
交信と表示されている項目を意識すると文字が太くなるが、俺の声が届いている気がしない。
横に表示している使用方法を見ても、確認の方法は記載がなかった。
【交信機能】
《交信》を選択しながら言葉を念じれば相手へ伝達できます
「どうしたものか……寝ている訳でもないし……」
白間くんの情報を映し出しつつ、どうして自分の言葉が届かないのか考える。
【従者情報】
【氏 名】白間
【年 齢】16
【性 別】男
【種 族】人間
【体の異常】なし
【心理状況】突然の出来事に戸惑い
混乱状態
(混乱しているから返信できない? …………あ、そうか。俺が返信方法を伝えていないだけだ)
自分ができるようになったので、白間くんもできるものだと勝手に思い込んでいた。
急に頭の中で俺の声が聞こえて混乱しているとわかり、もう一度交信を選択してから心の中で謝る。
《白間くんごめん。心の中で俺へ話しかけてみてくれる?》
それでも白間くんからの反応がないため、交信の使用できる有効範囲でもあるのかと思ってしまう。
《これは澄人くんのスキルなの? これでいいのかな?》
スマホで自宅から白間くんのいる病院までの距離を測ろうとした時、頭の中に声が届いてきた。
《聞こえているよ。交信できたみたいで安心したよ。体は大丈夫だよね?》
《体が軽くなって、すごく楽になったよ。ありがとう》
病院にいる白間くんの声がはっきりと俺に届いてくる。
安心しながら白間くんの能力を開き、境界適応症と呼ばれていたスキルに目を向ける。
【名 前】 白間 輝正
【年 齢】 16
【神 格】 4/4
《上限+1:1,000,000P》
【クラス】 剣士 □
【体 力】 15,400(+10%)
【魔 力】 3,000
【攻撃力】 B(+1)
【耐久力】 C(+1)
【素早さ】 D
【知 力】 E
【幸 運】 D・
【スキル】皇流剣術Ⅳ・親和性:剣E
身体能力向上Ⅱ
境界耐性(停止中) □
(今はポイントを使って【停止中】にしているけど、変える前は【暴走】って表示になっていたから、これが境界適応症の原因だと思うんだけど……)
白間くんのステータスを見て、病気だと思われていた境界適応症が境界耐性というスキルであることが判明した。
病気でもなく、習得例のないスキルのため、これまで原因がわからなかったというのもうなずける。
(看破を使っても、知らないスキルは【???】と表示されるから、
世界中のハンターが持っていないスキルのため、境界耐性がわからないのも無理はない話だ。
その境界耐性が暴走している状態は、貢献ポイントを5千使用することで停止に変更できた。
(白間くんに会いに病院へ行ったら、死にかけていたからな)
1万ポイントで購入できる回復薬(特)は状態異常も治せるが、それを使っても白間くんの体力減少は止まらなかった。
死のうとしている白間くんへ提案するのも抵抗があったが、従者という機能への好奇心を止めることができず、悪魔のような取引をしたのは間違いない。
(従者にすると俺の貢献ポイントで白間くんの神格を上げられるようになるみたいだし、スキルも変えられる)
白間くんの神格を上げるには、俺の2倍ポイントが必要になるようだった。
能力には上げるためのポイントが表示されていないため、自由に上げることはできないらしい。
しかし、自分にはない【クラス】という項目があり、能力が上がっているような記載もあるため、調べたいことがたくさん出てくる。
《僕の体はどうなっているの? お医者さんと平義先生がエーテルのおかげとか言っているんだけど……》
白間くんに話しかけるだけ話しかけて放置してしまっていたため、不安そうに言葉を伝えてくる。
境界適応症の心配をしなくてもよくなったことなどを伝えようとしたら、部屋の扉がノックされた。
「お兄ちゃんどうしたの? 朝ごはん用意できたみたいだよ」
「教えてくれてありがとう。今行くよ」
制服姿の聖奈が扉から顔をのぞかせて、椅子に座っている俺を不思議そうに見る。
聖奈は俺のことを待つように、廊下から行こうよと声をかけてくる。
《詳しい話はまた今度学校でしよう。交信を終えるね》
《ちょっと澄人くん!?》
交信の項目から意識を外し、聖奈を待たせないように部屋を出る。
「白間くん大丈夫かな? 昨日意識戻らなかったみたいだし」
聖奈と居間へ向かっている時、少し悲しそうに聖奈が声をかけてきた。
「平義先生が病院に行ってくれているみたいだから、様子を聞いてみようよ」
「そうだね」
朝食が用意されたテーブルでお姉ちゃんと夏さんが俺たちのことを待っていた。
2人と朝の挨拶を交わしてから畳へ座り、一緒に食事を始める。
雑談をしながら食事をしていたら、お姉ちゃんのスマホが鳴る。
「こんな朝から誰かしら……え? 平義さん?」
お姉ちゃんは立ち上がって、俺たちに背を向けてから電話に出た。
通話の邪魔にならないようにテレビの音量を下げ、自然と会話が止まる。
「おはようございます。はい、澄人ならいますけど……」
お姉ちゃんが顔だけこちらを振り返り、俺と目を合わせる。
「はい……わかりました。そう伝えておきます」
電話を切ったお姉ちゃんは元の場所に座り、箸に手を付ける前に口を開く。
「ねえ、澄人。平義さんが今すぐこっちに来て、あなたと話をしたいって言っているんだけどなにかしたの?」
病院にいた平義先生が白間くんから話を聞いたとすればこの展開も納得できる。
「白間くんっていうミス研の部員がいるんだけど、その子の境界適応症をなんとかした件だと思うよ」
食事をしながらそう答えると、俺以外の3人が微動だにせずこちらを見てきた。
ハッと動き出したお姉ちゃんが、真顔で否定するように手を顔の前で振る。
「いやいやいや……えっと……冗談じゃなくて?」
「電話越しの平義先生の様子は俺にはわからないけど、どんな感じだったの?」
「取り乱していたわ……まさか……本当に?」
「お兄ちゃん、白間くんのことを治したの?」
聖奈は俺の言ったことを信じ、嬉しそうに笑いかけてきた。
ただ、まだ治したという言い方が適切ではないため、訂正の説明を行なう。
「治したというか、一旦体力の減少を止めただけだから、応急処置かな」
「応急処置? それでもすごいことだよね?」
聖奈が自信なさそうにそうですよねとお姉ちゃんと夏さんを見る。
説明と食事を終えたのでお茶を飲むと、今度は夏さんがこちらへにじり寄ってきた。
「澄人さま、疑っているわけではなく、1人のハンターとして聞きたいのですが、不治の病をどうやって食い止めているんですか?」
「あれってスキルが暴走しているだけで病気じゃないんですよ」
「……スキル? ……暴走?」
夏さんが情報を処理しきれてなさそうな顔になる。
「同じ話をすると思うので、平義先生が来てから説明しますね」
「……よろしくお願いします」
夏さんが席に戻り、考え事をしながら食事を再開した。
その表情を見て、境界適応症を一時的に抑えているだけでも普通ではないことがわかる。
(説明用の資料でも作ろうかな)
昨日から今日にかけて起こった出来事を整理して、わかりやすく説明したい。
これから先生が説明を聞きに来るということなので、食器の片付けをしたあと、聖奈の部屋にあるパソコンを貸してもらうことにした。
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ご覧いただきありがとうございました。
もしよければ、感想、フォロー、評価、待ってますので、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
次の投稿は7月20日に行います。
次回も引き続き読んでいただけたら嬉しいです。
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