他校交流戦⑫~澄人の交流戦~
交流戦を澄人が引き継ぎます。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
競技場の中央に立ち、観客席に座っている人たちを見回す。
(大体の人が困惑していて、中には怒っている人もいるな。当たり前か)
観客席に座っていたミス研の人たちを見つけ、聖奈が無事に解放されていたことがわかった。
手を上げて部長へ合図を行ないつつ、運営の方から借りたマイクをアイテムボックスから取り出した。
「みなさん。決勝戦がこのような結果となり、憤りを感じているかと思われます」
話を始めたのが大会の運営の人や会長でもなく、俺がマイクを握っていることに大半の人が疑問を持つ。
皇が不正を行っていたという事実が明るみに出てしまい、このまま交流戦を終わらせるのは参加者全員が納得できないだろう。
会場にいる人たちの不満を感じつつ、まだ誰も騒いでいないことに感謝をする。
「そのため、これから交流戦そのものをやり直します。この提案は、交流戦を主催するハンター協会の会長が了承しております」
事前に打ち合わせをしておいたが、まだミス研の人たちの準備が終わらないので、時間を稼がなくてはいけない。
流石に再試合をする時間はないため、代替案を提示する。
「これから観客席にいるみなさま全員へ私が状態異常を付与し、耐えた方が交流戦への参加資格を与えます。1分待つので、希望しない方は廊下へ退避するようお願いします。また、顧問や大会を運営している方にもかかってしまうので、かかりたくない方は同様に席をお立ちください」
数万の人が見つめる中、注意事項を噛まずに言えてほっとした。
お前はなんなんだと言う文句が数ヵ所から上がる。
「申し遅れました、私は会長から今回の件を任された草根高校ミステリー研究部の草凪澄人です。それでは移動してください」
このような状況で大会運営の方々が俺のことを止めないのを見て察したのか、観客席にいた人たちが一部移動を始める。
時間を気にしながら観客席を眺めていたら、スマホが数回震えた。
(みんなの準備ができたみたいだ。そろそろ良いかな……)
部長からの合図を受け取った時、ほとんどの人が観客席に残っていた。
「時間になったのでスキルを使用します。ただ、耐えられなくなった方は全力で叫んでください」
自信満々の人や不満そうな人、笑って余裕を見せている人など、様々な人を対象として捉える。
漏れのないように、雷による気配察知で隠れている人の位置なども把握する。
(永遠の闇、発動)
永遠の闇を1度使い、観客席に残った人を全員闇の中へ閉じ込めた。
数秒もしないうちに絶叫を上げる人が出始めてしまう。
(あの人を解除して、次はあの人……興味本位で残っていた大人が特に耐えられなくなるのが早いな)
闇に閉じ込められると五感を失い、何の情報も入ってこなくなる。
そのような状況になると説明してから体験したお姉ちゃんも数分で音を上げた。
見た目には何の変化もないため、説明がないまま受けたらパニックになることは間違いない。
(この人たちは急に真っ暗で音も聞こえなくなるから怖いだろうな)
どれくらい持続するのかも示していないので、棄権する人が続出している。
解除した人たちにはそのまま座っているように指示を行なう。
試験時間を10分程度にしようと思っていたが、5分も経たないうちに7割以上の人が脱落してしまうのを見て考えを改める。
(もう終わりにしようかな……これからさらに絞るから参加者がいなくなりそうだ)
スキルを解除すると、闇から解放された人が安堵したような表情になる。
逆に闇を受けた大人たちは俺が何をしたのか不思議でたまらない様子だ。
「耐えられた方おめでとうございます! 次は鬼ごっこを行ないます。廊下に草根高校の生徒が鬼として徘徊しているので、タッチされないように待機所まで逃げてください。誰もたどり着けなかった場合、草根高校が優勝になります。みなさん、頑張ってください!」
運動会の時に放送委員が行なうようにアナウンスをする。
先ほどの闇による状態異常がよほど印象に残っているのか、俺に対して文句を言う人はいなくなった。
「鬼にタッチをされると待機所の水晶で反応されなくなるので、触れられたら失格です!! 制限時間は20分です!! スタートしてください!!」
競技場への移動用水晶が使えなくなる懲罰用の札をミス研の人たちが持っている。
一応水晶は百個以上借りているので、通過者が多ければバトルロイヤルを行う予定だ。
「んー!」
体を解すように腰へ手を当てて体をそらす。
鬼ごっこを始めることができ、ようやくひと段落ついた。
(待機所の前にいる部員をかいくぐるのに時間がかかるから……早くて5分ってところかな)
待っているだけになったので、どれくらいで人が来るのか予想をしていたら、競技場へ近づく人たちが現れる。
1人2人だけではなく、10人以上の人たちがこちらへ歩み寄ってきていた。
しかも、全員がフォーマルな服装をしており、何の集団なのかわからず身構えてしまう。
(先頭の男性は……キング級ハンター? その横にいる女性もキング級だ。後ろの人たちも軒並みクイーンやルークだ)
キング級ハンターである平義先生と同等以上の実力者がこれだけ揃っているのも珍しい。
横目でチラリと視て気にしないフリをしていたら、その中の1人が周りの人へ止まるように合図を出した。
「草凪澄人さん! 少しお話しを聞いていただいてもよろしいですか!?」
かけられた声は雰囲気とは違って威圧的な感じはしない。
声をかけてきた男性は30代前半という印象だが、この中では1番年長のように見える。
中には夏さんと変わらない年齢のような人もいた。
(この人たちが揃いも揃って、一体俺へ何の用なんだ? )
スカウトに来たようにも思えず、心当たりがない。
不思議に思いながら競技場の縁へ近づくと、声をかけてきた男性が一度深く呼吸をした。
「私たちはきみがレッドラインを単独攻略したという偉業を成し遂げたことを知っております」
「はあ、そうですか」
この会場にいる人たちはネットから切り離されているため、俺がレッドラインを攻略してことを知らないはずだった。
ただ、交流戦が終わったと同時に認知される情報をわざわざ伝えに来たのかと思ったが、どうにも様子がおかしい。
(なんでこの人たちの思考が【期待】になっているんだ?)
思考分析で考えていることを覗いていたら、気の抜けた返事しかできなかった。
俺の返事を聞いて、男性は深く頭を下げる。
「そのうえでこんなことを頼むのも申し訳ないが、きみの力を我々に見せていただきたい。この通りだ」
後ろで俺を見ていた人たちも男性と同じように頭を下げ、こちらの返事を待つ。
まだ誰も競技場に現れていないため、観客席にいる人たちはこちらを好奇の目で眺めてきていた。
(時間を潰すには丁度良いかな。観客席の人たちもなにも起こらないよりいいだろう)
先頭の男性へ視線を戻し、なにかリクエストがあれば聞こうと思う。
「わかりました。何をしてほしいとかありますか?」
「いや、特にないが、きみの【
嬉しそうに俺の目を見つめてくる男性は満面の笑みを浮かべる。
自分から聞いてみたものの、微妙に難しい要求をされてしまった。
「全力ですか……わかりました……」
上昇した能力を試したい気持ちもあるが、下手をすれば会場にいる人に危害が及ぶかもしれない。
俺はS級境界を攻略した時に使用した貢献ポイントで上昇させた能力を眺めながら、どのように全力を出すべきなのか考え始めた。
【名 前】 草凪 澄人
【年 齢】 15
【神 格】 5/5
《+1:1,000,000P》
【体 力】 20,000/20,000
《+100:5,000P》↑
【魔 力】 25,000/25,000
《+100:5,000P》↑
【攻撃力】 A《1UP:100,000P》↑
【耐久力】 A《1UP:100,000P》↑
【素早さ】 A《1UP:100,000P》↑
【知 力】 SS《1UP:1,000,000P》
【幸 運】 S
【スキル】 精霊召喚(火)○・メーヌ召喚
鑑定・思考分析Ⅳ・剣術Ⅳ
治癒Ⅳ・親和性:雷S・剣C
天翔Ⅳ・天翼Ⅱ・捕食
ワープ・永遠の闇
グラウンド・ゼロ □
【従 者】 なし
【貢献P】 527,500
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ご覧いただきありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
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次の投稿は7月3日に行う予定です。
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