他校交流戦⑪~交流戦参戦~
交流戦決勝戦に澄人が駆けつけました。
お楽しみいただければ幸いです。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺はアダマンタイトの剣へ雷を帯電させ、薙ぎ払うように斬撃を飛ばす。
突然現れた俺に驚いて硬直していた数人に直撃し、競技場の外へはじき出す。
残っている数名も余波の雷によって吹き飛ばされ、結界へ打ち付けられる。
(緊急ミッションが出たと思ったらこんなことになっているなんて)
1時間ほど前に突如現れた緊急ミッションを表示し、まだ失敗していないことを確認する。
【緊急ミッション:策略から仲間を救え】
成功報酬:従者機能の解放
失敗条件:仲間の失望
A級境界を攻略して、お姉ちゃんたちから強烈なお叱りを受けたあと、様々な手続きをしていたときにこのミッションが現れた。
(白間くんには辛い相手だけど……助かった)
残っている数名のステータスを視て、
ミッションのためにさっさと試合を終わらせるべく、剣を振り上げた時競技場へ誰かが駆け寄ってきた。
「ルール違反だ!! 今すぐ対戦を中止しろ!!」
体格の良いスーツを着た男性が競技場の結界を叩きながら抗議をしてくる。
その男性は訴えるように何度も結界を叩いているが、俺がなんのルールに違反をしたのか何の指摘もせず、中止しろとしか言わない。
「あいつ……自分のことを棚に上げてっ!!」
無視して剣を振ろうとしたら、後ろで白間くんが殺気を込めてその男性を睨みつけていた。
「あの人、知り合い?」
「あの人は対戦相手の顧問だよ」
皇立高校の顧問は白間くんの父親のはずなのに、あの人と目の敵のように吐き捨てていた。
おそらく今回のことで吹っ切れたようなので、容赦をするのをやめる。
「負けそうになったからってこんなことをするのか。控えめにいって屑だね、まあいいや丁度良かった」
観客席にいる人たちもざわめいており、このまま勝っても気分が悪い。
一旦剣を降ろし、文句をわめき散らしている人へ近づく。
「すいません。俺がなんのルールを違反したのか教えていただけますか?」
そういえばこの人がハンター協会の役員であることを思い出し、とりあえず敬語を使う。
「何を言っているんだ!!?? 最初から居ないなんて立派なルール違反だろう!!??」
皇立高校の顧問が見当違いのことを言っている。
「そんなルールありませんよね? 俺はずっとこのように隠れていただけですよ?」
思わず鼻で笑った俺を見て、さらに顔を赤くした白間委員の前で永遠の闇を自分へ使う。
「バカな!? どこへ!?」
突然消えた俺を探そうと白間委員が目を見開いて周囲を見回す。
観客席にいた人や対戦相手も必死に俺が立っていた場所へ目を向けてくる。
「どうですか? これで消えていたって証明できましたか? それに、この結界内に入るのは水晶を経由しなければいけないというのはもちろんご存知ですよね? 草根高校の出場メンバーも俺をいれて10名です。これのどこがルール違反なのか教えていただいてもよろしいですか?」
あまり消えている時間が長いと考える時間を与えてしまうのでスキルを解除し、畳みかけるように質問をぶつけた。
「ぐ……うぅぅ……」
白間委員は苦虫を噛み潰したように俺のことを睨んだまま反論をしない。
睨み続けてくる白間委員が、一瞬俺から目を離して小さくうなずく。
俺の雷による察知が、白間委員の動作と同時に競技場にいる皇の生徒が腕を防具の中へ入れ、胸をさするようなしぐさをしたことを感知する。
俺は彼らのハンタースーツへ雷を通したとき、そのしぐさの意味が分かってしまった。
(カメラだけだと思っていたら、こんなこともしているのか)
事前に試合の記録をしているとは聞いていたが、それ以上にありえない事実を発見してしまう。
それを白間委員へ指摘するべく、ふらふらと立ち上がっている皇の選手たちを一目見る。
「それよりも、今、こうしてみんなの意識がこちらに向いていないのを良い事に、ハンタースーツの下に隠した注射器で回復薬を体へ注入しているあちらの選手の方がルール違反をしていると思うのですが……その点はどう説明をするんですか?」
「な、なにを根拠にそんなことを!?」
観客席に数万といる人の前でこんなことが露見したら、どうにかして責任逃れをするために画策するに決まっている。
(逃げようとしても無駄だけどな)
うろたえる白間委員を追い詰めるため、俺は証拠を提示するべく、振り返らずに魔力を込めた。
「火の精霊よ!! 敵の防具とスーツを焼き払え!!」
火の精霊は皇高校の生徒が身に付けている金属製の防具とハンタースーツだけを溶かし、中に入っていた数本の注射器が競技場へ落ちて割れる。
(さて、どんな言い訳をするのかな? あー……逃げちゃった)
下着しか身に付けていない選手を競技場へ残しておくのも酷なので、会場の外へ出そうとしたとき、白間委員が俺に背中を向けてこの場からの逃走を図る。
白間委員がここへ来た時点で、逃げられるような隙は作っていない。
「白間、どこへ行くんだ? まだ試合は終わっていないぞ?」
待機をしていた平義先生が現れ、白間委員を止めるために制止を促す。
「平義そこをどけ!!!! 邪魔だ!!!!」
忠告を無視した白間委員が平義先生を肩で突き飛ばすように前のめりになった。
「ふんっ!!」
平義先生はその一息で白間委員を宙へ投げ飛ばし、地面へ抑えつけた。
残った相手を火の精霊で焼き払って退場させてから、結界の無くなった競技場から降り立つ。
「それと白間委員、今からこの会場にある会議室で臨時の役員会が行われるそうですよ。ぜひ話を聞きたいと、理事の方が1名出るそうなので必ず出席してくださいね」
「そんな馬鹿なことがあるか!! 草壁会長がいない会議に意味などない!! たかが理事1人が来たからと言って――」
「白間、わしならいるぞ」
平義先生の後ろから一緒にこの会場へ来てくれた師匠が歩み寄ってくる。
地面へ組み伏せられた白間委員はその姿を見て、顔面蒼白になる。
「か、かい……ちょう?」
「そうだ。それに理事であるあの御方にも来ていただいた。お前はそれでも
師匠が別の方向へ体を向き直し、観客席の上部へ目線を送って軽く会釈を行なう。
平義先生が白間委員を拘束したまま体を起こし、同じ方向を向かせる。
「嘘だ……まさか……そんな……」
あれだけ威勢よく騒いでいた白間委員が嘘のように言葉を失う。
(皇の人がこんな状況であの方を見たらこうなるだろうな)
その様子に驚くことなく合図を送るように俺も頭を下げた。
「天皇陛下に御足労いただいた。あの御方では不足か?」
師匠の言葉を聞きながら頭を上げると、陛下が白間委員をじっと見つめてから踵を返す。
「何で陛下が……このような場所に……」
陛下の姿が見えなくなってから、白間委員が消え入りそうな声を出した。
「これから臨時の役員会でおぬしが役員という立場で職権を乱用した疑いについて話をするのだから、皇立高校の名誉顧問である陛下が出席を希望するのは当然だろう」
「そんなっ!? 私は何も――」
「言いたいことがあるのなら、役員会でその時間を設ける。平義できるだけ丁寧に連れて行け」
「はい」
この期に及んで言い訳をしようとする白間委員のことばを師匠が遮った。
平義先生に連行されるように白間委員がこの場からいなくなり、師匠が俺の肩へ手を置く。
「好きなタイミングで始めると良い。こちらは任せておけ」
よくやったと言い残し、師匠も2人の後を追うように立ち去る。
(始めるか!!)
俺が競技場へ再度上がると同時に、赤い画面が主張するように現れた。
【ミッション達成】
仲間を窮地から救いました
従者機能を解放します
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ご覧いただきありがとうございました。
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次の投稿は6月30日に行う予定です。
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