他校交流戦⑨~A級境界解放権発動~

「嘘……同じ国で一日に二回もレッドラインが……こんなことって……」


 漂う赤い線を見て、夏さんが絶望するように小さくつぶやいていた。

 お姉ちゃんの顔も真っ青になり、守るように俺のことを力一杯抱きよせてくる。


 何も言わなくても、俺を守りたいというお姉ちゃんの想いが伝わってくる。

 しかし、この境界へ突入するために俺は協会から権利をもらった。


「夏さん、この境界の測定をお願いできますか?」


 このレッドラインへ突入するためには、観測センターか1級以上の観測員に危険度を測定してもらわなければいけない。


「測定って……レッドラインだからB級以上が確定して……まさか!?」


 お姉ちゃんの手を振りほどき、完成しつつあるレッドラインを一目見る。


「ここからが本番なんです。測定して報告をお願いします」

「1人で入るなんて絶対にダメよ。運良くレッドラインから逃げられるなんて二度はないわ!!」


「逃げる?」


 お姉ちゃんの言い方が気になり、思わず聞き返してしまった。

 

「そうよ。単独で入ったハンターが無傷でレッドラインから脱出できるなんてこと二度はないわ!」

「お姉ちゃん……それは……」


 お姉ちゃんの思考が錯乱しており、何を言っても俺の意見を聞き入れてくれないだろう。


「そうですよ澄人さま、レッドラインは危険でしかないんです。もし入るのなら、私たちも連れて行ってください!!」


 夏さんが測定をせずに、じっと俺のことを見つめてくる。


 ここで観測センターへ電話をかけて観測を行なってもらっても、俺だけでこの境界に入るのは難しいだろう。


(力を見せつけるには3人で攻略するだけで十分か……最初にこっちA級を出しておけばよかったか……)


 まだ少人数で攻略実績があるB級境界とは違い、A級境界は10名以下で攻略されたことがない。


 この人数でも清澄ギルドの宣伝になるなと思いながら、俺を見つめる2人に笑みを返す。


「わかりました。1人で入るのは諦めます」

「ここへ来てくれているハンター全員が総がかりで攻略するのよ? 絶対に突っ走らないでね」


「え……それは……わかったよ」


 俺が入っていたレッドラインの周りには武装したハンターが50名以上集まっていた。


 この人たちが入れ代わり立ち代わりでようやく一つのレッドラインを攻略する。


(この状況で、今から3人で攻略させてくれと言う方が無理だな。ハンター協会から貰った通知書なんて意味ないじゃないか)


 1人で突入もできず、清澄ギルドの宣伝もできなくなったので、A級境界の出し損だ。


 アイテムショップで購入できる訓練用境界は危険度【C】までのものしかないため、これを無駄にしてしまったのは相当痛い。


「では、測定を始めます。レッドラインのため、通常よりも時間がかかります」


 俺とお姉ちゃんのやり取りを見て安心した夏さんがレッドラインの測定を始めた。


 お姉ちゃんはB級境界の周りにいた人たちへ2つ目のレッドラインがあることを伝えに行った。


(一応準備でもしておくか)


 みんながレッドラインへ突入する準備が整うのを待っている間、B級境界の攻略で獲得した貢献ポイントを使うためにステータス画面を開く。


【名 前】 草凪 澄人

【年 齢】 15

【神 格】 4/4

      《+1:500,000P》

【体 力】 20,000/20,000

      《+100:10,000P》↑

【魔 力】 25,000/25,000

      《+100:10,000P》↑

【攻撃力】 A《1UP:100,000P》↑

【耐久力】 A《1UP:100,000P》↑

【素早さ】 A《1UP:100,000P》↑

【知 力】 A《1UP:100,000P》↑

【幸 運】 S

【スキル】 精霊召喚(火)・メーヌ召喚

      鑑定・思考分析Ⅳ・剣術Ⅳ

      治癒Ⅳ・親和性:雷S

      親和性:剣C・天翔Ⅳ

      天翼Ⅱ・捕食・ワープ

      グラウンド・ゼロ □

【貢献P】 385,000


(神格以外は上げられるな。ステータスは全部Aにしたし、とりあえず……魔力をよく使うから知力をSにしておこう)


 知力を上げると魔力を使うスキルの威力が向上するため、10万ポイントを使用してSへ上げた。


【シークレットミッション達成】

 初めて幸運以外のステータスがSになりました

 貢献ポイントを50,000授与します


(半分返ってきた! 初めてってことは次はないよな。それに、Sより上があるなんて知らないぞ!?)


 Aにしたときはミッションを達成したという表示がでなかったため、Sが特別なものだという印象を受ける。


 そして、上げたばかりの知力を見て、好奇心が掻き立てられた。


【知 力】 S《1UP:500,000P》


 協会の判定基準にハンターの能力にS以上の判定がないため、50万ポイントを払うと知力の値がどうなるのかものすごく気になる。


 ただ、今は神格を上げるためにポイントを溜めているので、これを確かめられるのはだいぶ先の話になるだろう。


(Sの上ってなんなんだよ……待てよ、B級で10万もポイントが貰えたから、A級はもっと貰えるんじゃ……可能性はあるな)


 知力を上げることで使用したポイントが半分戻ってきたので、まだ30万ポイント以上残っている。


 B級を攻略して10万ポイントもらえたので、A級がそれ以下ということはないだろう。


(それに、アイテムボックスには境界の敵を倒した時に手に入った収集品がある。これを売るだけでも50万ポイントに届かないか?)


 仮に50万ポイントが溜まったとして、神格を5にするが先か知力をSから上げるのか迷ってしまう。


「計測が終わりました。A級境界で間違いありません。私はこれから観測センターとハンター協会へ連絡を行います」

「計測ありがとうございます。よろしくお願いします」


 腕を組んで悩んでいたら、夏さんが計測作業を終えて突入申請を始める。


(夏さんの申請が終わればA級境界へ入れる。中はどんな感じなんだろう?)


 二つ目の赤い渦巻が安定しており、誰にも聞こえないように心の中で【境界情報開示】と唱えた。


【A級境界】

 突入可能人数20名(△ ▽)

 フィールド:???

 消費体力:5/秒

 注意:3時間以内に攻略をしなければ、周囲を境界が浸食します

    ????????


(入った瞬間に境界耐性を使わないと体力がものすごい早さで削られるな。周囲を境界が浸食ってことはやっぱり……ん? なんだこれ?)


 A級境界を放置した場合のことを考えていたら、別のことが気になってしまった。

 突入可能人数の項目に見慣れない△印が表示されていた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

この話で200話目となります。

これからもよろしくお願いします。

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次の投稿は6月15日に行う予定です。

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