他校交流戦⑧~大乱闘グリフォン戦~

「ピギャアアアアアア!!」


 雷の剣はグリフォンの体に突き刺さり、断末魔のような鳴き声があがる。


(何も効かないのなら神の一太刀で薙ぎ払うつもりだったけど、これだけ多くて速いと切り漏らしがありそうだ。雷が効いて良かった)


 自分の攻撃が有効打になると分かり、神気解放を行なって身体能力の強化を行う。


 両手に雷の剣を持ち、俺へ襲いかかってくるグリフォンへ突き立てる。


 それと同時に宙へ次々と剣を出し、牽制のように周りにいるグリフォンを狙って剣を放つ。


「内側から浸食してやる!!」


 剣が有効と分かったため、捕食のスキルを付与した雷でグリフォンの体を浸食する。


 地を駆けていた数体のグリフォンがのたうち回るように転んだ。

 その隙を見逃さず、空に展開した剣で倒れたグリフォンをメッタ刺しにする。


「次だ!!」


 一瞬だけ動きを止められれば、雷の剣による集中砲火でグリフォンを倒せる

 回復薬で体力と魔力を回復する思考の余裕がなく、戦えば戦うほど追いつめられてしまう。


(グリフォンへ意識を外したら喰われる! ……ん? 喰われる・・・・?)


 数体のグリフォンが大きな口を開けて俺へ飛びかかってくる。

 鋭い牙を俺へ突き立てようとしており、一噛みで致命傷を受けそうだ。


(俺がお前たちを食べてやる!!)


 捕食でグリフォンを溶かせることはわかっていたので、全身を包むように雷を展開する。

 俺へ飛びかかってきたグリフォンをすべて雷で束縛し、俺の力へ変換してしまう。


(これなら戦い続けられる。だけど、魔力は少しマイナスだから多用はできないな)


 グリフォンを覆うほどの雷と捕食を同時に使うと、魔力を大量に消費してしまう。

 体力は回復しても、魔力が減ってしまうので、もっと効率の良い捕食方法を考える必要がある。


(それはまた今度だな。今はグリフォンを倒そう)


 捕食で体力を補いつつ、雷の剣で何十体目か数えるのもめんどうなほどグリフォンを倒す。


「今ので終わりか?」


 横たわるグリフォンから剣を抜き、周囲を見回す。

 絶命したグリフォンの体が消えたため、ここが境界内であることに確信を持つことができた。


 だいぶ減ってしまった魔力を回復薬で回復しながら、境界の探索を始める。

 雷の剣を飛散させてから、周囲を警戒していると疑問が頭をよぎる。


(それにしても【境界】ってどこなんだろう?)


 現実でもなく、異界でもない場所。

 それが俺の認識している境界の世界。


 今回見てしまった空の色のように、なにか現実的な要素があるとここが境界であることを疑ってしまう。


 境界が世界のどこにあるのか、ハンター協会にある資料やインターネットで調べても何の情報もない。


(ハンターが突入してモンスターを倒し、鉱物資源を手に入れる場所)


 今回、大量のグリフォンを相手にグラウンド・ゼロを使用しなかったのは、鉱物資源を少しでも多く確保するという目的があるためだ。


(B級境界で採掘できる鉱物は貴重なものが多いからな。グラウンド・ゼロを使わずに済んでよかった)


「メーヌ。頼むよ」


 地中に眠る貴金属を回収するためにメーヌを呼ぶ。

 瞬く間に俺の目の前に黒や黄金に輝く塊が集まるので、アイテムボックスへ収納する。


「ダマスカスとオリハルコンが埋まっているのか。まだ他にあるかな?」


 ミスリルとは比較にならない程貴重な貴金属が手に入る機会を逃さぬよう、いつもより丁寧に発掘を行う。


 貴金属の収集作業を終え、帰ろうとしたら赤い渦巻が強い光を放つ。


「誰か入ってきたのか?」


 あれだけ入らないでくれと観測センターの人へ伝えたのにも関わらず、誰かがこの境界へ突入してきたようだった。


(これじゃあ、難癖を付けられて単独攻略と認められないよな)


 世界ではB級境界を4人で攻略した人がいるという事例がある。

 この人たちが入ってこなれば、俺は初の単独攻略者として名前が残ることが確実だった。


(まあ、止められないし仕方がない)


 出てくる人との衝突事故を防ぐため、赤い渦巻から離れて待つ。

 俺がぼーっと眺めていると、続々と突入してくる。


「澄人さま!! 大丈夫ですか!!??」

「澄人!! どこにいるの!!??」


 人垣を分けながら、お姉ちゃんと夏さんが必死に俺を探そうと辺りを見回していた。


「ここにいるよ」


 2人に近づきながら声をかけると、お姉ちゃんたちだけではなく、周りにいた人たちもバッと俺の方を向いた。


「え? ……なにか?」


 急に数十の目に見つめられたが、特に気にすることなくお姉ちゃんたちへ近づく。


「もう終わったから出よう。それとも、地面を掘ってみる?」


 目を丸くしている2人に話しかけ、手で地面を掘る仕草をする。


「終わったって……夏、周辺にモンスターは?」

「私が感知できる範囲には……いません」


 夏さんが信じられないといった表情でつぶやき、他のハンターも息を呑んで俺を見てくる。


 もうこの中でやることは終わったため、俺はさっさとこの場を後にすることにした。


「ということだから、俺は出るね。あとは好きにしてください」

「ちょっと澄人!! 待ちなさい!!」


 突入してきたハンター全員へ届くように声を出し、俺は境界から脱出した。


【ミッション達成】

 B級境界をクリアしました

 貢献ポイントを授与します


 前座・・を終え、突入していたレッドラインから少し離れて休憩を取る。

アイテムボックスで回復薬を使用していたら、後ろから肩を思いっきりつかまれた。


「澄人! 待ちなさい!!」

「お姉ちゃん……」


 そうだよなと思いながら振り向き、泣きそうな顔になっているお姉ちゃんや夏さんと目が合う。

 心苦しさを感じつつも、これから行う本番・・に向けて気を緩めない。


「説教は終わった後に必ず聞くから、待っていてくれない?」

「終わった後って、もうレッドラインには入ったでしょ!?」


 お姉ちゃんが初めて俺が境界に入った時のように涙ながらに訴えてくる。

 ごめんと言いつつ、アイテムボックスを開いて【A級境界解放】を実行した。


 すると、再び赤色の線が宙を漂い始め、レッドラインの形成が始まる。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次の投稿は6月12日に行う予定です。

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