第5章~ライコ大陸の謎~
夏休みに向けて①~期末テスト終了~
新しい章になります。
よろしくお願いします。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「メーヌ!! すべてを呑み込め!!」
魔力を余すことなくメーヌへ注ぐと、目の前に広がる草原の大地が大きくうねった。
波のようにうねる緑色の大地がフィールドに存在するモンスターへ襲いかかり、俺以外の存在すべてを巻き込む。
揺れが収まると耕されたように暗い紫色の土が盛り上がっており、ここが現実世界とは全く違う場所であることを再認識する。
「この場所の土は……紫色? なのか……まだ試練は続くのか?」
期末テストでまた1位になったため、また先生に頼んで異界へ連れてきてもらっていた。
今回は草原の鍵を使用しており、【草原の試練】の最中だ。
周囲からモンスターがいなくなり、辺りの様子をうかがっていると青い画面が表示された。
【草原の試練-最終WAVE】
最後のモンスター群になります
1時間以内に倒してください
その表示が出た直後、今まで明るかった草原のフィールドが薄暗くなり始める。
薄い緑色の空が徐々に暗くなり、最終WAVEが始まっているのだと認識した。
何が起こるのかわからないため、雷による周囲探索を行おうとしたら、空や大地が黒に染まっていく。
俺を覆うように展開された黒い壁は全方位に張り巡らされていた。
現れた黒い【もの】がうごめいているような気がして、目を凝らすと俺は即座にアイテムショップを表示させる。
(早く回復を!! あの量は不味い!!)
俺を中心にあらゆる方向からモンスターが迫ってきており、魔力を使い切った状態では対処ができない。
アイテムボックス内にある【期間限定】の欄を表示した。
【アイテムショップ《期間限定》】
体力回復薬(大)――即時消費0P
魔力回復薬(大)――即時消費0P
神格が4になったときに境界突入時にアイテムが使い放題という特典が使えるようになり、今回の試練で適応した。
その結果、このように回復薬が0Pで使用できるようになっているため、俺は次のことなど考えず魔力を全力で使っている。
(この量と広さ……ようやく【あの】スキルを使う時が来たな!!)
魔力が使い放題の今しか【グラウンド・ゼロ】を使う機会がない。
限界消費量が5万と重く、広範囲に及ぶ威力ということで、境界や異界で全く使うことがなかった。
(使ってみよう。)
初めてグラウンド・ゼロを使用すると手のひらが白く光り、魔力を際限なく吸い込もうとしている。
体から力が抜けていく感覚と共に、こんなことになるスキルを発動すればどうなるのか楽しみになってきた。
「止まるまで貯めてやる!!」
自分の魔力を思いっきり注ぎ込むと同時に、アイテムショップで魔力回復薬の購入ボタンを連打する。
白い光が少しずつ赤みを増し、数秒後には赤い輝きをほとばしった。
今にも爆発しそうな赤い光は魔力を求め無くなり、俺が許可するのを待っているように思えた。
俺を囲う黒い壁はこちらへ近づいてきており、物量差で確実にこちらを殺しに来ている。
その壁を一部でも削るべく、俺は右手を正面に構えて手首を左手でつかむ。
「標的はあの【黒い壁】だ! グラウンド・ゼロ!!」
しかし、右手から放たれると思っていた赤い光は俺から離れようとせず、そのまま大きく膨らみ始めた。
ミサイルのように発射されると思っていたので、予想外の展開に戸惑いを隠せない。
「ちょっと待って!? 使っている俺はどうなるの!?」
広範囲の魔法がこの場で発動すれば、確実に俺は巻き込まれてしまう。
慌てて赤い光を自分の右手から離そうと、腕をぶんぶんと振っても全く意味がなかった。
「発動停止もできないし……5万の魔力を使うスキルか……痛いだろうな……」
ダメージを受けても常時回復を行って、死なないように準備をする。
赤い光をほとばしり、バチバチと弾けるような音が聞こえてきた。
「うぉっ!?」
突如、右手の光が頭上へ浮遊し、俺の周囲1メートルほどを透明な膜のようなものが包み込むように展開される。
――チュドーン!
炸裂音と共に光が爆発して、赤い閃光が辺り一面に広がった。
あまりのまばゆい光に、目を閉じて顔を守るように両腕で覆う。
(何も……痛くない?)
衝撃や痛みを何も感じないため、腕を降ろしながら目を開けた。
すると、自分の見ている光景が先ほどまでとは一変してしまい、どこか別の土地に飛ばされたと思ってしまう。
「なんだよこれ……こんな何もないフィールドじゃなかっただろ……それに……俺の体が浮いている?」
紫色の土や足元の大地が見渡す限り消え去り、俺を中心に黒くへこんでいた。
俺の体は膜に守られるように浮遊しており、爆心地へ静かに降り立つ。
「グラウンド・ゼロ……大地を含めて自分の周囲をなかったことにするスキルなのか?」
この焼け焦げた大地がグラウンド・ゼロの効果とするなら、自分ひとり以外の時には確実に使用することができない。
四方を壁のように囲んでいたモンスターもすべて消え、見えなくなっていた薄緑色の空が現れていた。
【草原の試練終了】
草原の試練-最終WAVEを突破しました
全ての試練を突破したため試練を終了します
俺が空を眺めていたら試練が終わり、青い境界が生まれる。
山の試練が終了する時と同じ、異界へ戻れる渦だと思われるので、足を進めた。
【草原の試練突破】
時間内に草原の試練を突破しました
功績に応じて貢献ポイントを授与します
《草原の試練1突破》:5000P
《草原の試練2突破》:10000P
《草原の試練3突破》:20000P
《草原の試練4突破》:50000P
《草原の最終WAVE突破》:100000P
【草原の試練全試練突破】
草原の全試練を突破しました
《青き草原の鍵》を授与します
今回も境界に入った瞬間、高速で結果が表示されてしまい、まったく目で追えない。
異界に降り立ってゆっくりとログを確認しようとしたら、背後から声が聞こえてきた。
「澄人、もう終わったのか!?」
「はい、今回は早く終わりました」
大剣を肩に構えた平義先生が驚くようにこちらを見ており、結果のログを見る前に次の目標を口にした。
「なので、次は異界の調査を行いたいと思います」
「調査……だと?」
先生の背後から来ていたサイのようなモンスターを感電させてから、異界の地図を表示する。
地図の片隅には異界ミッションが小さく出ており、後どれくらい調査に時間を使えるのか気にしてしまった。
【異界ミッション4:ライコ大陸を出よ】
成功報酬:スキル:《ワープ》の授与
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ご覧いただきありがとうございました。
次の投稿は2月26日に行う予定です。
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