襲撃事件収束⑤~聖奈への感謝~

「今まで聖奈が支えてくれて、本当に感謝してる……ありがとう」


 両手で手を包み、寝顔を装っている聖奈へ語り掛ける。

 思考分析でも【驚愕】となっているので、聖奈を驚かすという作戦は成功した。


 これから畳みかけるように、前から抱いていた感謝の気持ちをひたすら囁く。


(掃除中やここに来るまでの間に考えていた内容は1時間あっても足りない!)


 話を途切れさせることなく続け、どこで聖奈が我慢できなくなるのか楽しみになってきた。


「俺が離れに住み始めた時から聖奈は俺へ仕送りをしてくれていたお礼をまったく言わせてくれないから――」


 仕送りをしてくれていたお礼を面と向かって伝えようとすると、聖奈は逃げてしまうので、動けない今なら聞いてくれる。

 テストの結果を見て仕送り額を上げてくれたことや、何不自由なく俺が生活できていた謝意を述べた。


「メモ帳もこまめに見てくれていたんだよな。毎回返事を書いてくれてありがとう」


 メモ帳では事務的な連絡しか行っていなかったが、俺が書いたことに対して必ず聖奈は返事をくれていた。

 些細なことを書いて怒られたこともあり、今思えば聖奈にそんなことへ返信をする余裕がなかったことがわかる。


「ちょうどあの時はお金が必要な時で、聖奈がどうにかしようと金策をしてくれていたんだね……本当に助かったよ」


 1度このように聖奈への感謝を口にしたら、今までのことが溢れるようにどんどん出てきた。

 言い続けているうちに18時を過ぎてしまい、夕ご飯を告げる院内放送が聞こえてくる。


 ずっと回っていた口を止めて、一呼吸置いてから聖奈の頭を撫でた。


「それじゃあ、聖奈また来るから、今度は起きてくれていると嬉しいな」


 聖奈の布団をかけ直してから足の上を軽く叩き、声をかける。


「またね、聖奈。早く元気になるんだよ」


 部屋を退室してから、喋りっぱなしで喉が渇いたことに気付き、病院の外にある自販機で缶ジュースを買う。

 ベンチに座り、病院に入る前に電源を切っていたスマホを起動させた。


「ん? なんだ?」


 するとすぐにスマホが震え、数件のメッセージを受信したので、ジュースを置いて画面を見つめる。


【水守真友:聖奈は元気だったわ。澄人くんを驚かすって息巻いていたから、気を付けてね】

【お姉ちゃん:病院にいるの? さっきお医者様から連絡があって、聖奈が話をできるようになったみたいよ】


(ふむ……)


 ジュースを飲んでから返信を行おうとしたら、新たなメッセージを受信した。


【聖奈:お兄ちゃん心配をかけてごめんね。体を動かせるようになりました。夜、電話してもいい?】


 メッセージと同時に土下座して謝罪するようなキャラクターの画像も送られてきており、必死さが伝わってきた。

 思わずにやけてしまったので、聖奈を不安にさせないようにメッセージを打ち込む。


【大丈夫だよ。20時頃連絡する】

【聖奈:ありがとう!! お兄ちゃん大好き!!】

【ありがとう、ゆっくり休めよ】

【うん!!】


 聖奈のメッセージを読んだ後に真由さんとお姉ちゃんへ返信を行い、ジュースを飲み干す。

 缶を捨ててから日が落ちた空を見上げる。


(まだ暑いな……帰る気分でもないし、ちょっと貢献ポイントをどう使うか考えるか……」


 俺は病院の敷地を出て、行く当てもなく街を彷徨い始めた。

 街は夜の喧騒がいたるところから耳へ入ってくる。


 そんなものを気にすることなく、俺は自分自身のステータスへ目を向けた。


【神 格】 3/3

      《+1:200000P》↑

【体 力】 11000/11000

      《+100:10000P》↑

【魔 力】 12500/12500

      《+100:10000P》↑

【攻撃力】 B《1UP:40000P》↑

【耐久力】 B《1UP:40000P》↑

【素早さ】 B《1UP:40000P》↑

【知 力】 A《1UP:100000P》↑

【幸 運】 B《1UP:40000P》↑

【スキル】 精霊召喚(火)・メーヌ召喚

      鑑定・思考分析Ⅱ・剣術Ⅱ

      治癒Ⅲ・親和性:雷S

      親和性:剣E・天翔Ⅲ

      グラウンド・ゼロ □

【貢献P】 240000


 貢献ポイントをどう使用するか悩んでしまい、ステータスは襲撃事件の後から何も変わっていない。

 これを解決しなければ家に帰っても勉強に集中できないと思い、このような時間を作った。


(貢献ポイントが20万以上溜まっているから、神格を4にして……後は、幸運を上げようかな)


 モンスターを倒した時に一定確率で収集物が手に入る【幸運】はCからBに上げた時、飛躍的にその効果を実感することが出来た。

 その幸運値をBからAに上げたらどのようなことになるのか楽しみでもある。


(ただな……今はモンスターを倒しにいけないからな……それなら新しいスキルを取得か?)


 スキルの項目に目を移して、一番下の文字を見たまま再び考え込んでしまった。


(グラウンド・ゼロを習得してから1度も使っていない……このまま新しいスキルを習得しても使わなかったら無駄だもんな)


 山の試練で獲得したS級スキル【グラウンド・ゼロ】。

 使用しないのにはスキルそのものに理由があり、使用条件としての知力S以上や、効果が【広範囲の炎魔法】なため、使う場面がなかった。


(アイテムとするなら、後1万ポイント溜めて水の鍵を購入もありだな)


 人が多くなってきた夜の街を散策するのも飽きたので、適当なベンチに座る。

 アイテムボックスも表示させ、中に入っている【草原の鍵】へ目を移す。


(これも使わないと……テスト後に異界へ入れるようになるからそれからだ)


 俺は悩んだ結果、神格だけを上げることにした

 残りはテスト後に必要になったら使うことにしたため、もう今悩むことはない。


(よし! 帰って勉強するか!)


 勢い良くベンチから立ち上がり、帰路につく。

 ステータスのことが片付いたので、明日からのテストに向けて余念はない。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ご覧いただきありがとうございました。

次の投稿は2月24日に行う予定です。

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