異界と鍵⑪~土の精霊契約~
ここにはなにがあるのか探索してみたいと思い、一歩目を踏み出そうとしたら足元は土の地面で小さな石がいたるところに落ちている。
足を動かすと踏んだ感触がないにもかかわらず前に進み、不思議な感覚になった。
そんなことよりも、周りに落ちていた石だと思っていたモノを見て一瞬足が止まる。
(他にもこの子と同じような土の精霊が……寝ているのか?)
歩いている俺の周りをふよふよと漂っている土の精霊よりも少し小さな精霊が地面に転がっており、ピクリとも動かない。
踏まないように注意しながら足の踏み場を探して進んでいたら、大量に精霊が寝ている場所が見えてきた。
「なんだここ……」
「ここは僕たちが契約されるのを待つ場所なんだよ」
数十体の寝ている精霊を見ながら呟くと、俺の正面に静止して土の小人が答えてくれた。
精霊が待つというのは寝ているだけなのかと思うほど誰も動いていない。
すると、精霊が集団で寝ている場所の中心から淡い茶色の光が漏れ始める。
「あれが僕たちと契約しようとしてくれている人が送ってくれている魔力なんだけど……」
土の精霊の悲しそうな声が聞こえるとその光はすぐに輝きを失い、何事もなかったかのように誰も反応しない。
俺から離れた土の小人は俺の親指ほどしかない手を振り、進むようにこっちへ来てと言っている。
「さっきの光で起きた精霊が力を貸すために契約をできるんだけど……僕が知っている限り数十年は誰もできていなかったんだ」
「そんな長い間できないのか……あれ? 俺は契約できているの?」
俺は精霊と契約をしようとする儀式のようなものをした覚えがなく、ただミッション達成の報酬として土の精霊を使役できるようになっただけだ。
契約と改めて言われてしまったらそれを行った自信がなく、土の精霊も悩むようにうなる。
「うーん……それがこうして僕が話をできているから繋がってはいるんだけど、いきなり結ばされたから、よくわからないことになっているんだよね」
「繋がっているということは、俺に力を貸してくれていたのは
戦闘や素材回収で頼りにしている土の精霊がこの子だと思うと、感謝をいくら伝えても足りない。
しかし、精霊は土でできた腕を組み、困るように首をかしげた。
「今は僕でもあり、僕じゃないかな。見れば分かると思うから、いつもみたいに僕たちを使ってみてくれる?」
曖昧な返事をされて困ったが、右手に魔力を込めて土の精霊を呼ぼうとした。
すると、俺の目の前に先ほどとは比べ物にならないほど輝く光の柱が現れて、地面に寝ていた精霊たちが次々と目を覚ます。
「今度は僕の番!!」
「私よ!! あんたは前に行ったでしょう!!」
「俺に行かせろ!! お前たちよりも活躍してくるんだ!!」
魔力に反応していた精霊は俺のことが見えていないのか、遠くにいた子も光に向かって進んでいた。
光に群がるように精霊が喧嘩を始めて、どうすればいいのか横にいる精霊へ顔を向ける。
「そのまま使わなければ大丈夫だよ」
俺の耳元に近づいてくれた精霊のささやくような声に従い、そのまま魔力を飛散させた。
その瞬間、消えていく光を悲しそうに眺めた精霊たちは、地面に転がって再び眠りにつく。
喧騒が一瞬にして収まり、俺が精霊を呼ぶたびにこんなことが起きているのかと思うと、驚きを隠せない。
それが伝わったのか、案内をしてくれている土の精霊が俺の肩に乗る。
「今みたいに僕が仲介してここへ魔力を送っているんだ。だから、他の子も澄人の力になってくれているよ」
「仲介ってことは、魔力が伝わりきれていないの?」
「そうだね。今の状態だとどうしても魔力を余計に消費して、力を使える範囲も小さくなるかな」
山の試練で俺が呆れるくらい活躍してくれた土の精霊だったが、今以上に効率が良くなる方法があるような口ぶりだった。
ここに来なければそんなことを知ることができなかっただろう。
(こんなにはっきりとしているってことは、これは夢じゃないのか? それなら、なんで俺の体はこんなことに?)
夢でなければ俺は部室の横にある部屋で寝ていたはずなので、いきなりここへ来たことになる。
そんなことを考えていたら、土の精霊が俺の頬を軽く突いてきた。
「だから、澄人。僕と契約をしてくれない?」
「そうすれば直接きみに魔力が届くようになって、できることも増えるってこと?」
「そうそう。流石澄人だね! 話が早い!」
嬉しそうな声を上げる精霊だったが、足元で眠る子たちが不憫に思えてくる。
全員が自ら進んで力を貸してくれようとしているのに、放置されてかわいそうという感情が生まれた。
「安心して、僕がこの子たちを取り込むから、みんなで澄人の力になるよ」
足元を見ていた俺を慰めるように精霊が頭をなでてくれている。
「見ていて」
そう言いながら精霊が地面に降り立つと、茶色の光が辺り一面に広がった。
あまりにもまぶしいため、目を閉じて光が収まるのを待つ。
「終わったよ。これでみんなが僕になったんだ」
声が聞こえたので目を開けると、一回り大きくなった精霊が満足そうに俺のことを見ている。
それと同時に足元から白い光の玉が発生して、徐々に体が消えそうになってしまう。
「時間みたいだね。澄人、最後に僕へ名前を付けてよ」
俺の体が消えることを気にせず、精霊が俺の胸に飛び込んできたので反射的に抱きかかえた。
「名前?」
「うん、それで契約が完了するから、次に呼ぶときは名前で呼んでくれると嬉しいな」
笑顔で俺のことを見上げている精霊をなでていたら、ふと頭の片隅にこの子の名前が浮かんでくる。
「【メーヌ】……それがきみの名前だ」
「ありがとう澄人!! 僕はメーヌ!! 一生澄人の力になるよ!!」
精霊が喜んで俺の胸から飛び出し、歓喜の声を上げながら周辺を飛び始める。
飛び回っているメーヌを見ていたら視界が白くなり、首から下が無くなっていた。
先ほど、時間がきたとメーヌが言っていたので、おそらくこの空間にいられる時間が終わったのだろう。
「澄人、またね」
「ああ、これからよろしく」
俺が消えかける直前にメーヌが手を振りながら見送ってくれたので、笑顔で返事をした。
――ピピピッピピピッ
目覚ましの音で目が覚め、体を起こしてから自分の手を見る。
「俺の手だ……光っていない……あれは夢だったのか?」
精霊契約の間でのことやメーヌの会話をはっきりと覚えている。
俺が白い体になって体験したことが現実だったと、ステータスを見て確信することができた。
【名 前】 草凪澄人
【年 齢】 15
【神 格】 3/3
《+1:200000P》
【体 力】 11000/11000
《+100:10000P》↑
【魔 力】 12500/12500
《+100:10000P》↑
【攻撃力】 B《1UP:40000P》
【耐久力】 B《1UP:40000P》
【素早さ】 B《1UP:40000P》
【知 力】 A《1UP:100000P》
【幸 運】 B《1UP:40000P》
【スキル】 精霊召喚(火)・メーヌ召喚
鑑定・思考分析Ⅱ・剣術Ⅱ
治癒Ⅱ・親和性:雷S
親和性:剣E・天翔Ⅱ
グラウンド・ゼロ □
【貢献P】 30000
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