異界と鍵⑧~4つの山~

 2つ目の山から与えられた試練は1つ目の山と同様に、下から上へ登るというだけのもの。

 しかし、最初と違うのは階段のようなものはなく、壁の側面に円状の板が10メートル間隔でいたる所についている内部構造になっていた。


 本来はロッククライミングのように登り続けるという試練だと思われるが、大地の精霊を使役できる俺にとっては最初の試練とあまりやることが変わらない。

 今回は下からマグマも迫ってこないので、時間を削るという自分との闘いをした。


 3つ目の山は迷路のように道が入り乱れており、上や下に進みながら頂上を目指すものだった。


 最初こそ雷の察知能力を使って慎重に進んでいたが、入ってから数分で大地の精霊による壁の貫通及び、道の作成で難なく終わらせることができた。


(またここか)


 4回目のスタート地点に着くと、最後に残っている4つ目の山への洞窟が口を開けて待っていた。

 これまで全部、大地の精霊を使って早く攻略できたため、まだ16時間も残っている。


(最後も大地の精霊用に魔力を溜めておくか)


 右手に魔力を込めながら4つ目の洞窟へ入ると、試練の内容を知らせる青い画面が表示された。


【山の試練4】

 頂上にたどり着きなさい


 洞窟の中は広い空間になっており、側面にあるいくつもの石が白い光を放っていた。

 光る石が珍しいので手に取るために近づこうとしたら、雷が俺以外に動くものを察知する。


(なんだ? 小さい反応だけど……)


 広場のような場所の中央に小型の動物みたいな姿が見え、俺に向かって走ってきていた。

 ギャギャっという声とともに、緑色の子鬼のようなモンスターが棍棒を振り上げながらこちらへ来ている。


(ゴブリン? どうして1匹だけなんだ?)


 ゴブリンが1匹だけしかいない異様な光景に、他にモンスターが隠れていないか必死に雷で察知しようとしたが、ここにはおらず、天井の上に反応があった。

 特に上へ行く入口等が無いため、どうやって上へ行くのか、ゴブリンを火の精霊で焼却しながら考える。


(倒したけど……特になにも……ん?)


 ゴブリンが消滅するとほぼ同時に一部の側面が動き始め、階段が現れた。

 側面の奥まで察知を使用していなかったので階段があることが分からなかったが、おそらくこの後もモンスターとひたすら戦いながら上を目指す試練なのだろう。


(うーん……側面を大地の精霊で掘って、モンスターを無視できるか?)


 いつの間にか山の試練の抜け穴を探そうとしていることに気付き、頭を何度か振って考えを改める。

 モンスターを倒さなかったら試練失敗と判断される可能性もあるため、すべてのモンスターを倒す方向で攻略を進めることにした。


(……でも、何体いるか分からない相手を1体1体相手にしていたら時間が足りないかもしれない)


 上の階にいるモンスターがピクリとも動かないことと、さらにその上が同じ構造になっていることを確認してから、俺はアイテムボックスを表示させた。

 中に入っている草薙の剣の待機時間が【0】になっていると表示されていたので、ボックス内から剣を取り出す。


(この中央にいるモンスターを神の一太刀で切る)


 上の階が頂上まで同じような構造だということを願い、草薙の剣を解放する。

 金色に光り輝く剣を上の階層にいるモンスターに向かって振り上げ、頂上まで貫通するべく神の一太刀を発動させた。


「ぽっかりと縦穴が開いたな」


 下から神の一太刀によって開けられた穴を見上げると、異界と同じような空が顔を覗かせている。

 とりあえず、頂上までは貫通されているのがわかったので、近くの階段を上がり、次のフロアへ進む。


(もう次が開いている。モンスターがいないからか)


 次もその次もモンスターが消滅しており、上への階段が現れていた。

 モンスターがいないことを確認してからフロアを進み、階段を登ること数時間。


 結局、神の一太刀ですべてのモンスターを倒してしまい、最初のゴブリンとしか戦わずに済んだ。


(頂上に着いちゃったよ。これで終わりか?)


 他の山々を見下ろせる一番高い山の頂上に立ち、次に何が起こるのか待つ。

 その間、遠くの方に目を向けても、森しかないようにしか見えない。


【山の試練達成】

 山の試練4を達成しました

 全ての試練を突破したため試練を終了します

《残り時間 12:25》


 今までとは違い、終わりを告げる画面が表示されてから青い境界が生まれている。

 境界が安定したので、体を滑り込ますと多数の画面が俺の前に現れた。


【山の試練突破】

 山の試練を突破しました

 功績と残り時間に応じて報酬を授与します


《山の試練1突破》:1時間加算

《山の試練2突破》:3時間加算

《山の試練3突破》:9時間加算

《山の試練4突破》:12時間加算


 合計37:25


 30時間を超えたため、最高ランクの報酬となります

 S級スキル【グラウンド・ゼロ】を授与します


【山の試練全試練突破】

 4つの山すべてを突破しました

 大地の精霊と契約ができます

《精霊契約の間(大地)への入場が許可されました》


【シークレットミッション達成】

 初めて試練を突破しました

《平原の鍵》を授与します


【異界ミッション3達成】

 地図機能を解禁します


【異界ミッション4の解放まで 29日 23:59】


 短い時間ですべて表示され、あまりの早さに目が追いつかなかった。

 スキルと鍵を手に入れたような文字が見えたので、ステータスとアイテムボックスを確認しようとしたら、背後から足音が聞こえてくる。


「澄人か!? 戻ってきたんだな!!」


 後ろを振り返ると、心配そうな顔をした平義先生がこちらへ駆け寄ってきた。

 先生はハンタースーツに血のようなもの浴びていて、その後ろにはモンスターの山が見える。


「先生、モンスターを狩っていたんですか?」

「ん? 待っている間暇でな、少し運動をしていた」


 少しと言うにはだいぶ量があるように見えるが、あえて口にはしない。

 ちらりと時間を見たら、山の試練を12時間ほど行っていたので、夜の9時近くになってしまっていた。


 さすがに遅くなりすぎているので、今日獲得したものの確認は後日行うことにする。


「俺のせいで遅くなって申し訳ありません。帰りましょう」

「そうだな……澄人、頼みがあるんだが……」


 平義先生がモンスターの山を見ながら俺へ頼みごとをしようとしていたため、アイテムボックスを開いてから返事をした。


「モンスターの運搬ですよね? 大丈夫ですよ」

「助かる」


 平義先生が倒したモンスターをアイテムボックスへ入れていたら、いつの間にか《平原の鍵》が入っていることに気が付く。

 次は平原と言う場所を探さなくてはいけないと考えていたら、見たことのない緑色の画面が表示された。


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