異界と鍵②~神気解放~

「お兄ちゃん……光っているよね?」


 聖奈が確認をするように真さんへ聞いており、2人とも俺の体から目を離さない。


「神気解放……ですか?」

「そうだよ。今は境界内でしか使えないみたいだけど」


 目を凝らしている真さんは看破を使ったのか、スキル名を言い当ててきた。

 ただ、看破を使っても効果まではわからないため、説明をしながら歩き出す。


「草薙の剣で新しく使えるようになったスキルで、身体能力が上がるみたい。さっきは動いてそれを確かめていたんだよ」

「バフ効果のスキル!? それって他人にも使える?」

「わかんないけど、やってみるよ」


 歩きながら聖奈が妙に興味を持って聞いてくるため、草薙の剣を取り出して聖奈を対象にして神気解放を使用する。


 【神気解放使用中】

 さらに時間を使用しますか?

 《0時0分》


 しかし、追加で時間を使わせようとする画面が表示されたため、俺以外には使えないようだ。

 首を振りながら剣をアイテムボックスへ戻すが、それでも聖奈は満足そうにうなずいている。


「強化スキルはどんなものでもB級以上のスキルで貴重だから、それでもすごいよ! ね、真!」

「う、うん……私も覚えられるといいな……」

「覚えられるよ! 次へ行こう!!」


 聖奈が満面の笑みで真さんの手を引っ張りながら境界を出て行った。

 俺も後に続いて境界を出たら、聖奈が嬉しそうにお姉ちゃんへ話しかけている。


「お兄ちゃんがバフスキルを習得したみたいです!」

「本当!? 効果は?」

「それは……」


 効果までは詳しく説明してなかったので、お姉ちゃんたちに近づきながら確認したことと使用条件を伝える。


「時間が代償? なんか聞いたことがあるんだけど……どこだったかしら……」


 時間を使用して行うスキルについては前例があるらしく、お姉ちゃんが頭を抱えて悩み始めた。

 答えが出ずにいると、いつの間にかいなくなっていた真さんが機材を抱えて夏さんと一緒にこちらへやってくる。


「準備が整いました」

「流石に2人だと早いわね……澄人お願いできる?」


 お姉ちゃんは考えるのを止めて、次の境界を探すように俺へ頼んできたため、集中して直感を働かせようとした。

 ただ、今回遠征で来ている森林も境界が発生しやすいのか、あまり間を置かずに複数の境界を察知する。


「3ヵ所くらいあります。急ぎましょうか」

「そうね! 真、走れる?」

「はい!」


 お姉ちゃんから心配されている真さんは力強くうなずいていおり、夏さんが冷静にその様子を見ていた。

 3ヵ所目の境界の計測を行っている夏さんの手が空いたタイミングで、真さんのことを質問してみる。


「夏さん、真さんはどうですか?」

「まだ神格が2でこれから鍛えないと境界内で戦うのは厳しいですね。どんな素質があるのか分かればやりやすいんですが……」


 危険度を測定している夏さんが手を止めて答えてくれており、育成方法について悩んでいるらしい。


(夏さんが困っているから、俺に手伝えればいいんだけど……)


 水の家の人でも計測に偏って支援がまるでできない人もいるが、真さんの場合は鑑定と看破という2つのスキルを使用できるため、察知系のスキルが覚えやすいと思っていた。


 だが、境界内のモンスターを察知する能力が開花する予兆はなく、回復などの支援のスキルも覚えられなかった。


(傾向があるらしいけど、真さんがどの水の家の人にも当てはまらないから、今は神格を上げることに専念している)


 最後の計測が終わり、結果がEランクだったので競売にかけることになった。

 夏さんがタブレットを持ち出し、素早く操作をするとすぐに登録が終わる。


「今日だけで10件以上の境界を競売にかけました。8件が落札済みですよ!」


 2件は今登録したばかりの境界なので、落札されるまでには最長1時間かかる。

 一仕事終えた夏さんが機材の片付けを行い、お姉ちゃんたちが突入している境界に向かう。


 お姉ちゃんだけ先に境界から出ており、俺と夏さんを見て軽く手を振ってきた。



「この境界は中がジャングルだから、たぶん植物が多いわよ」

「わかった、種類ごとに採取してまとめるよ」


 俺が境界へ入ろうとすると、お姉ちゃんが荷物を置いている夏さんへ笑顔で話しかけている。


「大地の精霊のおかげでツルや草を一本一本見なくて良くなったから、澄人さまさまね」

「本当にそうですね。あの作業が無いだけで攻略効率が段違いです」


 2人がいってらっしゃいと見送ってくれたので、運搬をお願いしますと言いながら境界へ突入した。

 ジャングルの境界からは、回復薬の材料である薬草や魔力を帯びた木材などを発見し、無事に搬出を終えた。


 今日の突入はこれで終わりになり、車に乗って麓の宿へ戻っている時、俺の横に座っている真さんがうつらうつらとしている。

 しばらくしてうつむくように寝てしまい、起こそうか迷っていると夏さんが声をかけてきた。


「澄人様、彼女は気を張っていたみたいなので、寝かせてあげてください」


 俺とは反対側に座る聖奈が気を使い、自分の膝に真さんの頭を乗せると寝息を立てて寝入ってしまった。

 聖奈がお疲れ様と言いながら頭を撫でても起きず、相当疲労していることがわかる。


「明日も同じペースで境界へ入るつもり?」


 真さんを今日と同じように境界へ突入させたら、途中で倒れるかもしれない。

 俺の考えていることがわかっているのか、お姉ちゃんがいいえと首を振る。


「明日は1つの境界内で、じっくり彼女のスキルが発現するように色々試すつもりよ」

「回復も支援も使えなさそうなんだよね?」


 お姉ちゃんがそうよとうなずいて無言になるので、まだどうするのか決まっていないようだ。

 俺も草の系統だが、何も自発的にスキルを覚えないと師匠に言われたため、貢献ポイントが無ければ今のように戦うことは困難だ。


(聖奈は攻撃に特化していて、お姉ちゃんは敵を引き付ける盾役、夏さんは支援ってはっきりわかっているだけどな……)


 この3人に囲まれると、俺は精霊を使える便利屋になってしまう。

 画面で自由にステータスを上昇できるので、俺は万能型として能力を成長させていくつもりだ。


(うーん……ここから何を上げようかな……やっぱり神格を上げて、新しい機能の解放を目指すか?)


 満遍なく上げたステータスを見ながら、次の使い道について考える。


【名 前】 草凪澄人

【年 齢】 15

【神 格】 3/3《+1:200000P》

【体 力】 11000/11000《+100:10000P》↑

【魔 力】 12500/12500《+100:10000P》↑

【攻撃力】 B《1UP:40000P》

【耐久力】 B《1UP:40000P》

【素早さ】 B《1UP:40000P》

【知 力】 A《1UP:100000P》

【幸 運】 B《1UP:40000P》

【スキル】 精霊召喚(火・土)・鑑定・思考分析Ⅱ・剣術Ⅱ・治癒Ⅱ

      親和性:雷S・親和性:剣E・天翔Ⅱ □

【貢献P】 35000


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