第4章~境界と異界~
異界と鍵①~清澄ギルド新加入者~
「お兄ちゃん!! ここはモンスター異常発生する境界みたい!! どんどん奥から溢れてくるよ!!」
聖奈が【真さん】を抱えながら全力で走り、地面に空いた巨大な穴から出ようとしていた。
「火の精霊よ!」
視界を確保するために火を走らせると、思わず声が漏れてしまう。
奥からはモンスターが密集して侵攻しており、波のように押し寄せてきている。
「聖奈!! 精霊で穴を狭める! 注意しろよ!!」
「わかった!! 真!! 口を開けないでね!!」
魔力を集め、大地の精霊で大きな穴を縦長に狭めると、聖奈と真さんが穴から出てくれた。
「俺の後ろへ!!」
草薙の剣を取り出し、穴から出ようとしてくるモンスターへ向かって神の一撃を振う。
「神の一太刀!!」
黄金の光をまき散らしながら剣を振い、大量に存在していたモンスターが跡形もなく消え去った。
穴に出現したモンスターを倒してから、雷で別のモンスターの気配を探るが引っかからない。
(やばい……もういないぞ……)
真さんの神格を上昇させるために入った境界でこのようなことが起こってしまったため、剣を片付けてから申し訳ないと思いながら一声かける。
「真さん、次の境界はランクの低いものにしましょうか?」
「つ、次? 今日、これで4ヵ所目だけど……」
肩で息をしている真さんは顔に疲労を浮かばせていたので、回復薬を取り出す。
「資源運搬は俺と聖奈に任せて、真さんはこれを飲んで休んでいてください」
「……ありがとう」
真さんがおいしくない回復薬を両手で受け取ってくれた後、大地の精霊でこの境界に存在する貴金属を回収する。
危険度Dの境界だったのでアダマンタイトとミスリルが混在しており、持ちやすいようにいくつかの塊にして境界の外へ搬出を行う。
この作業をしながら横目で休んでいる【真さん】を見て、彼女がギルドの一員になった経緯を思い出す。
(清澄ギルドとは別に、観測センターとしての機能を担えることになったから、人を増やさないといけなくなったんだよな)
ハンターギルドが観測センターの役割を担うためには、最低5人のギルドメンバーが必要になる。
これはギルドの規定にも書いてあり、ほとんどの場合人数が足りないということは起こらない。
(ただ、うちは4人しかいなかったから、1人追加しないと観測センターの機能がもらえないっていう問題が発生した)
その問題を解決するために【元】水鏡さんが清澄ギルドへ加入することになった。
加入する際、観測センターに水鏡がいると目立つため、本人の希望もあり苗字を捨てて母親の姓である【水守】に名前が変更された。
(水守さんがクラスの中で2人になったから、両方とも名前で呼ぶことにしたんだよな……)
初めて真友さんと呼んだ時に驚かれて、お互い硬直したことが脳裏に浮かんだので、頭を振って忘れようとした。
「お兄ちゃんどうしたの?」
聖奈がミスリルの塊を持ちながら不思議そうに俺のことを見ており、振っていた頭を止める。
まじまじと見られて恥ずかしくなったため、ごまかすように咳払いをしてから足元にあるアダマンタイトの塊を持ち上げた。
「なんでもない……これで終わりかな?」
「終わりだと思うよ。これを運んだら真を呼んでくるね」
「ああ、頼むよ」
資源を境界の外へ投げ入れてから、聖奈たちが来るのを座って待つことにした。
草薙の剣を使ってしまったため、次に使えるのは3日後だと思いながらアイテムボックスを見ると【!】が表示されている。
(なんだこれ? 初めて見るぞ!?)
剣の欄に目立つように赤く【!】が点滅しており、注視していると別の画面が現れる。
【お知らせ】
草薙の剣を一定回数使用したため、以下のように変更になります
・スキル【神の一太刀】のクールタイム減少(3日⇒1日)
・新スキル【
(草薙の剣も使い続けたら成長したんだ)
習得しているスキルの中で、天翔が1番使い易く成長が早い。
これと同じように他のスキルも使い続けることで別のスキルになると思い、積極的に使用していたら草薙の剣も成長してくれた。
【草薙の剣】:SSS級
特性:不壊(壊れることはない)・契約者のみ装備可能
スキルⅠ:神の一太刀(次回使用:23時間43分20秒後)
スキルⅡ:神気解放
剣なのであまり期待せずに使っていたので、これからはこの新しい【神気解放】も使える時に使おうと思う。
(神気解放はどんなスキルなんだろう?)
草薙の剣の詳細が表示されている画面に新しく、神気解放の項目が追加されていた。
その神気解放をじっと見つめても説明が出てこないため、実際に使って確認をするしかなさそうだった。
(今はここにモンスターもいないし、聖奈たちはあそこにいるから試しに使ってみようかな)
そう決めたので立ち上がり、再びアイテムボックスから草薙の剣を取り出す。
先ほどよりも持ちやすくなったような感覚がしつつ、剣を握りしめて神気解放のスキルを発動させた。
【確認】
神気解放が使用されました
時間を指定して下さい
《0時0分》
「なんだこれ? 何の時間だ?」
スキルを使用しようとした直前に現れた画面に出鼻をくじかれ、試そうと意気込んでいた気持ちが沈みかける。
(まだ大丈夫か)
穴の近くから聖奈たちがこちらへくるのが見えたが、まだ少し距離があるため、画面を見つめ直す。
時間を指定するようなので、よくわからないためとりあえず【10分】と考えたら自動的に画面へ反映された。
【神気解放を発動】
この境界にいる間、身体能力が《1.2倍》向上します
神の一太刀を次回使用するまでの時間が10分延びました
発動表示と共に全身がほのかに金色の光で包まれ、神気解放の効果が表れていることが分かる。
(あれはクールタイムを伸ばす時間だったのか、際限なく使えるのかな?)
次回使用までの時間を延ばすだけなら、デメリットが神の一太刀を使えないくらいしかないので、とても便利なスキルだ。
剣をアイテムボックスへ入れても効果が切れることはなく、天翔を使って体を動かしていたら聖奈たちが困った顔で俺を見てくる。
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