草凪澄人の影響力⑨~ミステリー研究部員草凪澄人~
俺たちがミステリー研究部へ入部してから2週間が経ち、高校生活も1ヵ月を終えようとしている。
今日も部活を行うために、ハンタースーツに着替えてから草地くんと門へ向かっていると、数名の生徒が俺の前に立つ。
制服に入っている校章の背景色を見たら、青色のため2年生だということが分かる。
全員が困ったような顔をして俺と草地くんの前に立っていた。
「なあ、きみに頼めば境界を見つけてくれると聞いてきたんだが……」
先生からうだつが上がらないといって3年生へ境界を提供してくれと頼まれてから、こういう人たちが定期的に現れるようになった。
先生も条件を上げて数を絞ってくれていると言っていたが、来なくなるということはない。
「今日は部活なので、その後ならいいですよ」
俺が返事をすると数名の生徒が喜び、俺の手を取って何度も上下に振ってくる。
「本当か!? ありがとう、料金は先に払った方がいいのかい?」
「100万は境界を見つけた時でいいですよ。ランクはどれくらいの物を希望していますか?」
「FかGでお願いしたい……それと……」
2年生たちは頼みづらそうにこちらを見てくるので、横に立つ草地くんの肩を数回叩く。
「大丈夫です。彼が護衛に付くので安心してください」
「助かるよ! 草地くんもよろしくね!」
「はい、こちらこそ……」
巻き込まれた草地くんも慣れたようにうなずいており、2年生が立ち去った後、スマホを取り出していた。
「澄人くん、予定に入れておいたよ」
「ありがとう、最近は少し余裕ができてきた?」
草地くんや水鏡さんたちは実家からの援助がないため、生活費を稼がなくてはいけない。
聖奈が水鏡さんのことで相談を持ち掛けてきてから、同じように2人にも聞いた結果、お金に困っていたのでこのように護衛という名目で報酬をもらっていた。
(昔の草凪ギルドも同じようなことをしていたみたいだけど、今は機能していないからな……)
値段は境界の滞在時間やランクでも変わるため、夏さんに相場を調べてもらい、相手が高校生なのでそれの半額で行っている。
観測所の横にあるミステリー研究部の部室に入ると、数名の部員が待っていた。
「澄人くん、今日も依頼が入ったんだね」
Aクラスのグループメッセージを読んだのか、水鏡さんが嬉しそうにスマホを持ちながら話しかけてくる。
上級生の部員からも依頼されることがあり、この短い期間で神格が上がった人もいた。
(ただ、同級生からは頼まれたことがないんだよな……)
平義先生がどの範囲に声をかけているのかわらかない。
本当にハンターとして大丈夫かと思うくらい不安な人もおり、そういう人だけかと思ったら、普通に剣の親和性を身に付けた人も頼みに来ていた。
(まあ、いいか。平義先生にお金のことを相談したのは俺だし)
お姉ちゃんに頼めば3人の生活費くらい簡単に出してくれるが、クラスメイトが求めていたのはハンターの活動を行うために必要な装備を整える環境作りだった。
俺は俺で、夏さんと境界探索を行って探索実績を稼ぎたいので、全員がwin-winの関係になっている。
【今日の18時ですね? わかりました!!】
夏さんからも連絡が入り、今日の境界探索を行う場所へ向かう車も用意することができた。
俺が受け取る100万は夏さんの派遣費用なので、そのままギルドのものになる。
「こんにちは、集まっているかな? ミーティングを始めよう」
部室へ眼鏡をかけた部長が入室し、壁に備え付けられているホワイトボードの前に立って来ている部員を眺めた。
天草先輩は1年生の仮入部訓練を見ており、他にも数名の部員がそっちへ行っている。
「今日は二手に分かれて、森の先と山の麓へ向かおうと思う」
ホワイトボードに貼ってある地図を見ながら部長がメンバーを組み始める。
洞窟を中心とした異界の地図は当初の3倍以上になり、研究部員の活動範囲も飛躍的に広がっていた。
俺と聖奈が同じグループに入ることはなく、戦力的な観点から必ず別にされている。
また、治療が行えるものを別にするという理由で、天草先輩とも一緒になったことがない。
(さて、今日は異界ミッションの解禁日、どんな内容なのか楽しみだ!)
異界ミッションの3の解禁が2週間待たなければならず、ようやく今日解禁される。
今日のメンバーを聞いてから部室を出て、意気揚々と異界へ突入した。
【異界ミッション③:平原の鍵を入手せよ】
成功報酬:地図機能解禁
洞窟に着地してから、改めて解禁された異界ミッションへ目を通す。
文章のみで見本などはなく、【平原の鍵】を手に入れるようにしか書かれていなかった。
(ここでも鍵……スライムを倒して山の鍵ってことは、どこかにいるモンスターを倒せば手に入れられるのか?)
次も探索系ミッションで、難航しそうだと思いながら洞窟を出て、雷を走らせる。
今日は周辺に脅威になりそうなモンスターの存在がなく、先に掃除をする必要がなさそうだ。
(張り切って行くとしよう!)
俺は他の部員が入ってくるのを待ってから、担当する山の麓へ向かい始めた。
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