草凪澄人の影響力④~部活動紹介~
俺たちAクラスの生徒は最初から並んでいなかったので、どこに行けばいいのか迷っていたら、いつの間にかいなかった水守さんが駆け足でこっちへ来ていた。
「平義先生に聞いてきたけど、私たちはBとCの間へ並べばいいみたいよ」
こういうことをしれっとできる人はすごいなと思い、聞いてきてくれたお礼を言いながらその場所へ向かう。
BとCの間は不自然なほど空いており、俺たちが並んでもまだ余裕がある。
「何でこんなに空いているのかな?」
なぜか先頭に並ばされたので、振り向きながら質問をしたら草地くんが目を見開いて俺を見た。
「え? それは……ライバル意識を持っているからじゃないかな……」
同じクラスにいてもあまり接点がなかったため、急に話しかけた形になってしまったが、草地くんは両サイドに聞こえない程度に答えてくれた。
「なら、俺たちも縦に離れた方がいいと思う?」
「今はまだちょっと……」
今はというあたり、草地くんはいつか俺のライバルになる気があるようだった。
ここにきてもまだそういうことを言ってくれる人がいて嬉しく、水鏡さんと一緒に境界へ連れて行ったら楽しそうに感じる。
(水鏡さん、今まで神格が1のまま上げていなかったんだよな……)
聖奈が熱心に面倒を見ている水鏡さんと数回境界へ突入したら、最近ようやく神格が上昇した。
1から2は上がりやすいと聞いていたが、水鏡さんはダントツに上がり難いと夏さんに言われていた。
(Aクラスにいる5人中4人が行くなら、水守さんも誘った方が良いよな)
休みの日にクラス全員で境界へ突入したら面白そうと思い、後で水守さんへ計画を立ててもらえないか頼んでみようと思う。
そんなことを考えていたら、司会の生徒が咳払いをしてマイクを口元へ近づける。
「お待たせしました。これより部活動紹介を行いたいと思います。ハンターに関連したものばかりなので、ぜひ興味の出た部活には見学をお願いします」
簡単なあいさつの後に資料が配布されてから、剣術部や境界探査部など、ハンター活動に使えそうな部活の紹介が行われた。
どれも魅力のあるものばかりで、お姉ちゃんが所属していた剣術部が行った模擬戦では複数の生徒が剣の親和性を身に付けているように見えた。
ただ、俺はどうしても入りたいというものが最後までなく、境界探査部に入ってたくさん見つけようかなどと妥協しようとしていた。
(なんだかピンとこないんだよな……直感だけど……)
最後にミステリー研究部が発表を行うと書いてあり、ほとんど興味が無くなった俺は聞く姿勢だけ整えて終わるのを待つ。
しかし、原稿のような紙を持った天草さんが登場すると、周りの生徒が息を呑むように緊張をしていた。
(どういうことだ? ミステリー研究部ってこんな注目を集める部活なのか?)
雰囲気が変わり、今までだるそうに聞いていた生徒も今は目を輝かせて前を見ている。
どんな説明が行われるかと待ち受けていたら、天草さんの呼吸音が聞こえてきた。
「私たちミステリー研究部は週に3回、学校の裏手にある異界の探索を行っております」
「あれは部活動だったのか……」
天草さんがなんで異界へ入っていたんだろうと最近になって疑問に思っていた。
これが理由かと思いながら説明を聞いていたら、毎年希望者が多く、普通科の生徒も入部希望を出してくるそうだ。
(普通科の生徒もほとんどハンターだし、異界に入れるのなら、なりふり構わなくなるだろうな)
草根高校最大の目玉と言っても過言ではない場所へ部活動で入れるのなら、ぜひ入りたい。
個人では週に1回しか入れないため、俺も入部できればユニークモンスターを探す時間が増える。
(ここしかない!)
絶対に入部しようと決意したら、説明の最後に天草さんが資料から目を離して新入生を見回す。
俺とも一瞬だけ目が合い、微笑んできたような気がした。
「入部希望者は本日16時に仮入部の説明を行うので、この競技場へ集合してください。以上です」
天草先輩が競技場から出て行くと部活動紹介が終わり、各教室へ戻るようにアナウンスがされた。
俺だけ着替えを行わないため、教室へ向かおうとしたら競技場を出る前に平義先生がこちらへやってくる。
「お前たちは着替えなくても良いから、そのまま教室へ向かってくれ」
俺以外の4人へ先生が指示を出しており、立ち去る前に俺の耳元で小さくささやいてきた。
「ミステリー研究部への入部を考えているなら、ハンタースーツを着てこい」
小さな声で言われたため、他の生徒には聞かれたくない内容なのだろう。
正直、なぜ今から着替えてこなければいけないのか疑問を持つが、わざわざ先生が伝えに来てくれているということは無意味なことではないと思われる。
早足で更衣室へ向かい、アイテムボックスの中に入っているハンタースーツを取り出して着替えた。
廊下を歩いていたら、なぜ今さら着替えているのかと言う目で見られており、自分でも確かにそうだと考えながら教室に着く。
「全員揃ったな」
俺が席に着くと先生が腰を上げて、帰りのホームルームが始まった。
いつものように明日の予定を確認した後、平義先生が持っていたファイルを閉じて教卓へ置く。
「今日の放課後、ミステリー研究部への入部を考えている者は校舎の裏にある門へ向かいなさい」
天草先輩の話では競技場だったのに、先生が場所を間違えているのではないかと首をかしげてしまう。
もう一度確認をするために手を上げると、俺以外の4人も不安そうに手を上げていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カクヨムコンに応募しております。
応援よろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます