草根高校新入生編⑩~クラス決定~

 俺と聖奈を囲っていた生徒が邪魔だったので、開始と同時に全方位に向かって雷を放出した。

 その後、適当に動いていた人に向かって雷を放っていたら、ここへ入る前に触った水晶の前に生徒がワープするように移動をしている。


(こんなことまでできるんだ……どういう仕組みなんだろう?)


 おそらく、一定以上ダメージを受けた人が競技場の上から動かされていると思われる。

 その仕組みのおかげで、競技場には数名しか残っておらず、もう10人を切っていた。


 草矢さんを見ても止めようとしていないので、最後の一人になるまで続けさせるつもりなのだろう。


(さて……ん?)


 後ろからものすごい勢いでこちらへ走ってくる2人を雷が感知したため、振り向いたら走っている聖奈の背中に誰かがしがみついている。

 制止させるために雷をぶつけようとしたら、しがみついている人が目を見開いてこちらを見た。


「聖奈さん! 正面から来ます!!」

「おーけー!!」


 雷を放とうとした瞬間、聖奈が予知でもしたかのように剣を振り上げる。

 魔力を変換して放たれた雷は聖奈の正面へ走っており、黒い剣によって飛散させられた。


(なんでわかったんだ!?)


 雷を無力化した聖奈は剣を構えながら、止まることなく突撃してきている。

 魔力を溜める時間が無く、聖奈の攻撃を避けなければいけない。


(あの背中にしがみついている子の能力か!? でも、今は聖奈の剣から逃げる!)


 草凪流剣術を扱う聖奈の剣を回避するのは安易なことではなく、精霊や雷を使えない俺では簡単に捕えられてしまう。

 しかし、まだ夏さんにしか見せていないスキルがあるので、足に力を込める。


 天翔Ⅰでは片足で1回ずつしか宙を踏むことができない。

 聖奈の頭上へ走り抜けようとした瞬間に大きな声が聞こえてくる。


「聖奈さん止まって!!」


 俺が天翔を使用した瞬間、なぜか聖奈に掴まっている少女が制止させるために声を張り上げていた。

 このタイミングでは俺も聖奈も止まれるはずがなく、お互い戸惑いながら交差する。


「嘘でしょお兄ちゃん!?」


 聖奈は驚きの声を上げるが、それよりも夏さんにしか見せていないスキルを聖奈の後ろの少女が知っていることに疑問を抱く。


(なんでわかったんだ!? それにあれは……)


 宙に逃げてすれ違う時に、聖奈の髪でよく見えなかった少女の顔を見て、どんな経緯でこの2人が協力しているのかわからなった。


(水鏡さんがなんで聖奈と一緒に?)


 戸惑いが多く、立ち止まってしまった俺へ聖奈以外の人が横から来ていた。

 聖奈の対応で他に残っている人への注意がおろそかになってしまい、地面に着地した瞬間を狙われた。


 聖奈への警戒をしつつも、その人に退場してもらうため、右手に魔力を込める。


「火の精霊よ!!」


 聖奈から目を離すことなく、横からくる相手を囲うように炎の壁を展開した。


「助けてあげて水の妖精!!」


 その声とともに炎の壁の一部に穴が開き、少年が隙間から生還してくる。

 火の精霊による包囲から逃れられるとは思わなかった。


「おおおおおおお!!」


 男子生徒が剣を振り上げて俺へ迫ってきており、舌打ちをしながら聖奈用に溜めておいた魔力を解放する。


「土の精霊!!」

「水の妖精!! 草地くんを助けて!!」


 俺が地面の石を釘状にして相手の全身へ打ち込もうとしたら、透明な液体に男子生徒が覆われて阻まれた。

 ただ、その衝撃で男子生徒は後ろへ吹き飛び、女子生徒が心配そうに駆け寄る。


(草地くんと水守さん!? 2人がここに!?)


 水守さんが合格していたことは知っていたが、草地くんまで来ていたとは思わなかった。

 それに、今残っているということは、この2人も俺の雷から身を守る方法があるということだ。


(この配置だと1対4……になるのかな? なんで全員俺を狙うかな……)


 最初から俺を狙ってくる人が多く、初手で神の一太刀というものも考えたが、穴が塞がれた天井を見てそれは止めた。

 ただ、対峙している人たちは、雷や精霊が時間稼ぎにしかならない。


「雷が右から来ます!!」

「またか!」


 雷を直線的に向かわせず、迂回したとしても軌道を予測されている。

 それも1度や2度ではなく、聖奈に当たる雷だけを読み切っていた。


(こっちは水で受け流している!? あの水を破らないと駄目か!)


 水守さんは地面へ両手を当てて草地くんごと水で覆っており、それによって雷が受け流される。

 精霊に頼もうとすると、素早く水が弾けて草地くんが迎撃のために前に出る。


(草地くんまで剣の親和性か!? 炎を切られる!!)


 俺が大量の魔力を込める時間を稼ごうとするとその隙を逃さずに聖奈が突撃してくるため、剣で防げないような攻撃ができずにいた。

 この均衡状態を打開するために、俺は戦いながら考えていたことを実行する。


(魔力は回復薬でなんとかなる……あとはやってみるだけだ)


 今まで、雷か精霊による攻撃をどちらか選んで行っていたものを同時に行う。

 両手に魔力を込めながら、雷を操る。


「そこまで!! 演習を終了する!!」


 それを実行しようとした時、草矢さんの言葉で演習が終わってしまったため、準備をしていたアイテムボックスの表示を消す。


(まだ5人も残っているのに)


 最後まで戦わないのかと質問をするために草矢さんへ近づこうとしたら、周りの風景がゆがみ、教室のような場所へ強制的に移動された。


「5人か、よく来たな。まずは座りなさい」


 なぜか中学の時の担任が教壇に立っており、俺たちのことを見下ろしていた。

 机と椅子のセットが10しかないところを見ると、ここはAクラスの教室のようだ。


(でも、なんでこの先生が?)


 俺が不信に思っていると、草地くんと水守さんは胸をなで下ろしながら座っている。

 聖奈と水鏡さんも椅子に座るので、俺も首をかしげながら近くの椅子を引いた。


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