草根高校入学編⑭~入学に向けて~

「師匠、異界ってこんなにモンスターと遭遇しないんですか?」

「いや、そんなことはないんだが……」


 雷を赤い空へ放出してから、ゲート周辺のモンスターを討伐するために師匠と異界を探索している。

 ただ、まったくモンスターが現れないので、足から雷を吸って手で飛ばすということを繰り返していた。


 雷の使い方に慣れ、普通に飛ばすだけではなく、手のひら一杯に丸く形成してみたり、静電気を張り巡らせて周囲にあるものを探知したり、自分の魔力でも作ったりした。

 俺が雷を自在に操っていると、前を歩いていた師匠が振り向いて苦笑いを浮かべる。


「その力はあまり外で使わないようにしなさい」

「雷をですか? それともこんなふうに操ることですか?」


 四方に微弱な雷を放射し、半径1キロ程度に存在するモノの形状を把握した。

 相変わらずモンスターなど動いているモノは俺と師匠以外に存在しない。


 師匠は俺を見て1度だけハハっと乾いた笑い声を上げ、頬を引きつらせる。


「両方だ……雷の親和性は【C】までしか確認できていない。魔力を雷に変えられるだけでも珍しいんだ」

「覚えておきます。でも、ばれても問題ないですよね?」

「いや……雷の魔法自体が秘術扱いされているから……面倒事を避けるのなら、他人がわからないように使いなさい」


 魔法の属性は火・水・風・土・光・闇の6種類しかないことを夏さんに教えてもらったため、雷を使える人が少ないという師匠の説明がよく分かる。

 ばれたところで相手が何をできるわけでもないが、雷を自由自在に操れるのは隠そうかなと考えてしまった。


「わかりました。なるベくわからないようにします」


 そう言いながら、ステータス画面のスキル欄をタップして、精霊の交換項目に注目する。


(相変わらず高い……)


 スキルショップでは、火と土以外の4種類の精霊を使役できるように交換可能となっているが、1種類につき10万ポイントが必要だと表示されていた。

 今のところ精霊の属性で困っていないため、10万ポイントあるのならステータスに回すつもりだ。


(雷も使えるようになったし、精霊追加は後回しかな……あれ?)


 スキル画面を閉じようとしたら、いつもとは違う表示を発見し、操作する手が止まってしまった。


 習得可能スキル一覧

【応急処置】⇒ランクアップ可能(5000P)


(どういうことだ? 今朝見た時にはなかったのに……)


 何が起こったのかログで過去に表示されたものをスライドして眺めていると、応急処置という文字が出てきた。


【規定回数到達】

 応急処置を100回使用しました

 上級スキルへのスキルアップが可能です


 今回のことで回復魔法は良いものを覚えておいた方が便利だと感じたため、異界に突入したときに獲得したポイントを使用して、応急処置のランクアップを行う。

 ランクアップの実行をタップすると、【応急処置】が【治癒Ⅰ】に変わった。


(こんな方法でもスキルを覚えることができるのか……いろいろ試してみようかな……)


 ステータス画面を閉じてから、次は何処へ向かおうかと思い、残り時間を確認する。

 視界の端にある画面では、探索時間が残り【30秒】となっていた。


「師匠、モンスターもいないですし、そろそろ戻りませんか?」

「そうだな。そうするか」


 雷で洞窟のある位置を確かめているので、迷うことなくゲートへ向かい始める。

 その途中、時間が経ち、異界ミッションの達成を知らせる画面が表示された。


【異界ミッション①達成】

 貢献ポイントを授与します

 異界ミッション②は24時間後解禁になります


 チュートリアルの時とは違い、連続するミッションでも次のものを行うためには時間経過が必要になっている。


(今回は歩いただけで5000ポイントがもらえたから、明日も来たいな)


 ゲートを出て森に戻ってから、師匠へ明日また異界に入れないのか相談をしようとしたところ、俺のではないスマホが鳴り始めた。


「すまんな。澄人、今回は助かった」


 師匠がスマホの画面を一目見てから、すぐにでも出られるようにスマホを片手に持っていたため、今は帰ることにした。


「えっと……うん。どういたしまして」

「この道をまっすぐ進めば学校へ戻れるぞ」


 俺が離れるのを待っているような気がするので、ここは一旦引き下がることにする。


「はい」


 案の定、返事をしてから学校へ戻り始めると、師匠が電話に出ているようだった。

 離れてしまって良く聞こえなかったが、遠くから微かに師匠が【雷帝龍】という単語を言ったような気がした。


 門まで戻ると、木の扉が閉まっており、高さも5メートル以上あるため、どうやって出るのか悩む。


(こっち側からだと豊留さんのいる部屋の入り口がない……)


 悩みながら扉に向かって歩いていたら、中央が人一人分開いたため、身をよじって外へ出た。

 俺が出た瞬間に扉が閉まり、脇から小柄な女性がおずおずと現れる。


「さっきは天草ちゃんを助けてくれてありがとう……助かったわ」

「いえ、俺は時間を稼いだだけなので、気にしないでください。失礼します」


 頭を下げてからその場を後にして、今日は帰ることにした。

 校門から出るために校舎の横を歩いていたら、合格発表の掲示板の前でぽつんと1人だけまだ見ている男の子がいる。


(あの子……掲示板から目を離さないどころか、瞬きもしていないんじゃないか?)


 横を通り過ぎる時にその人の顔を見て思考を読み取ると、【激怒】していた。

 しかし、思考とは裏腹に掲示板を見ている顔は無表情で、右手に受験票を持って、ただ漠然と掲示板を見ている。


(俺にできることはないから帰ろう……)


 不合格になった人に俺の方がましと言われないように、この学校で自らを鍛え上げなくてはいけない。

 その決心を改めて行うことができ、少しでもポイントを稼ぐために直帰せず、街で困っている人を見つけることにした。


 道案内や落し物探しなどを行い、10名ほどお助けカウントを稼いでから帰宅する。

 寝支度を整えて布団に横になると、緑色の画面が現れた。


【★ライフミッションを終了しますか?】

《はい》 《いいえ》


 天井を眺めていたら急に出たためびっくりして、いまかーと呟きながら《はい》を選択する。


【★ライフミッション終了】

 合計18人

 36000P授与します


(よかった。いつ貰えるかわからなかったから安心した……)


 助けた人数のカウントはされても、まったくポイントが貰えなかったので、ようやく授与されて安堵する。

 眠くなってきたので、ステータスの増加については明日考えることにしてまぶたを閉じた。


【名 前】 草凪澄人

【年 齢】 15

【神 格】 3/3《+1:200000P》

【体 力】 6800/6800《+100:5000P》↑

【魔 力】 10000/10000《+100:10000P》↑

【攻撃力】 C《1UP:20000P》↑

【耐久力】 C《1UP:20000P》↑

【素早さ】 D《1UP:10000P》↑

【知 力】 B《1UP:40000P》↑

【幸 運】 C《1UP:20000P》↑

【スキル】 精霊召喚(火・土)・鑑定・思考分析Ⅰ・剣術Ⅰ・治癒Ⅰ・親和性:雷S □

【貢献P】 46000


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


これで2章が終わりになります。


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