草根高校入学編①~草根高校へ~
「お兄ちゃん、今日ってもう制服を着ていくんだっけ?」
4人でテーブルを囲みながら朝ごはんを食べている時に、聖奈が嬉しそうに笑顔を振りまいている。
今日は特待生のみが集められて顔合わせが行われるので、空いた時間でライフミッションを行う予定だ。
「制服は明日から、今日は特待生だけを集めているから私服でいいって」
「そうなんだ……何を着ようかな……お兄ちゃんはもう決まった?」
器用に食事をしながら会話をする聖奈がこちらの様子をうかがってきていた。
「スーツで行くよ」
俺はハンター用のいつでも境界に行けるという目的で作られた、ミスリル繊維のスーツを用意してある。
「えー……つまんない。普通の服は着ないの?」
それを聖奈に伝えたところ、不服そうに唇をとがらせて抗議をしてくる。
すると、それまで黙って食事をしていたお姉ちゃんが静かに箸を置いた。
「オリエンテーションまで時間があるわ。朝早くから空いているお店へ行く?」
「いやいやいや……あれでいいから……」
車を出すわと、真剣に俺の服を買いに行こうとするお姉ちゃんをなんとか止める。
「澄人様! 和服が似合うと思うんですが、どうでしょう!?」
しかし、この会話が始まる前まで眠そうな顔をしていた夏さんが目を輝かせて俺を見てきた。
和服なんて着たこともないので、どうかと言われても答えに困る。
3人の期待をのらりくらりと躱しながら朝食を終え、片付けをしてからくつろいでいる聖奈へ近づく。
「それじゃあ、聖奈、30分後に出発しよう」
「……はーい」
何とかしてこの場をやり過ごし、スーツで行くことができるようになった俺は部屋で着替えを行う。
ワイシャツに袖を通しながら、年末に神格を3へ上げてから行ってきたミッションの成果を確認する。
【名 前】 草凪澄人
【年 齢】 15
【神 格】 3/3《+1:200000P》
【体 力】 6800/6800《+100:5000P》↑
【魔 力】 10000/10000《+100:10000P》
【攻撃力】 C《1UP:20000P》
【耐久力】 C《1UP:20000P》
【素早さ】 D《1UP:10000P》
【知 力】 B《1UP:40000P》
【幸 運】 C《1UP:20000P》
【スキル】 精霊召喚(火・土)・鑑定・思考分析Ⅰ・剣術Ⅰ・応急処置 □
【貢献P】 9000
すでにビショップ級の条件である、【E未満なし、C以上2つか、B以上1つ】を満たしており、高校を卒業すると同時に申請できる。
しかし、能力を更新するためには神格を上げる必要があるので、高校在学中の目標は20万ポイントを貯めることだ。
(去年の年末に3へ上げた時の能力は、これだもんな……)
着替えが終わったので、ハンター証を取り出し、公式に登録されている俺の能力に目を通す。
【名 前】 草凪澄人
【ランク】 ポーン級
【神 格】 3/3
【体 力】 1200
【魔 力】 2500
【攻撃力】 E
【耐久力】 E
【素早さ】 E
【知 力】 D
(やっぱり先に神格を3に上げて正解だった)
俺の思った通り、神格を3に上昇させた結果、普段のライフミッションなどで獲得できるポイントが増えた。
また、ポイントショップも充実し、ミスリル製の武器や効果の高い回復薬も手に入る。
攻略した境界の数は300を超え、今では1人でEやDの危険度なら何の問題もなく処理している。
(精霊の力が大きいけど、能力が上がってさらに強力になってくれた)
精霊との親和性も高くなり、今では魔力を込めて想像するだけで勝手に絶妙なタイミングで力を発揮してくれるようになった。
ただ、火と大地の精霊以外を呼ぶためには、契約をするために10万ポイントが必要なので今のところ増える予定はない。
時計を見たら、まだ20分以上余裕があるので、椅子に座ってポイントショップを眺める。
(数ある中で、特に目を引くのがこの2種類)
【ポイントショップ】
○キーアイテム
・水の鍵:50000P
○その他
・訓練用境界【危険度H】:100P.
・訓練用境界【危険度G】:500P
・訓練用境界【危険度F】:1000P
・訓練用境界【危険度E】:5000P
・訓練用境界【危険度D】:10000P
・訓練用境界【危険度C】:50000P
キーアイテムは文字通り鍵を交換できるが、ポイントが高すぎて手が出せない。
もう片方のその他の項目には、訓練用境界が追加され、ポイントを支払えばいつでも境界を作り出すことができる。
この境界には欠点があり、ライフミッションの発見数にはカウントされず、フィールドミッションも発生しない。
そのため、訓練用境界を使用するのは、貴金属を収集するときや、実績を積むときだけだ。
また、俺以外のハンターは神格を上げるためにモンスターを倒さないといけないため、師匠から境界が任意で出現させられるということを口外しないように釘を刺されている。
(そろそろ時間か……行こう)
荷物をアイテムボックスへ放り込んでから玄関へ向かうと、お姉ちゃんや夏さんが見送るために待っていてくれた。
淡い桜色の服を着た聖奈はもう靴を履いて待っており、俺の姿を見て微妙そうな顔をする。
「お兄ちゃんのスーツって妙に似合っているから、文句言えないんだよね」
「いいだろうこれで。じゃあ、行ってきます」
2人に見送られながら、歩いて5分以内で着く草根高校へ聖奈と一緒に向かう。
聖奈の足取りは軽く、桜並木を愉しげに歩いている。
桜が舞っており、数日後の入学式の時にはすべて散っているのではないかと心配するくらいだ。
そんな中、聖奈は俺と歩調を合わせ、後ろで手を組みながら軽く微笑んでくる。
「ねぇねぇお兄ちゃん。特待生って何人いるのか知ってる?」
「いや? 師匠は何も教えてくれなかったから、わからないよ」
「そうなんだ。それならどんな人がいるのか楽しみだね」
弾ける笑顔を向ける聖奈はどんな人に会えるのか、心から楽しみにしているようだった。
「おはようございます」
校門に近づくと草根高校の制服を着た人が複数名待っており、俺と聖奈の姿を見て挨拶をしてきた。
(この人たち全員ハンターだ。神格2や3の人ばかりだ)
つい癖で校門にいる人たちの能力を覗いてしまった。
おそらくこの人たちは総合学科の先輩たちだと思われるので、丁寧に挨拶を返す。
「教室まで案内します」
すると、その中にいた短髪で俺よりも身長が少し高い男子生徒が俺と聖奈を案内してくれるようだった。
「お願いします」
「行きましょう」
男子生徒が第2校舎へ向かって歩き出すので、その後を追う。
「2週間前に直ったばかりなんですよ」
道中、俺が斬った跡が直っている第1校舎を見ていたら、急に前から声をかけられた。
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