中学卒業編⑧~今後の見通し~
今はハンター証に載っている能力を1でも上げるとナイト級になってしまうので、神格を上げるためにポイントを貯めている。
ハンターの召集にも例外があり、ハンターを育成する高校に所属している場合は、義務が免除されるらしい。
(高校に入学してから能力を上げても召集されない。格を上げれば、新しい機能やスキルが獲得できるようになるかもしれないし、ミッションで獲得できる貢献ポイントが増加する可能性もあるからな)
ようやくここまでポイントを貯めることができたので、後1回フィールドミッションをこなせば5万ポイントに届くと思われる。
ライフミッションもコツコツと毎日欠かさずこなしており、新しい機能の確認以外にポイントをほとんど使わなかった。
(でも、スキルは鑑定以外にも欲しいものがあるんだよな……)
神格を2へ上げたときに解放された初級スキルの中に、非常に便利な鑑定があった。
(他人の能力がわかり、モンスターの名前まで表示され、意識すれば土や岩に含まれているのかも見える)
他にも、【剣術Ⅰ】や【ファイヤーボール】などが各5000ポイントで習得できるので、神格が3になってから取ろうと思っている。
(早く神格を3にしたいな……)
傾向的に神格が3になると、ほとんどの人がナイト級へ昇格している。
また、夏さんの話では、神格が1でも、ナイト級や一部の能力がCになっている人もいると言っていた。
そんな能力の持ち主がクイーンやキング級になるそうなので、すれ違う人の能力を見ているが、まだ会ったことがない。
(今日は学校が終わったら境界を見つけに行きたい……早く終わらないかな……)
壇上では校長先生が全校生徒へ向けての話をしており、10分程経っても止まる気配がない。
そんな校長先生の顔を呆然と眺めていたら、師匠もこのような場面で話をしているのか気になってきた。
(どんな話をするんだろう?)
今夜にでも師匠へ直接聞いてみようと思っていたら、校長の話が終わり、壇上から降りていく。
その後、司会の先生が草根高校の総合学科を受験する生徒は残るように一言放送してから解散となる。
一応今のところ希望はしているので残っていたら、前にいる草地くんが振り向いてきたので俺へ話しかけてきそうだった。
「お兄ちゃん、戻らないの?」
断り続けるのが面倒だと困った時、クラスへ戻る集団の中から聖奈が近づいてきて、不思議そうに俺を見る。
聖奈の声が聞こえた時、草地くんは体をビクつかせ、気まずそうな顔になって少し離れてくれた。
「戻っちゃダメだろ……聖奈も受験するから残るんじゃないの?」
「もう決まっているから、【一般】受験じゃないよ」
一般受験とは何なのか聞こうとしたら、壇上に俺の担任の先生が立つ。
「受験希望の生徒はこっちに集まってくれ!」
残っていた40名程の生徒に声がかけられ、壇上の近くへ来るように言われていた。
聖奈がそれを見ながらここにいると邪魔になるからと、手を引っ張られながら体育館を出る。
体育館を出てから手が離され、人がまばらになった廊下を歩きながら話を聞く。
「一般受験ってどういうこと?」
「普通の受験。定員が80名の枠しかないのに日本中から希望者がくるから、倍率が20倍を超えるんだよ」
受験数について自慢するように言っており、20倍という数字が信じられない。
(枠の少ない高校でもそんなに高くなることはないぞ!?)
それを聞いていたら、聖奈が倍率について本当に理解しているのか不安になる。
「20倍って……1600人受験するって意味だけど、本当なの?」
「私にもそれくらいわかるよ! 多い年だと2000人を超えるんだからね!?」
「そんなに多いのか……ごめん」
気にしていないよと言いながら上機嫌に歩く聖奈は、鼻歌を歌いながら教室へ向かう。
校内を歩いていたら、一般受験をしない聖奈がどのような扱いで高校へ入学するのか疑問が浮かぶ。
「聖奈はどんな枠で入学するの? 一般じゃないんでしょ?」
「特待枠だよ。毎年10人までしか選ばれないの」
「そんなに少ないんだ」
「年によっては1人とかの場合もあるから、基準がものすごく高いみたいだよ」
「……それに合格している聖奈がそれを言うと、自慢に聞こえるから止めた方が良いよ」
すでに奨学生という特待枠で入学が決まっている聖奈は、なぜか不満そうにジト目で俺のことを見てくる。
「お兄ちゃんなんてそれ以上を要求したでしょ? 人のこと言えないよ」
「俺の条件はまだ決定していないから、このまま断られる可能性もある」
「それはないよ。じゃあ、また後でね」
教室のある階に着いたので、帰りの会が行われるのでそれぞれの教室へ戻った。
俺のクラスはたまにしか見ない若い女性の副担任が来ており、荷物を持って教室から出ようとしているクラスメイトがいる。
(早いな。俺も帰ろう)
もう帰りの会が終わっているようだったので、何食わぬ顔で荷物を背負う。
「草凪くん、ちょっといい?」
教室を出ようとしたら副担任の先生に呼び止められたため、教卓の方に体を向ける。
「校長室に来てもらってもいいかしら? あなたにお客さんが来ているようなの」
「わかりました」
副担任の先生も教室を出て、俺を確実に校長室へ誘導するために少し前を歩く。
ただ、誰が来ているのか聞いても、副担任の先生は知らないようだった。
木でできた高級そうな扉の前に着くと、中から話し声が漏れてくる。
(校長と男女? それ以上はわからないな……)
聞こえてくる声から、この中に3人の人がいることがわかった。
1人は体育館で嫌になるほど聞かされた校長先生の声で、他の2人はわからない。
「草凪くん」
俺は副担任の先生にうながされて、校長室の扉をノックした。
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