中学卒業編⑦~聖奈の怒り~
草凪ギルドの処分が行われた翌日、俺と聖奈は終業式へ出席するために学校へ向かっていた。
「ぜっったい、賄賂を渡して罰を軽くしてもらっているんだよ!?」
聖奈は今も昨日の師匠が言っていた処分に納得ができていないようだった。
それに、周りに人がいるのにもかかわらず、聖奈が大きな声を出すので何とか落ち着かせたい。
「聖奈……他の人に聞こえるから、やめておこう?」
「お兄ちゃんに会おうとした人が資格のはく奪で、取り囲んだ人が半年活動できないだけとか意味わかんないもん」
普通に会話をする程度に声を抑えてくれて、昨日師匠から聞かされた内容に文句を言っていた。
処分が半年で済んだ理由として、境界の突入権の値上がりなどが配慮されたそうだ。
それを聞いて、お姉ちゃんや夏さんも師匠へ軽すぎるからと厳罰を求めていたが、もう決まったことだからと言われ、意見が通ることはなかった。
ただ、それを伝えている師匠の表情も困惑しているように見えたため、何か別の理由があると思っている。
(俺たちに伝えられない訳があるんだろうけど……教えてくれないだろうな)
他人の境界へ突入しようとして警備の人と揉めるだけでも3ヶ月程度の謹慎になり、実際に無断で突入した場合は半年の謹慎処分となる。
今回の場合は、警備の人と揉めただけと判断され、人数が多く悪質なため半年のハンター活動停止という処分が下されたらしい。
(ハンターしかしていない人は、この間無収入……先生の言う通り、兼業していないと死活問題だな……)
草根高校の対応については今日も話し合われるそうなので、のんびりと待つことにしている。
学校に着き、廊下で聖奈と別れてから教室に入ると、立ち止まってしまった。
(昨日、あんなに怪我をさせていたのか!?)
水守さんが右頬にシップを貼って、右足には包帯が巻かれている。
境界内で放置したときに、そんなに多くの怪我をさせてしまったのかと心配してしまう。
他のクラスメイトと朝の挨拶を交わしながら、水守さんの席へ自然に近づいた。
「水守さん、それは……昨日の怪我?」
自分の頬を触りながら聞いてみると、水守さんがううんと首を振る。
「右足は昨日のだけど、これは違うから安心して」
そう言って、俺と話すのを拒否するように水守さんはそっぽを向いてしまった。
俺がここでそれ以上追及するとクラスの注目を集めそうだったので、自分の席へ向かう。
しばらくしてチャイムが鳴ると、担任の先生が教室に入り、朝の会が始まる。
冬休みの宿題を配布された後、今日の予定について伝えられた。
(終業式しかないから、早く帰ってなにをしようかな)
ライフミッションを1つでも多くこなそうかと考えていたら、先生が持っていた手帳を見ながらまだ教壇に立っている。
そして、最後にと言ってから、先生が咳払いをする。
「終業式後、草根高校の総合学科を希望している生徒はそのまま体育館に残るように」
先ほどまでの連絡と同じように言っていたが、先生がチラリと俺を見たような気がした。
(対応次第で受験さえしないけど、一応残っておくか)
朝の会が終わると、クラスメイトが一斉に教室を出始める。
俺も体育館へ向かうために席を立つと、誰かに肩を叩かれる。
「草凪くん」
誰かと思いながら振り向くと、あまり話をしたことが無いクラスメイトが俺の横に並んで話しかけてきた。
自分と似たような名字なのでその子の名前を憶えており、呼ばれたので歩調を合わせる。
「草地くん? どうしたの?」
「冬休みどっか遊びに行かない? 後、連絡先を教えてほしいな」
「あー、ごめん。冬休みは受験の準備とかで忙しいんだ」
冬休みには4人で遠方の境界発生地に泊りで遠征へ行くことになっているので、この街で遊んでいる時間がない。
「1日もない? 半日でもいいんだけど……」
草地くんがそれで引き下がらずに俺と会おうとしてきたため、なにか裏があるのではないのかと勘繰ってしまった。
(名字に草が付いているし、草凪ギルドの報復かもしれない)
そう考えるとこの必死さも納得がいき、あまり草地くんと話しているのが良くない気がしてきた。
「ちょっと難しいかな……俺、先に行くね」
「待って!」
話を切り上げて早足で体育館に向かうが、それでも草地くんが付いて来ている。
(これは厄介だな。こんなところじゃ目立って精霊も使えない)
振り払うために集団で移動している生徒の中を縫うように歩く。
後ろを一目確認したら、草地くんが他の生徒に邪魔をされてこちらへ来れそうにない。
(ハンター活動が停止ってだけで、普通に学校には来られるんだ……そもそも、本当に草凪ギルドなのかな?)
草凪ギルドのことは聖奈が知っているので、草地くんがギルド員なのか確認しておきたい。
体育館には全校生徒が集まりつつあり、聖奈が並んでいるクラスの列を探す。
(聖奈は……いない。まだ来てないのか)
聖奈が来るのを待っていたら、草地くんが体育館に入ってきてしまったので、仕方なくクラスの列に並ぶ。
(そうだ。これじゃあ駄目だ)
並ぼうとしたときに気づいたが、この並び方が出席番号順のため、どう頑張っても草地くんが俺の前に来る。
案の定、クラスの列に並んでいたら、前に来た草地くんが先に行くなんてひどいよと言ってきた。
「いつまでも喋るなよ! きちんと整列しなさい!」
返事をしようとしたら、壇上に上がった先生が体育館に来ていた生徒に向かって注意をしてきたので、口を紡いで前を向く。
草地くんも諦めて前を向いてくれたので、安心して終業式を受けることができる。
静かになると壇上に上がった先生がその場からいなくなり、式が始まった。
特に気になる話がないので、ステータスを見ながら、今の所有している貢献ポイントと今後の予定について再確認する。
【名 前】 草凪澄人
【年 齢】 15
【神 格】 2/2《+1:50000P》
【体 力】 1200/1200《+100:1000P》↑
【魔 力】 1400/2500《+100:1000P》↑
【攻撃力】 E《1UP:5000P》↑
【耐久力】 E《1UP:5000P》↑
【素早さ】 E《1UP:5000P》↑
【知 力】 D《1UP:10000P》↑
【幸 運】 D《1UP:10000P》↑
【スキル】 精霊召喚(火・土)・鑑定 □
【貢献P】 46500
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