これからの目標⑧~これからの目標~

「澄人!? 起きて澄人!?」

「澄人様!? 大丈夫ですか!?」

「お兄ちゃん!? 気付いてよ!!」


 いつの間にか倒れてしまっており、目を開けようとしたら3人の声が聞こえてくる。


 必死に俺を呼びかける3人の声を聞いていたら、妙に聖奈の声がはっきりと耳に届いてきた。


(聖奈を頼まれたんだ!!)


 じいちゃんの言葉をはっきりと覚えており、目を開けてすぐに聖奈の手を取ろうとした。


「聖奈! ……あれ?」


 体を起こして手を伸ばそうとした時、俺の周りには誰の姿もないことに気が付く。


(あの声は幻聴だったのか?)


 目を覚ますために軽く首を振ったところ、妙にすっきりとした気分になってしまった。


(ここはどこだ? なんだか見たことがあるけど……)


 自分がいつもとは違うところで寝かされていたことに気が付いた。


 ただ、まったく知らないと言えばそういうことではなく、懐かしさを覚えてしまう。


(あの天井の傷は……聖奈と遊んでいたら物が当たったときの? ここは!?)


 布団から飛び起きて、微かに話し声がしている居間の方へ向かい始める。


 大分広い家だが、俺が迷うことはなく、ふすまを開けると4人がテーブルを囲んで座っていた。


 深刻な顔をしている広じいちゃんが俺と目が合うので、単刀直入に話を切り出す。


「広じいちゃん、この家は今どうなっているの?」

「……どうもなにも……お前が戻るまでなんにもないただの家になってしまったよ……」

「そう……3人からどこまで話を聞いたの?」


 すでに日が傾いており、俺が長い時間寝ていることがわかったため、広じいちゃんにどこまで俺の話が通っているのか知りたい。


 俺がお姉ちゃんの横に座ると、広じいちゃんが軽く息を吐いてから口を開く。


「お前が正澄様から授かった本を読み、神格が上げられるようになったと聞いた」


「大体合っている。それに、記憶を封じられる前のことも思いだしてきたけど……広じいちゃんのことも教えてほしい」


 広じいちゃんは記憶を思い出しても、おじいちゃんの知り合いとしか分からないので、この家を守ってくれていた理由を知りたい。


「そうだな……わしは、草壁澄広すみひろ……正澄様と境界の【謎】を追っていた元ハンターだ」


「澄……広……だから俺へ広じいって呼ばせていたんだね……」


「ああ、正澄様からこの家の守護と、お前を見守るように頼まれていた」


「大体分かったよ。この家に入れる条件は、【俺と聖奈】が一緒に来ること……かな?」


 聖奈のことを一目見てから広じいちゃんへ質問をすると、軽く微笑みながらうなずいてくれた。


「ああ、合っている。他に聞きたいことはあるか?」

「考えるから、ちょっと待ってね……」


 4人を見ながら腕を組み、現状自分が何を聞かなければいけないのか思考を巡らせた。


(現状、両親やおじいちゃんがここにいないことから、見つかっていないことは確定している)


 過去のおじいちゃんには俺の自由に生きろと言われたが、今のハンターとしての自分にはその実力がない。


【注意】

 本日のライフミッションが未達成です

 達成されない場合、ペナルティが発生します


 力不足を実感していたら、今日のライフミッションを1度も達成していないと表示が現れた。


 表示を視線だけで消していたら、元キング級ハンターという広じいと目が合う。


(そういえば、お姉ちゃんも広じいのことを【師匠】って呼んでいたな……)


 今の俺に圧倒的に足りないのは経験やハンターとしての知識なので、それを埋めて少しでも早く強くなりたい。


 それが自由になる唯一の方法だと考え、テーブルから少し下がって広じいに頭を下げる。


「広じい、お願いがある。俺へハンターとしての特訓をつけてほしい」


「……本気なのか?」


「おじいちゃんは俺に自由に生きろと言ってくれたけど、今の俺はあまりに弱すぎて誰も守ることができない。だから、少しでも強くなって、ここにいる3人は守れるようになりたいんだ! お願いします!!」


 畳に頭を着け、広じいが返事をしてくれるまで絶対に動かない決意をする。

 すると、音もなく近づいてきた誰かが俺の肩を叩いてきた。


「澄人、頭を上げなさい。わしも、お前が死なないように鍛えたい」


「本当!?」


「ああ、わしの訓練は厳しいぞ。香が何度逃げ出したかわからんからな」


 俺の横に立つ広じいが笑顔を向けながら訓練をつけてくれると約束をしてくれた。


 引き合いに出されたお姉ちゃんは居心地の悪そうな顔になり、それを見た夏さんが意地悪そうににやりとしている。


 俺の言いたいことは終わったので、ミッションのためにこの家にあるすべての部屋を掃除させてもらいたい


「じゃあ、今日のミッションが部屋の掃除だから、この家をきれいにしてもいいかな?」


「別にかまわんが……こんな大きな家を1人でやるのか?」


「もちろん! 俺がやらないとミッションがクリアできないから! じゃあね!」


 4人を部屋へ残したまま、俺は早くミッションを達成するため、掃除道具を取りに自分の家へ戻る。


(俺の人生はここから始まるんだ! 力を手に入れて好きなように生きてやる!!)


 新たな目標を胸に俺は丁寧に掃除へ取りかかった。


◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆


第1章をご覧いただきありがとうございました。

これで始まりの物語が終わりになります。


現在カクヨムコン9に以下の作品で参戦しております。

ぜひ、応援よろしくお願いします。


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