これからの目標⑦~草凪家の門番~
(ん? ……あれ?)
スマホを持っている男性が見たことがあるような顔だったので、よく観察しながら近づく。
顔がはっきりと分かった時、男性に気づいてもらえるように手を上げながら声をかけた。
「
「澄人!? お前こそなぜここに!?」
広じいは近所に住んでいる親切な人で、回覧板を俺の家へ届けるついでに、畑で採れたと言いながら色々な物をくれる。
温厚だと思っていた広じいが見たこともないような顔で3人を脅すようなことをしており、痛みを忘れて駆け寄った。
「俺は3人とこの家に入るために来たんだけど……広じい、何か知っているの?」
「何かって……お前……この3人と知り合いなのか?」
「うーん……どう説明すればいいんだろう……」
広じいがお姉ちゃんたちに目を向けると、3人が信じられないような顔で俺を見てきている。
説明したら長いのだが、この険悪な雰囲気の中、説明しないわけにもいかない。
「ん?」
そんな時、広じいの持っているスマホから軽快な音楽が流れ始める。
画面を見た広じいは真剣な表情になり、俺へ手のひらを向けてきた。
「澄人、ちょっと待っておれ」
「わかった」
俺がうなずくと広じいは3人から目を離さないように警戒をしながら電話に出ている。
「それは本当か!?」
ここで何が起こっていたのか話を聞くために3人へ近づいていたら、急に広じいが俺を見ながら驚くような声を上げていた。
それから俺を見ながら何度も大きくうなずいた後、広じいは電話を切る。
「今、清澄ギルドに草凪聖奈が加入したことと、2人しか入れない境界の件について協会から報告があった」
「広じい……何者なの?」
草凪家の敷地に入ろうと3人を追い払い、協会から聖奈が清澄ギルドに入ったことを直接連絡されている広じいの正体がわからない。
混乱していたらお姉ちゃんが俺のそばに立ち、広じいへ顔を向ける。
「この人は私の祖父であり師匠で……今は協会の顧問になっている元キング級のハンターよ」
「広じい……ハンターだったの? それもキング級って……」
「……中で話をしよう。上がりなさい」
広じいはスマホをしまいながらそう言って、さっきまで頑なに入れようとしなかった草凪の家に続く門をくぐった。
俺たち4人もその後に続いて歩いていたら、玄関の前で広じいが立ち止まって深呼吸をする。
「正澄様……今、澄人が帰りました……」
胸ポケットから大切そうに取り出した鍵で扉を開けると、広じいは俺へ道を譲って深くうなずく。
「お帰り、澄人……中で正澄様が残した最後の言葉を伝える……他の3人にも聞いて欲しい」
俺の知っている広じいの雰囲気が変わっており、いつもみたいに気さくに話しかけられなくなる。
「広じい……どういうことなの?」
「まずは入ってくれ……わしにはわからないが、正澄様は【澄人が入ればわかる】と言っていた」
「……わかった。後でちゃんと話を聞かせてね」
「ああ、約束する」
広じいの横を通り、玄関を通って見たことがあるような家へ入った瞬間、俺の頭の中で記憶が駆け回った。
「うっ!?」
あまりの量に目を回してしまい、その場に立っていられなくなる。
「澄人!? 師匠!? どういうことですか!?」
焦るようなお姉ちゃんの声がはるか遠くで聞こえてきているような気がしてきた。
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「澄人よく聞きなさい」
「おじいちゃん、怖い……僕をどうするの?」
入ったことがない地下室でおじいちゃんと数人の大人に囲まれ、椅子で動けないように固定されて恐怖しか感じない。
おじいちゃんはひざを折り、椅子に座らされている俺の頭をなでる。
「すまん澄人……お前の能力では草凪家の宿命を果たすことができん……そのための【処置】だと思ってくれ」
「しょちってなに!? おじいちゃん意味が分からないよ!」
助けを求めるために周りにいる人に目を向けると、笑っている人やうなずいている人しかいなくて、誰も俺のことを心配してくれていない。
地下室の出口に聖奈が隠れてこちらの様子を覗いていた。
おじいちゃんも聖奈がいるのに気付いたのか、少しだけ視線を階段の方へ向ける。
そして、俺を見るおじいちゃんの目が潤んでおり、何も言うことができなくなった。
「さっきも言ったが、【聖奈】と【この家】を頼む」
「どういうことなの?」
「わしがお前のことを頼んだ人たちがいる……が、お前の好きなようにしなさい」
「え?」
「お前が一番良いと思う方法で、家と聖奈を守ってくれればそれでいい」
「…………」
おじいちゃんの言っていることがよくわからず、目を見つめたまま何も言うことができなくなる。
離れていくおじいちゃんが向かった先には、香お姉ちゃんが泣きじゃくりながら広おじいちゃんに抱きついているのが見えた。
僕の頭へ布のようなものがかぶせられ、何も見えなくなり意識が遠のいてゆく。
目が覚めた時、僕は離れに寝かされており、自分の身に何が起こったのか全然わからなくなってしまっていた。
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