自由への指針⑦~討伐ミッション~
「準備しろって……武器も持っていないし、5分でなにをすればいいんだ……」
俺は走るだけのつもりで外に出ていたので、お姉ちゃんがくれた鉄の剣も持っていない。
(討伐内容で報酬が変わるってことは、できるだけ多くこなせたほうがいい……できることはなんだ?)
今の俺が数分後に行われる討伐に向けて、自分の置かれた状況を分析する。
(手元には何もない。攻撃手段は精霊のみ……それなら、魔力を補給する回復薬が必要になる!)
自分の討伐手段を確認したら、すぐにポイントショップを開いて魔力回復薬(小)を4つ、体力回復薬(小)1つ購入する。
今持っているポイントを使い切り、感情を落ち着けるために深呼吸を行う。
(もうできることはやった。後は精霊を効率的に使役できるように指示を出すだけだ)
周りの環境を気にしないために目を閉じ、今の自分にできることを精一杯行うことだけを考える。
試験前のように心を落ち着かせて、深呼吸をしながら準備時間が終わるのを待つ。
耳をすませば、風が草木をなでる音が聞こえ、乱れていた感情が落ち着いてきたのを実感した。
(さあ……やろう!!)
体内時間で5分が経とうとしていたので、目を開けると残り時間が10秒を切っている。
時間が無くなるまで注視していたら、【0:00】になった瞬間、画面が切り替わった。
【チュートリアル5:討伐ミッション】
これから1時間モンスターを倒し続けなさい
その画面が表示されると、今までなにもいなかった草原にいくつもの黒い渦が現れてモンスターがその中から出てきていた。
俺の近くにも黒い渦が出現したため、距離を取るために足を踏み込む。
身体能力向上の効果が予想以上に高く、俺の体が急加速して地面を走っていた。
(速い! これなら!!)
近くの木を駆け上がり、一番上で跳躍すると、現れたモンスターを眺めながら両手に魔力を込める。
青い草原の上に動いているモンスターは、スライムやゴブリンが多く、中にはイノシシのような姿をした相手もいる。
それらをすべてに狙いを定め、魔力の込めた手を地面へ向けた。
「火の精霊へ草凪澄人が命じる!! モンスターを焼き尽くせ!!」
俺の手の平から魔力が解放され、草原にいくつもの炎の塊が発生する。
(魔力の残量は!?)
【魔 力】 20/500
ほとんどの魔力を使用してしまっていたため、着地と同時にアイテムボックスから魔力回復薬を取り出して半分だけ飲む。
【魔 力】 270/500
(よし! 予想通り、半分しか回復していない!)
夏さんから渡された瓶と同じ大きさだったので、(小)1本あたりの回復量は500だと思われる。
しかし、ポイントショップのもとの誤差があったら困るので、半分だけ飲んで確認をした。
残りの回復薬を飲み干して、 瓶をアイテムボックスへ投げ捨てるように入れる。
(もうモンスターは……いない。どうなるんだ?)
炎の塊はその場をのたうち回るように動いてから、力尽きるように地面へ倒れた。
周囲を見回しても俺へ向かってくるモンスターがいなくなり、草原には俺だけが立っている。
(なんだ……もう終わりか?)
気持ちを緩めようとしたとき、赤色の画面が俺の前に表示された。
【チュートリアル:緊急ミッション】
多くの時間を残してミッションを達成しました
最高ランクの報酬を獲得するためのミッションを発動させます
承諾:このまま境界に残ってください
拒否:境界からの退出してください
画面の内容に目を向けると、【最高ランク】の報酬への挑戦権が与えられたらしい。
(ここは引けない! 俺は少しでも強くなるんだ!!)
レッドラインへ挑戦できず、逃げるように離れなくてはいけない自分が情けない。
警告するように文字が表示されているものの、お姉ちゃんや夏さんの力になりたいと決意した気持ちは揺るがなかった。
(目の前に強くなるための手段があるのなら、それを進む!!)
ここから退くつもりはないと画面を消そうとしたら、赤い画面の表示が変化した。
【緊急ミッション:青の草原で起きるスタンピードの制圧】
成功報酬:貢献ポイント2000
失敗条件:フィールドからの逃亡・一定時間の経過・ミッション受注者の死亡
未完影響:市街地へのモンスター流出等
「は?」
(スタンピード? ここで何が起こるっていうんだ? それに、ミッションを達成しないとモンスターが街へ流出!? 外へ影響が出るミッションを発生させるのか!?)
今まで受けていたミッションとはまったく違い、報酬も高いが失敗や未完の影響なども追加されている。
すると、赤い画面が視界の端に移動した途端、青い草原中に先ほどの倍以上の黒い渦が出現していた。
(なんだよこいつら……)
渦から現れたモンスターがスライムなどではなく、俺よりもはるかに大きな一つ目の巨人や、図鑑でしか見たことがない恐竜のようなものまでいる。
それらが俺へ敵意を向けて走り始めており、思わず手に魔力を込めてしまう。
「ひ、火の精霊へ草凪澄人が命じる!! モンスターを焼き尽くせ!!」
精霊の炎がモンスターに襲いかかるものの、象のようなモンスターが即座に反応して、鼻から水を出して火を消されてしまった。
「そんなのありか……」
背後からも大地を踏みしめる振動を感じたので、俺は比較的モンスターの少ない場所へ全力で逃げ始める。
「なんで俺へこんな
モンスターから離れながら、つい思ってしまったことを口にしてしまった。
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