自由への指針⑥~チュートリアル開始~

「いてっ!?」


 青い画面に表示されている文字を読んでいたら、またも地面へ転んでしまった。

 今度の画面は視界の端に移動して、消すことができないようになっている。


「なんだここ……」


 境界内は青い光で覆われており、俺は立ち尽くして周りを見渡してしまった。

 空に輝く星や地面を生い茂っている草、森のような木々の葉など、すべてがほのかに青く輝いていた。


「青い世界……すごくきれいだ……ん?」


【チュートリアル:注意】

 これから数時間境界内で活動します

 体力の能力が500以下の場合は、体力が減少しなくなる境界耐性(1日)を購入することをお勧めします


 俺が青く光っている足元の草へ視線を動かしたら、遮るように注意の画面が飛び出してきた。

 内容を読むと、これからこの境界で数時間活動すると言われている。


【体 力】 190/200


 現在の体力は200なので、回復薬なしだと境界内で40分しか活動できない。

 すでに2分経っており、10も体力を消費している俺に選択肢はない。


「この中に居続けるために5000P使用しろってことか……ポイントを貯めてなかったら回復薬を飲み続けてミッションを行い続けるのか?」


 少し疑問に思いながらも、チュートリアルの指示通りに【境界耐性(1日)】を購入する。


(残りPが800……これは飲みにくい……)


 アイテムボックスから取り出した境界耐性も瓶に入っていたので、飲み始めたら舌がチクチクと刺激された。

 全部飲み干したら、ピリピリとした静電気が走るような感覚が全身を襲ってきて、耐えようとしたら数秒動けなくなる。


「いってー!! 何なんだよこの薬!?」


 ようやく動けるようになったとき、俺の質問を気にすることなく、視界の隅にあった青い画面が大きくなる。

 持っていた瓶が邪魔なので、アイテムボックスへ放り込み、表示されたものを確認した。


【チュートリアル1:境界内を探索せよ】

 青い薬草を5個納品してください 《見本》


 見本を選択すると、画面に青く光っている草が表示された。

 ただ、俺の足元に生えているようなものではなく、妙に葉っぱが立派な草のようだ。


(これを見つけろってことか。でも、納品ってどうするんだ? とりあえず集めるか……)


 読んでいる内容から興味がそれると、画面が視界の隅に逃げる。

 よくできているなと考えながら近くの草をかき分けていたら、見本と同じような草を発見した。


 それを根元から抜いて、どうすればいいのか迷っていたら、別の画面が俺を導くように表示される。


【納品はミッションの画面へ青い薬草を入れて下さい】


 その表示の通りに視界の端にある画面を正面に表示させ、持っている薬草を入れると内容が変化した。


【青い薬草の納品:1/5】


「あと4本……こうやって画面へ入れればいいのか……」


 達成の方法はわかったので、後はこの草原に生えている草の中から薬草を見つけるだけだ。

 草が特に生い茂っている場所を見つけたので、捜索しようとしたが、思い止まって再度周りに目を向ける。


(薬草は土に生えている……精霊に頼んだら持ってきてくれないかな?)


 俺は右手に魔力を少しだけ集めて、土の精霊の力を借りることにした。


「大地の精霊へ草凪澄人が命じる! 青い薬草を4本集めろ!」


 魔力が解放されると同時に、なぜか足元の土がうごめいて、盛り上がり始める。


(なんだ?)


 1歩離れて動いている地面を見守っていたら、土を吹き飛ばして4本の薬草が同時に生えてきた。


「ありがとう、大地の精霊」


 改めて認識する精霊の有能さに、お礼が届くように頭を下げてから薬草を抜く。

 手に持った薬草の束をそのままミッション画面へ入れた。


【ミッション達成】

 チュートリアル1を達成しました

 貢献ポイントを授与します

【チュートリアル2:能力を上昇させなさい】

 チュートリアル1で獲得したポイントを使用していずれかの能力を2つ【F】以上にしなさい

【ミッション達成】

 チュートリアル2を達成しました

 貢献ポイントを授与します

【チュートリアル3:アイテムボックスを使用しなさい】

 アイテムボックス内にアイテムを入れなさい

【ミッション達成】

 チュートリアル3を達成しました

 貢献ポイントを授与します

【チュートリアル4:ポイントショップを利用せよ】

 チュートリアル2・3で獲得したポイントを使用して、【身体能力向上(小)】と【境界時間延長(1時間)】購入しなさい


 次々と画面が切り替わり、怒涛の勢いでミッションの通知が流れていた。


(何が起こっているんだ……本当は最初にこの境界へ入っておけば、何にも悩むことなかったんじゃ……)


 最終的にポイントショップを使うように指示されており、頭が追いつかないので、ポイントの確認を行ってからポイントショップを開く。


【貢献P】2000


 ミッション通りにポイントショップで2つの物を選択してから購入確認を行うと、1000P使用した後に先ほどとは違ったメッセージが表示された。


【身体能力向上(小)を即時実行する場合は、直接付与することができます。実行しますか?】

《はい》《いいえ》


 舌から広がる刺激を思い出すと飲むという行為に抵抗があるため、《はい》を選択したら、俺に向かって黄色い光が画面から飛び出してくる。

 それに当たっても体を刺激するような痛みはなく、黄色い光は薄く俺の体を包み込んだ。


「これが身体能力向上? すごい……」


【境界内活動時間 残り 1:35】


 俺の画面は境界残り時間も確認できるのか、残りの活動時間までわかるようになっていた。


「後はなにができるんだ? 機能を調べるにはどうすればいいんだろう?」


 ここまでわかってしまうと、他に境界内で何ができるのか気になってしまう。

 ポイントショップは貢献ポイントを何度か指で叩いたら表示したため、適当に画面を押してみようかと考えていたら、いきなり【赤い】画面が表示された。


【警告】

 5分後に討伐ミッションを開始します

 達成内容によってチュートリアル後の報酬が変化するため、準備を整えてください

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